瀬崎祐の本棚

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詩集「木洩陽日蝕」  八重洋一郎  (2014/06)  土曜美術社出版販売

2014-06-24 19:13:01 | 詩集
 第7詩集。123頁に24編を収める。
 作者は沖縄生まれで、現在も沖縄在住のようだ。収められていた作品のいたるところに沖縄の海がひろがり、風が吹き、光が満ちている。そんな南の島と海には、どこまでも開放的な時間が流れているようだ。もちろんそこには沖縄の歴史もあるわけだが、それを超越した風とか光とかによる時間の流れがあるようだ。
 それを端的にあらわしているのが「骨」という作品。石垣島で発見された頭蓋骨は国内最古の二万年前のものだと解明されて、作者の驚きが「胸に刺さった」のだ。それは二万年前からの何かを伝えてきたのだ。

   そうだ! 漂流者は漂流死すればいいのだ この世はほかなら
   ぬ漂流ではないか だれかが投げ壜を拾ったとしても その拾
   った者もまた漂流者でしかあり得ない

   だがしかし通信はやってくる まるで何かの事件のように
   そして思いがけない事実を照らしてくれるのだ

 作者は「1000世代続くあの人たちの呼びかけ」を聞いているのだ。この二万年前の骨は作品「通信」、「漂流」でも詩われている。
 「器(うつわ)」もゆっくりとしたときの流れを感じさせる美しい作品。夜行貝の殻を砕いて混ぜた赤い粘土をこね、生命をつないだ水を入れた器。それも今はそこに小さな穴があけられ、

   闇の中 カラカラと
   カラカラと
   洗骨の後の骨を抱きしめ 自(みずか)らかわいた
   おおらかな虚空となって 島に生き島に果てた人々の
   その骨に 永遠のやすらぎを与えている
   風の器(うつわ)
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