前回に引き続いてNゲージ夜明け前前後の昭和のTMSのお話です。
今回の収穫のひとつは世界的に有名な「伝説のレイアウト」、John AllenのGD Lineのこれまで見た事のなかったTMSの特写フォトに数多く触れられた事です。
以前にもお話しましたがGD Lineについては前に購入できたKalmBack版の写真集(英文)が単品で入手できた唯一の纏まった資料でしたが、それとは別にTMS別冊の「レイアウトブック」をはじめとして昭和38年頃から昭和57年前後にかけてTMS本誌でも断続的にJohn Allen本人の撮影になる特約フォトが掲載されていました。今回のTMSをチェックしてみると昭和40年代は多い時で年に2・3回はGD Lineの写真がTMSの表紙を飾る事もあったようです。
それらの写真や関連した記事の全体のボリュームは分かっているだけで50ページ以上と、それだけでちょっとした写真集レベルです(しかも日本語)
一度これらを何らかの形で一まとめにできないかとも思います。
それにしても四十数年も前のレイアウトの記事でありながら未だに目から鱗の落ちる考察や事実が次々に知らされるのがこのレイアウトの凄い所です。
(KalmBack版でも書かれている事かもしれませんがあいにく私の英語の理解力ではすべて把握できません)
例えばレイアウトそれ自体の立地。
第二次のレイアウトが作られたのは傾斜地に立てられた新居(日本の建物でいうと「あさま山荘」によく似た構造のようです)の最下層(傾斜地にコンクリの脚部を植え込んでいる)を掘り下げる形でレイアウトルームを確保していたというのにも驚きましたがその為に「レイアウトルーム自体が傾斜地だった」というのにはもっと驚かされます。
スペースの広さはともかくレイアウトルームとしては決して好条件とはいえない所にあれだけのレイアウトを作り、尚且つ立地のハンデを逆用して山岳風景の創造に積極的に用いるバイタリティは恐ろしいほどです。
また、JohnAllen氏自身の言葉として「ただ走らせるだけでは運転とは言わない。時刻表に基づく運転こそが本来の運転である」というのは心に刺さる言葉でした。
実際KalmBack版の写真集にもGDのダイヤグラムが掲載されていましたが、実際の運転でもレイアウトの建物に組み込まれたファーストクロックを元に決められたダイヤの中で決められた編成(もちろん各駅での貨車の入れ替えあり)の列車を定時運行するという緊張感あふれる遊び方がされていたそうです。
それを支えるのが雄大なグランドデザインと緻密な設定に支えられたシーナリィです。
言い換えればこのレイアウトの風景は「ダイヤ運転にリアリティを与えるための背景」としても機能していた事になります。GDLineの機関車はその殆どが自由形ですがそれらに実在の機関車さながらの設定が与えられているので架空の機関車と思えないリアリティがありますがそれとてこのシーナリィとの相乗効果抜きに魅力を発揮できない所もGD Lineの偉大さのひとつといえそうです。
日本のレイアウトでシステム的にこれだけ考え込まれたレイアウトというのは絶無に近いのではないでしょうか。
いや、それどころかこの言に従うならばレンタルレイアウトで走らせている客の殆どすべて、レイアウトのオーナーの9割がたが失格(笑)と言う事になりますね。
それを思うと単に「風景の中を列車が走る」だけで嬉しがっていた自分が恥ずかしくなると同時にこちらでの趣味の主流である車両偏重・形だけの細密主義の歪さが哀しくなります。
「鉄道という社会システム」を再現させてその中で列車の役割を果たさせるという楽しみ方は、ある意味究極のバーチャルリアリティ(いや、自分でそれを演出する事を考えるなら「リアライズ」と呼ぶ方が適切かもしれません)といえましょう。
そういう楽しみ方が定着している環境が羨ましくもあります。
とにかく今回のTMSバックナンバー探訪は40年前の本なのに実に刺激に満ちていました。
その他の事についても次回に。
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