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ビル・カニンガム&ニューヨーク

2013年07月21日 | Cinemaを愉しむ
GREEDYという言葉がこれ上に似合う街が無いNYは野心と上昇志向と金の匂いがプンプンする街だが、そこにこんな爺さんがいるとは夢にも思わなかった。50年以上もNYの街中でファッションのトレンドを写真に収めている変人だが、この人なりのファッションセンスがある(らしい)。彼のお眼鏡に適ったファッション(人はどうでもよい)だけが被写体になるという栄誉を勝ち得るのだと。



"We all get dressed for Bill"と「ヴォーグ」アメリカ版編集長のアナ・ウィンターがコメントしているが、本心なのか腕利き編集長ならではの即興のcomplimentなのか分からない。でも、その言葉が本当なのだろうと思えてしまう。

かく言う私も若き頃にアメリカには計6年暮らし、NYタイムズも何回か目を通したはずなのに、この有名なファッションコラムは全く記憶がない。ファッションと言えば、パリでありNY5番街の洒落た店のものだと思っていたのだが、この変人爺さんはストリートの中にファッションを見出していく。

冒頭は、彼のファッションを見出す眼力の凄さを納得させる構成で、その後は彼自身と彼の哲学に入り込んでいく。私的には、彼の認めるファッション、彼が時代を見出したストリートファッションをこれでもか!という位に見たかったのだが、そこは映画としてこの爺さんを追っていくためには彼自身に踏みこまざるをえない。当たり前なのだが、ここが私の期待に反したところ。

住んでいる所はカーネギーホールの上というNYのど真ん中。そんな素晴らしいロケーションとビルなのに、部屋は写真のために人生を捧げた人のもの。トイレとシャワーは共同で、部屋は写真を保管するためのキャビネットが一杯。キッチンもなし。本人はパリのごみ収集人が着る青の上っ張りを着て、自転車でNYを廻りながら写真を撮り続ける。すべてをファッショントレンド撮影のために生きている。その成果はNYタイムズにコラムとして読者の眼にとまることとなる。

朝から晩まで、ストリートのみならずあちこちのパーティをはしごしてコラムを纏め上げる。相当な体力がないと勤まらんぞ。

「野暮ったい」とか「センスがない」といった否定的な眼で見ることは無く、その人なりのファッションの中に見るべきものを瞬時に嗅ぎ取ってフィルムに写し出す。誹謗や中傷、人を貶めることとは無縁の彼の生き様は、映画を見ている内に伝わってきて、彼なりの純粋な生き様に共感するようになる。上から目線のメディアばかりの中で、そのままに時代を伝えようという無私の心にいつのまにか感動してしまっていた。


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