何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

会社の品格

2007-11-24 18:16:57 | Book Reviews
「会社の品格」 小笹芳央・著、幻冬舎新書054、2007年9月30日

 帯には「社員を大事にしない会社は必ず滅ぶ」とある。まぁ、なんと過激な文句であることか。それはさておき、本書に関して先にも記したが、その続編である。

p.30 実際、経済合理軸だけで長く活動を続けていると、組織はそれ以外の軸を捨てながら動くようになります。他の価値観を受け入れなくなっていく。一個人として「おかしいのではないか」「やってはいけないのではないか」と感じても、それを表明できない“空気”や“体質”が、着々と会社の中に出来上がってしまう。やがて、その中に社員がとけ込んでしまい、最後には、間違っていることに対して「おかしい」と感じることすらできない社内独自の集団的規範が生まれ、社会とはズレた暗黙の文化が形成されてしまうのです。

p.43 どこの会社で何の仕事をするのかということが、働く個人にとって大きな「投資判断」になる時代が来ています。だからこそ、私は「社員こそ最大の投資家である」と表現しています。
 社員が投資しているものは、人生で最も大切なもののひとつである、「自分の時間」や「自分の能力」です。

p.46 会社は、社員のモチベーションを、顧客の創造や信頼の獲得に向かわせなければなりません。

p.53 ビジネスというのは、社会に対するコミュニケーション行為です。
 結果的に、そうだね、その通りだね、という合意、共感、支持を獲得することができて、今の売り上げが成立している。本来的に経済合理軸で動く会社が品格を保つには、数字や儲け“以外”の使命や目標によって、社会と接続されていなければならない。つまり、社会にメッセージをきちんと送れる存在でなければならないのです。

p.54 営業行為というのは、市場の“共感”を奪い合う行為だと定義ができます。
 会社にとっての「売り上げ」というのは、マーケットからの共感やうなずきの総量です。メッセージを発信した結果として得られるものなのです。

p.56 誰に何を伝えるのか、というメッセージが社員と共有され、社員の共感を生んでいるか。
 数字や儲けだけの使命や目標では、多様化する社員のモチベーションを喚起できない時代になっているのです。

p.57 若い人を中心に、お金というモチベーションだけでは人は動かなくなってきています。誰しもが、使命感や成長感、貢献感などを欲している時代になっているのです。

p.64 知らず知らずの間に、そうした成功者たるカリスマへの過度の「依存」が社内に生まれてくることが少なくないのです。
 そしてこれが、盲目的な追従状態へとつながっていきます。こうなると、カリスマの規範=自分たちの規範となり、それが社会とズレていても、気がつかなくなる危険があります。外に目が向かなくなり、とにかく内向き志向になっていくのです。
 また、こうした会社内では、暗黙の言論統制が空気として広がることが少なくありません。上層部を批判できない雰囲気が作られ、弱音を吐いたらつぶされたり、弾かれたりしそうなムードが生まれる。こうなると、顧客よりも、上司や上層部を見て仕事をする、という風潮や環境が作られていきます。

p.69 特に大企業を中心とした成熟モードの会社が抱える病弊として、真っ先に挙げられるのが、「顧客視点が欠落してしまう」こと。長く安定的に事業が継続していると、自分の仕事全体が、どんな顧客の、どんな役に立っているのかが見えなくなってしまう。

p.109 日頃、美辞麗句を並べている上司の姿を、部下は本当の姿とは見ていません。


 普段は、「顧客満足を大切に」と言っていたにもかかわらず、月末、期末、数字に追い詰められたとき、「とりあえず行ってこい」「何でもいいからもらってこい」「何としてでも取ってこい」という言葉が出たりしていないかどうか。

p.124-6 「仕事そのものに充実感を得られるか」「仕事そのものが自己の成長につながるか」・・・・・。こういった仕事の「意味報酬」を、「金銭報酬」以上に多くの若者が求めているのです。
 今、「意味報酬」を与えられない仕事からは、人材がどんどん離反していきます。結果として、会社では、「内部統合」上、大きな障害が出てきている。また「意味報酬」を創り出せないと、きちんと仕事の意味を理解し、その意味に駆り立てられて仕事に向かう人材がいなくなり、最終的に、顧客の支持や共感が得られないような事態を招きます。
 では、その「意味」とはいったい何なのか。本書では、「納得感」「使命感」「効力感」「普遍性」「貢献感」「季節感」の6つのキーワードから、仕事の意味、仕事の品格を探ってみたいと思います。

p.126 経済合理性一辺倒で活動する会社の規範と、経済合理軸だけで動いているわけではない社会の規範とが衝突するのを防ぐことが、会社の品格には大きく影響します。

p.128 実際、不祥事を引き起こすのは、「仕事だからしょうがないじゃないか」「違うといっても変えられないじゃないか」「みんなそうしているじゃないか」というような、会社の中に漂うあきらめ、開き直り、自分への無理矢理の言い聞かせが生み出す空気のようなものだったりするのです。
 この環境に慣れてしまうと、会社と社会の価値が倒立した状態が起きたとしても、それを不自然に感じることができなくなってしまう。

p.137-8 マニュアルですべてガチガチに縛られている仕事では、誰がやっても変わりません。人間を機械のように扱うようなやり方ではなくそれぞれに選択の余地を残し、選択の機会を与えるのです。選択の余地のない仕事にしてしまうと、それは無力感や疎外感を生みかねないのです。

p.140 また、「商品の価値」と、「人材の価値」のバランスも意識しておくことが大切です。会社によっては、商品そのものに高い価値があり、人が価値を発揮できないという事態も起こりえます。逆に、属人的な仕事、人材だけが価値の場合もある。これは、両方とも問題となります。商品が強すぎると、人材のモチベーションが引き出せず、人材価値だけでは属人的な会社になってしまい、事業の発展が社員の能力に大きく依存することになってしまいます。

p.144-5 これからの会社は「普遍性」を意識して、仕事をデザインしなければなりません。仕事自体にスペシャリティやプロフェッショナリティの向上を感じられるように、業務デザインを再考すること。「普遍性」を訴求していくというこいとです。また、どんな仕事においても、その仕事の普遍性に気づかせる努力を、会社は行わなければなりません。
 そうでなければ、「こんなことをやっていて何になるんだろう」「自分の成長に本当につながるのだろうか」という疑念が、頭をもたげてきて、社員が安易に自分の仕事をマイナスに解釈してしまうようになります。結果として、若手が逃げていってしまう、優秀な人材が辞めてしまう、という事態が起こるのです。

p.149 貢献実感を持つ機会を削ぐと、まず社員の想像力の欠落・欠如を招くことになります。自分のしたことが、どう影響していくかも理解できなくなります。貢献している相手が見えず、相手の事情を考えなくなる。結果として、社内事情や部署事情を優先するような風潮が、はびこっていきかねない。「貢献感」の欠落が、やがては会社の品格をおとしめていく危険性があるのです。

p.153-5 品格のない会社は、社員から意味と時間を奪う、ということです。この「意味」と「時間」の2つこそ、ワークモチベーションが崩れる要因になるからこそ重要なのです。
 まず「意味」を奪うとはどういうことか。例えば、社員を機会の部品のように扱う会社は、意味を奪う会社の典型例でしょう。「とにかく黙って働けばいいんだ」「お前は自分のやることをやっていればいいんだ」という意識の会社です。
 そんな状況のもとで、社員は自分の存在意義を見出すことはできません。また、自分が辞めても替わりがいる、という意識のもとでは、エネルギーを発揮することもできません。
 時間を奪うとはどういうことか。経営者や幹部はときどき、社員の時間は無尽蔵にあるという感覚に陥ることがあります。社員の時間はすべて自分たちが預かったものだという考え方をしてしまう。
 この意識が、典型的に表れるのは会議です。だらだらと意味もなく長引く。議題が明確になっていない。進め方がうまくないから、結論がなかなか出ない・・・・・。

p.206-7 今後は、商品の品質や機能だけではなく、「この会社のファン」「この会社が好き」「会社の考え方に賛同する」といった。「共感」という軸での消費行動も、拡大していくのではないかと私は思います。
 これも投資と同じですが、数字や機能といった情報だけではなく、会社の社会に対する思いやこだわりといった評価軸を持つことで、消費者が品格のある会社を育てていくという流れができるのではないでしょうか。

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