瀬崎祐の本棚

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「交野が原」  97号  (2024/09) 大阪

2024-08-09 18:14:01 | 「か行」で始まる詩誌
金堀則夫編集・発行の詩誌。97号は112頁に、33人の詩作品、17編の書評、2編の評論・エッセイを載せる。

「鉢植えと蜘蛛」井嶋りゅう。
眼前の小さな光景の中にどんどんと物語世界が広がっていく。その凄まじい勢いに圧倒される。バーゲンのハズレにもらった鉢植えの花には水をたっぷりやらなければならないし、そうすれば毎日幸せになるのだし、葉陰にいる蜘蛛は捕まえられないし。改行もなくびっしりと続く散文詩型が効いている。

   私は戻れないのだと思う どこから 何から あの夏の太くなったり細くな
   ったりしながら掠れていった私の声から 葉水を怠ったもわんと暑い窓辺か
   ら

「雨期を待つ」渡辺めぐみ。
死にゆくことを伝えられなかった父は退院していく同室者をうらやましがった。「わたしが語るのは常に上澄みだけ」と思い、言えなかったことは今でも静かに横たわっている。どこにも悪意のない切なさが横たわっている。最終部分は、

   ああ
   とわたしは応える
   主語のない会話だ
   (わたしはまもなく壊れる)

   雨期を待つ季節が少しずつ育ち始めている

「林間」北原千代。
布のようなものになった話者は涼しい林間にいる。そこで限界まで絞りあげて「陽のもとに干してもら」っているのだ。もう今は穏やかなのだろうか。もう未練も後悔もなく、すべてを受け入れているのだろうか。その果てに思うのは、

   まだ肉体があったころ 風の日は風と一緒に本を読んだ
   億万年の草の鎖を本の繁みに発見し ああわたしにも 
   ほんのひと目でよい 結ばせてください と願ったこと
   がある

私(瀬崎)は詩「音楽室」を発表している。
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