末吉
少し前のことです。
春を感じるとある日に、末吉のお友だちの家に遊びに行きました。
末吉(すえよし)地区は、八丈島の東、三原山の奥にある小さな地区で、
島の中でも自然の濃いところです。
※島外のみなさまは、林冬人さんの八丈島写真マップをご覧ください。
※スーパーあさぬま末吉店もございます。
「焼きかんも」
お友だちの家に行ったら、焼いたサツマイモがテーブルに置かれてありました。
島では「焼きかんも」といいます。かんも=サツマイモです。
わたしが子どもの頃には、焼きかんもが家のテーブルにあるのは、
日常的な光景でした。日常的な家族のおやつでした。
「なんだ~またかんも?」とかいいながら、つまんで食べていたものです。
最近ではこんな光景が、とても贅沢なものに思えますね。
「聖護院大根のぬか漬け」
友人が、「おばあちゃんのおいしいお漬物を食べない?」と、
聖護院大根(しょうごいんだいこん)のお漬物を出してくれました。
これがあまりにおいしくて、のけぞりながら食べました。
どうやったらこんなおいしいものを作れるのでしょう?
それは、自分で畑を作り、作物を作り、泥を洗い、丁寧に切って干して、
長い間かかって身につけた漬物の腕で漬けるのですから、
わたしなどが小手先で作るようなものとはわけが違います。
とてもかなわないものに出会うと、畏敬の念を抱き、自分を反省しますね。
わたしには一生かかっても作れないお料理だと思います。
かんもと大根の漬物をお茶うけに、友人が自慢のコーヒーを入れてくれました。
贅沢で幸せなコーヒータイムです。
おばあちゃんと昔話をいろいろとして、楽しい時間が過ぎました。
わたしが大根のお漬物をあまりに誉めたので、
聖護院大根をお土産にいただけることになりました。
おばあちゃんが先に立って、かごをひょいと背負い、くわを持って、
あぜ道をすたすたと歩いていかれます。
とても懐かしい後姿です。
こんな懐かしい後姿は、この先何十年後の八丈島では、
もう見られなくなるかもしれないと思うと、胸が詰まる感じがします。
おばあちゃんに、「写真を撮ってもいいですか?」と声をかけると、
「顔は撮るなよ~きれいなら撮ってもいいけどね~」と仰いました。
島のお年よりは、どなたもとても優しくて、
そして、必ずこんな風に冗談めかした話し方をなさいます。
聖護院大根を掘っているところです。
もう残りが少なかったので、「おばあちゃん、ひとつでいいです」というと、
「あが、けたけんて、掘ったあろじゃ」と、いくつも掘ってくださいました。
(わたしがあげたいから掘ってるのよ)という意味です。
聖護院大根です。
こんなありがたい大根をどうやって食べたらいいでしょう。
わたしなんかの作るものは、お恥ずかしくて、
おばあちゃんのお漬物とはとても並べられませんので、
今回は大根の代わりに他のお料理を載せておきます。
おばあちゃん、ありがとうございました。
わたしと友人は、あぜ道でひと収穫いたしました。
明日葉とふきの新芽です。
明日葉はもちろん知ってますが、このふきの新芽!
食べられるって知りませんでした。友人が教えてくれました。
先のところだけを天ぷらにするとおいしいとのことでした。
「ふきの新芽の天ぷら」
これは驚きのおいしさです!ものっすごくおいしいです!!
びっくりしました。こんなおいしいものをなぜ今まで食べなかったのでしょう。
タラの芽の天ぷらに引けをとらないおいしさです。
タラの芽の風味と似ています。春の香りが一杯です!
あぁ、これからは、もっと道ばたを気にしながら歩かないといけませんね。
「タラの芽」
そのタラの芽も別のお友だちからいただきました。
「すごい!こんなにたくさん!どこで採ったの!?」
教えてくれませんでした。
そうです、どこにあるかは見つけた人の秘密の場所です。
人には教えませんよ。自分で探すのです。
寄ってみましょう。おいしそうですね!
「タラの芽の天ぷら」
おいしそうでしょう?ほんとおいしいですよ。
毎日食べたいくらいおいしいのですが、短い春だけに味わえる幸せのお料理です。
ふきの新芽とタラの芽の天ぷらで、ずいぶん贅沢な春の晩餐をしました。
どちらもご馳走さまでした!
本日と明日、「第18回八丈島産業祭」が行われますので、
わたしも今日は八丈島の春の幸、春の贈り物をお届けしてみました。
わたしも後ほど産業祭を見に行きます。
みなさまもどうぞお出かけくださいね!