光山鉄道管理局・アーカイブス

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鉄道ミステリとNゲージ25「あのひばりを狙え!」と485系

2018-05-06 05:53:45 | 小説

 鉄道ミステリとそれに因んだNゲージ車両を取り上げる完全な暇つぶしネタ(大汗)
 気が付いたら今回で25回目です。最初はここまで続くとは思いませんでした。何事もやってみるものです。

 今回紹介する作品は双葉社の鉄道ミステリ傑作選所収、峰村潔作「あのひばりを狙え!」です。

 昭和53年、仙台―上野を結ぶ当時の東北本線の看板特急の「ひばり」のトイレで刺殺された男の死体が発見される。
 やがて捜査線上に浮かんだ二人の容疑者はそれぞれにアリバイを主張。いずれの場合も被害者の乗るひばりに乗り込むことができない。
 しかし当日は東北本線のダイヤがアクシデントによって乱れていた事が突破口となり犯人のトリックが明らかになるのであった。

 というのが大まかなストーリーです。

 このアンソロジーを編纂した鮎川哲也氏が解説していましたが「時刻表と座席見取り図が付いた典型的な鉄道ミステリ」です。
 時刻表に掲載されているダイヤの組み合わせで思いもかけない場所に先回りしたり、行けないと思われていた場所に乗り付けたりするというのは昭和の鉄道ミステリでは王道とも言えるパターンです。
 それだけにこのジャンルのミステリは数字の組み合わせが連続する無味乾燥な作品になりがちで、トリックをどう人間描写と組み合わせるかが肝であると言えます。

 本作の場合作者(後述)が一種の余技作家だったらしく、大家の作品に比べて平板な印象に陥ってしまっているのが惜しい感じがしました。

 ではなぜ本作を取り上げたかと言いますと「舞台の設定が新幹線開業直前の最盛期の東北本線~上野駅を髣髴とさせるところ」にあります。
 今でこそ平成世代には名前を知っている人も少ない「ひばり」ですが、かつては「とき」と並んで最も本数の多い在来線特急とされ仙台以南の東北本線の顔ともいえる存在でした。
 「とき」の方は上越新幹線で名前が受け継がれましたが、「ひばり」の方はなぜか消滅。東北新幹線で「ひばり」の役割を負ったのは「あおば」となってしまいました。

 本作ではこれ以外にも「ひたち」「北星」「やまびこ」なんかの「あの時のトッキュウレッシャ」も登場します。
 「ひばり」をはじめ、これらが行き来していたあの頃の東北本線(特に仙台以南)は「特急密集地帯」でもありました。
 本作を読んでいるとかつて私が上京したり、雑誌なんかで想像したりした活気あふれる東北本線が何となく偲ばれるのです。

 さて、「ひばり」と聞いて私が真っ先に連想するのはなぜか「ボンネット時代の485系」です。
 今でこそ483系なんかを入れてもこのタイプの485系は各社からリリースされていますが、最初にこれがNゲージで出たのはTOMIXの製品でした。
 これが登場した当時は私自身趣味の中断期間の最中でしたから製品自体にはそう思い入れはなかったのですが、今世紀に入り趣味を再開してしばらくした時にジャンク品でこれのひと編成を入手しています。

 181系よりもややぽってりしたフォルムは一種の朴訥さを感じさせ、入線させてよかったと思う編成のひとつになっています。
 ただこのシリーズはサロが電気釜仕様だったのでKATOのサロ181の余りにむりやり485系の台車を履かせた仕様を作ったりした思い出が(笑)

 余談ですが作者の峰村氏は本書によると「経歴不明」だそうで本作一本だけ残して消えた幻の作家です。
 個人的な想像ですが、国鉄職員ではなく「時刻表マニアが西村京太郎辺りのミステリを読んでこれなら自分でも書けるとばかりに趣味の知識を駆使して推理小説を一本書いてみた」という趣を感じましたが。
 さて、実際のところはどうですか。