瀬崎祐の本棚

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あん  40号  (2014/06)  福岡

2014-06-23 18:29:29 | 「あ行」で始まる詩誌
 鷹取美保子の個人誌。B5版4頁の瀟洒な詩誌。詩誌の題字は犬塚堯氏とのこと。
 「こんぺいとう」はどこかしみじみとしてくる作品。「金平糖をそなえると」「暗がりの仏間が/明るくなる」のである。金平糖の甘さと、あの先端が丸みを帯びた独特の形を思い浮かべると、たしかにお供え物には最もふさわしいもののような気がしてくる。
 「ぱりっとした語感」に「父が、母が/おおぜいの父祖をつれて還ってくる」のである。このような死者との交流は切ない。哀しみとも違うし、おそらくは喜びでもない。ただただ今さらながらにどうしようもない死者との距離を感じているわけだ。

   父祖たちの
   金平糖を かりりと噛む音が
   座敷にもあふれ
   私は 無防備に
   幼い日の みほこちゃん に戻る
   父のおしゃれな中折れ帽を見あげ
   母の白い割烹着の裾をつかむ

 そして「金平糖は死者のために/金平糖は生者のために」と両者のためにある。金平糖は決して死者のためにだけお供えをしているのではない。お供えの金平糖は死者と私をつないでくれる大事なものであり、生者である私にとっては、捧げる祈りの言葉にもひとしいものなのだろう。 
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