『社長の器 会社を伸ばす社長、つぶす社長の見分け方』 吉岡憲章・著、PHP研究所、2006年。
売上げが伸びないために営業体制の見直しを申し出た社員に対し、出店すれば売上げがあがるとばかり、実行を指示する社長。
やがて、2つの営業所がオープンしたが結果は散々たるものだった。まず営業所長にするのにふさわしいスタッフが見当たらないため、現在、実績を出している営業所の所長を新営業所長として異動させた。
かなりの量の宣伝もしてみた。しかし緊急に募集した営業所員を戦力にするには、時間がかかり、なかなか育たない。お陰でお客様からの信頼を受けづらく、いかにこれまでに実績のある所長でもスムーズに立ち上がれない。
さらに、実力営業所長が抜けた2つの営業所は赴任してきた新所長の指導力が乏しく売上げは激減、所員たちのやる気も低迷し始めている。大久保社長のエネルギーは新営業所の立ち上げに注がれたため、既存営業所の指揮・管理の手が抜けてしまっている。
大久保社長が現在の140%になると豪語していた売上げは、逆に20%ダウンの実態だ。
薬局では、一店舗当たりの売上げが伸びないとばかり、M&Aや出店至上主義のチェーンが少なくない。伸びないのは、やるべきことをやっていないから、利用者の評価が上がらないからだ。調剤報酬項目の算定率向上は直接数字に反映されるから認めても、それを支える・その根底をなすサービス向上努力には、ときに「薬局はボランティアじゃないんだ、霞を喰って生きて行けない」などと否定的だ。
売上げに直結することしか意味がないと考えているわけで、経営者としての資質はいかがなものか。利用者が薬局を評価するのは、トータルの薬局であり、サービスに込められた想いであり医療レベルだ。
店舗が発展しないのは、限界があるのではなく、経営方針の誤りであるのだが、それを補おうとするのがM&Aや出店の思想だ。
しかし、拡大を進めるあまり
・新規店舗にふさわしい人材が不在(その人材で新規店舗が伸びる保証もない)。
・新規店舗のためにスタッフを抜かれた店舗では、サービスレベルが低下し、業績の伸びが継続しない。それまで続けてきたサービスも中止せざるをえないこともある。
・残されたスタッフだけでは、士気が低下し、ミスも増えやすい。
・優秀なスタッフが抜かれることで、そのスタッフについていた顧客が落胆し、顧客離れをきたすこともある。
などで、一般的にはマイナスが大きい。
店舗が増えても、全体でみれば、新たに問題を抱えた新旧店舗が残されただけだ。それらが復活するには(その確証はないが)、相当の苦労を必要とし、時間もかかる。元に戻る保証もないし、“二次災害”が起こる可能性もある。
いかなる出店をも否定するものではない。計画的に、出店できる状況を整えて、マイナス面をきたさない状況で、新たな展開を進めるべきではないか。しかし、そうではない実態があまりにも多い。根本にある誤った考えがこういった悲劇をもたらすのだろう。
売上げが伸びないために営業体制の見直しを申し出た社員に対し、出店すれば売上げがあがるとばかり、実行を指示する社長。
やがて、2つの営業所がオープンしたが結果は散々たるものだった。まず営業所長にするのにふさわしいスタッフが見当たらないため、現在、実績を出している営業所の所長を新営業所長として異動させた。
かなりの量の宣伝もしてみた。しかし緊急に募集した営業所員を戦力にするには、時間がかかり、なかなか育たない。お陰でお客様からの信頼を受けづらく、いかにこれまでに実績のある所長でもスムーズに立ち上がれない。
さらに、実力営業所長が抜けた2つの営業所は赴任してきた新所長の指導力が乏しく売上げは激減、所員たちのやる気も低迷し始めている。大久保社長のエネルギーは新営業所の立ち上げに注がれたため、既存営業所の指揮・管理の手が抜けてしまっている。
大久保社長が現在の140%になると豪語していた売上げは、逆に20%ダウンの実態だ。
薬局では、一店舗当たりの売上げが伸びないとばかり、M&Aや出店至上主義のチェーンが少なくない。伸びないのは、やるべきことをやっていないから、利用者の評価が上がらないからだ。調剤報酬項目の算定率向上は直接数字に反映されるから認めても、それを支える・その根底をなすサービス向上努力には、ときに「薬局はボランティアじゃないんだ、霞を喰って生きて行けない」などと否定的だ。
売上げに直結することしか意味がないと考えているわけで、経営者としての資質はいかがなものか。利用者が薬局を評価するのは、トータルの薬局であり、サービスに込められた想いであり医療レベルだ。
店舗が発展しないのは、限界があるのではなく、経営方針の誤りであるのだが、それを補おうとするのがM&Aや出店の思想だ。
しかし、拡大を進めるあまり
・新規店舗にふさわしい人材が不在(その人材で新規店舗が伸びる保証もない)。
・新規店舗のためにスタッフを抜かれた店舗では、サービスレベルが低下し、業績の伸びが継続しない。それまで続けてきたサービスも中止せざるをえないこともある。
・残されたスタッフだけでは、士気が低下し、ミスも増えやすい。
・優秀なスタッフが抜かれることで、そのスタッフについていた顧客が落胆し、顧客離れをきたすこともある。
などで、一般的にはマイナスが大きい。
店舗が増えても、全体でみれば、新たに問題を抱えた新旧店舗が残されただけだ。それらが復活するには(その確証はないが)、相当の苦労を必要とし、時間もかかる。元に戻る保証もないし、“二次災害”が起こる可能性もある。
いかなる出店をも否定するものではない。計画的に、出店できる状況を整えて、マイナス面をきたさない状況で、新たな展開を進めるべきではないか。しかし、そうではない実態があまりにも多い。根本にある誤った考えがこういった悲劇をもたらすのだろう。
出店しなくても、各店舗での業績を伸ばすという方法もあるが、そこには時間も努力も必要だがそれは期待しても、短期間で大きな期待は持てないと考えているのではないか。
まず、そこに自身の業態に対して、そこで努力する職員に対して信用していないことがうかがえる。
業績が伸びるのは、事業が顧客に受け入れられた結果だ。顧客に十分なアプローチがなされずに、少しばかりの働きかけをしたところで、何も達成されない。そこに力を入れないから、出店(新規店舗)という安易な利益確保に走る。
事業を伸ばす努力の仕方を知らないのではないか。それがあれば、経営者の力量のなさを暴露してしまうことにもなるから、各店舗が伸びてもらうとかえって困るのではないか。
社員を信用していないことの証明のひとつが、出店主義にある。職員への教育投資、スタッフの配属や配置転換、これらが顧客に価値を与え、評価を得るようになされているかどうかで、経営者の腹の中がイヤでも見えてくるというものだ。