ミャンマーチーク屋さんのわが道を行く

日々の出来事と旅と愚痴と文句を勝手に語る日記。

九龍城

2024-05-26 19:22:10 | つぶやき
「九龍城寨之圍城」という映画。

今、香港で大ヒットしているという。アクション映画ということだが、その舞台になっているのがタイトルにもある、かつて香港にあった九龍城である。その再現力がまた凄いらしい。なんでも製作費の半分以上をここに投入しているとか…。まだ未定のようだが、これだけヒットしているので、おそらく日本でも公開されると思われる。これはぜひ観たい。

1990年に一度、九龍城に探検に行った。旺角にラッキーゲストハウスという日本人宿があり、そこで出会った40代のおじさんともう一人の大学生。前夜、この3人で食事に行き、そこで九龍城の話がでてきた。このおじさんは中国や香港の事情に大変詳しく、面白い話をたくさんしてくれて、「じゃぁ、明日、3人で九龍城へ行こう…」と、決まった。私はその時まで九龍城が香港の主権が及ばないエリアであることや魔の巣窟と呼ばれていること、麻薬の売買が行われているとか、ひとつ間違えると拉致されて売られるとか、人間を使った見世物小屋があるとか、そんな噂があることも何一つ知らなかった。

翌朝、もう一人の大学生は、「僕はやっぱり行くのを止めます…」と言って急に辞退した。それまでワクワクしていた私もそこで初めて不安になったが、今さら行かないなどと言えず、結局、おじさんと2人で行くことになった。写真を撮ってるところを見つかると半殺しに合うという噂もあり、カメラやパスポート、お金の大半は宿に置いて出かけた。あれほど九龍城に詳しいおじさんも実際に行くのは初めてで、いざ現地に着くとちょっと不安そうだった。当然だが地図もないし、どうなっているのかもわからない。適当にビルの間の隙間道から入っていくしかなかった。道は狭く配線だらけで雨漏りの水やらゴミ、血液みたいな赤い水たまりやら、今でいうと完全にスラムの道のようだ。いやムンバイのそれよりも汚かったかも。ビルの内部は狭い部屋がいくつもあり、その多くは会社の看板を掲げていた。中には産院に歯医者に移民や法律事務所なんかもあり、あらゆる形態の会社が乱立しているように見えた。その合間に住居もある。道は時々、行き止まるし無数に階段もある。増改築を繰り返すとこうなってしまうんだろう。目指すは屋上だったが、時々、道ですれ違う人は上半身が裸だったりして、おじさんも私も怖くて聞くに聞けなかった。その後、途中で人から中国語で話しかけられ、おじさんが中国語で答えると大声で怒鳴られた。後で聞くと「お前らは何人だ、ここで何してる?」と聞かれて。「日本人で、道に迷ってる…」と答えたらしい。で、「帰れ!」と怒鳴られたわけである。その後も道がわからず帰るに帰れず、結局、もう一つの目的でもあった「アヘン窟」と「人間による見世物小屋」も探し出せず、1時間半くらい彷徨って外に出てきた。九龍城の中はかなり蒸し暑く、時々悪臭もある。無数のエアコンの室外機の音も凄かった。何より二人とも汗だくで持参した水も飲みほしてしまい喉がカラカラだった。でも極端に治安が悪いとかはなく、いきなり危害を加えられるなどといった感じはなかった。それ以後、行くことはなかったが、解体され公園になった後に行ってみると、そこにあの強大な建物があったなんて嘘のようにすっきりした街並みになっていた。

その2日後、今度はこのおじさんと香港と中国の当時の国境である住民以外立ち入り禁止の沙頭角地区に出かけた。ここは最近、外国人にも開放されたらしいが、当時は厳重に検問があり、当初の計画のように住民に成りすまして入ることは、全くできなかった。で、検問とフェンス越しに中を覗く程度で帰ってきた。英領時代の香港では何かで捕まっても、真っ当な法律で対応されたと思うが、今の香港で捕まるのはかなり怖いんじゃないかと思う。

今はもうあまり行きたい気がしないけれど、遠い昔の香港がちょっと懐かしい。

なんだか昔話になってしまった。

ではでは、明日から中国とタイへ行ってきます。

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