酒タバコ肥満撲滅委員会

市民マラソンを楽しみながら、酒とタバコと肥満は嫌いだ、と呟く日常をうだうだと。

SR400生産終了 私なりにその歴史を振り返る

2021-05-31 11:14:12 | リターンライダー
先日、SR400の生産終了が発表されファイナルエディションが発売、あっというまに完売しました。

SR400はデビューが1978年、当時私は高校生でバリバリのバイク好きでした。
お金がなくて原付免許しか持っておらずで50ccにしか乗れなかったけど、オートバイ、モーターサイクリスト、ヤングマシン、ミスターバイクなどの雑誌を読みあさっていました。

免許制度の関係で当時の高校生にとっては400ccが国内最高峰という位置付けでした。

1975年 免許制度改正、400ccが事実上の上限へ
1977年 CB400Four生産中止、2気筒のHAWK-IIへ
1978年 SR400発売
1979年 Z400FX発売
1981年 CBX400F発売

4気筒で大人気だったCB400Fourがコスト的理由で生産中止となり、400ccクラスは4ストローク2気筒モデルのHAWK-II、GS400、Z400、GX400がしのぎを削っていました。
でも大型バイクへの憧れもあって4気筒への渇望感は消えず、そこに登場したのが4気筒のカワサキZ400FXでした。
やがて市場は400cc4気筒戦争になりホンダもCBX400Fを投入、他メーカーもこぞって4気筒モデルを投入しました。
SR400が誕生したのは、こんな時代のさなかでした。

当時の400ccユーザーの多くは若者、馬力が多ければ人気が出る時代の中でオフロード車や小排気量以外では見向きもされなかった単気筒のロードモデルとして投入されたのがSR400でした。
ベースになったのはXT500というオフロード車ですので同時発売のSR500が本来のモデル、SR400は日本の免許制度のためのモデルでした。
単にボアを小さくして400cc化したのではなくストロークを短くしていました。

もともとSR400はビッグシングルの鼓動とかオールドルックが売りではありませんでした。
当時はモダンなカフェレーサー(昭和的表現ですね)が人気で、400RS/Z400のようなベーシックなデザイン(今でいうネイキッドかな)のバイクもあるにはありましたが、主流ではなかった。
HAWK-IIは先祖返りしたデザインで、特に初期型はヤカンタンクに座布団シートというオールドルックで出ましたが、派生モデルのHAWK-IIIはタンク・サイドカバー・テールカウルが流れるようなデザインに変わりました。
やはり売れ筋はオールドルックではなかったのです。

SR400には小さなシートカウルがあり、タンク下とシート下のラインもV字型、当時アメリカでフラットダートトラックレースというのがあったそうですがそれを大きく意識したモデルだったようです。

当時のSRはオールドルックという方向性はありませんでした。
その証拠にキャストホイールが流行るとSRもそれに乗っかりました。
ただ当時は技術的な問題で形は単純で太く無骨で、細身のSRには似合わず大八車などと揶揄されましたが。
オールドルックがウリならスポークのままにしたはずです。
ダートラレーサー風のデザインは大ブレイクには至らず、メーカーも方向性を決めかねていたのではないでしょうか。
ただ、売れないバイクではなかったようです。
当時も一定の需要はあったようですが、馬鹿売れはしなかった。

若者でSR400に興味を示す人は多くはなかった気がします。
セルがなく馬力も貧弱、飛ばしてなんぼの価値観が蔓延していた時代にバカ売れする要素はなかったのです。

でも当時のライバルたちが消え去る中、唯一生き残ったのがSRです。
しかも基本設計は当時のまま生き残るというのは奇跡に近いことで、たぶん当時これを予測できた人はいないでしょう。
はたして、どこにそんな魅力があったのでしょうか。

たぶん一番は素材の良さ、馬力などスペック上の性能では分からない味があったからでしょう。
ノーマルでトコトコ乗っても楽しい、カスタムしても楽しい、軽量を生かして高性能化するのも楽しい、もちろん性能的には多気筒エンジンにはかなわないのですが単気筒にこだわって速さを追い求める人も(一部ですが)いました。

シングルならではの弄りやすさも大きな理由でしょう。
モンキーのように弄る楽しみとの親和性が高かったのも理由の一つのはずです。
マフラー交換一つとっても、4気筒では値段も高いし自分でやるのも難しいのですが、シングルエンジンなら自分でもできます。
ある意味中途半端だったスタイルも、これと同列に語ってもいいでしょう。
これがW800やエストレヤのようにほぼ完成したスタイルだったら、これを大きく改造して乗ろうという人はさほど多くなかった気がします。
ただ値段はHAWK-IIとほぼ同じ31万円、Z400FXのような四気筒モデルの38万5千円よりはやすいものの、思ったほど安くはありませんでした。

もう一つの大きな理由は、メーカーが風を読んだからでしょう。
最初からレトロ狙いではなく、単気筒ながらある種のスポーツ性(主にダートトラック)をイメージしていたはずです。
しかしユーザーが求めているものがボバー的な改造だったり懐古趣味であることに気がついて、1985年にフロントにドラムブレーキを採用しました。
性能的にはディスクブレーキの方が優位点が多く、ディスクからドラムに変わることはあってもその逆は異例です。
ヤマハがSRの持っていた可能性(それは発売時にはあまり意識していなかったはず)に気づいたのでしょう。


発売時のコンセプトなのかオフ車ベースだからなのか、セルなしキックオンリーという当時でも相当珍しいスタイルでした。
当時の中排気量は2ストロークやオフ車以外はセル付きがほとんど、セルなしのロードバイクは廉価版ぐらいでした。
400ccシングルとなるとキックは重く、自動デコンプがないのでデコンプレバーを操作するという面倒臭さ。
でも、これが逆に味となって長寿命に寄与したはずですから面白いものです。

デコンプレバーを操作してのキックという面倒な儀式、それがSRに乗る上でのハードルにもなったけど、魅力にもなった。
魅力どころかそれがSRの真髄を感じる人も多く、いまだに「セルがついたらSRではない」という意見の人が多いのも面白い。


私はSRのデザインは中途半端だと思います。
オールドルックにしてはシートカウルやタンク下端の角度が変、ダウンマフラーなのでスクランブラーなどのようにオフを意識したバイクではないし、そもそもフロントフェンダーの形も純然たるロードタイプ。
タンク形状も半端な印象ですが、白ラインを入れれば昔のBMWのような印象にもなるし、躍動感あるデザインにもできる形状です。
全体にどっちつかずなデザインが、弄る素材として「いい方」に出たのではないでしょうか。

私もSRに乗っていました。
それも若い頃ではなく、リターンしてからのことです。
エンジン的に高速は苦手だったしETCはつける場所もないので下道専用でした。
でも、あのエンジンは法定速度で乗っていても楽しかった。
そして左側から見たエンジン造形の美しさは今でも見事だと思います。
(年々、排ガス規制で補機類が増えて、チューブだらけの末期患者のようになってしまいましたが)

ズドンとした野暮ったいマフラーが嫌いでキャブトンに変えました。
分厚くかっこ悪いシートも社外品の薄手に変えました。
でも、どちらもノーマルの方が性能は上でした。
特にマフラーは小さなチャンバー(当時、排気系にこのような箱を付けたのはSRぐらいのはず)が効いているのか、ノーマルマフラーは低速トルクがあって燃費もいい。
でも音を楽しむならキャブトンだし、見た目は薄いシートの方が絶対にかっこいいい。
こうやって弄る楽しみが味わえる数少ないバイク、それがSRだった。
そして、いじればいじるほどノーマルの出来の良さを痛感してしまうのが「SRあるある」の一つでした。

私はキャブ車に乗っていましたので、インジェクションになったりキャニスターが付いたSRに乗ろうとは思いません。
正直、そこまでして長生きさせるのはどうなんだろうと思っていましたが、インジェクション後の売れ行きを見ていると、時代に合わせて生き残ったのは正解だったようです。
しかし、さすがに40年以上前の設計ではこれ以上の対策は無理、今回の生産中止となりました。

ヤマハは復活の予定はないと言っているそうです。
空冷単気筒といえば、ホンダのGB350が大人気です。
あるいは数年後、これに似たバイクがヤマハから出るかもしれません。
でも、きっとそれはSRとは別物になるはずです。

カワサキはZ1/Z2をオマージュしたZ900RSを作って大成功しました。
砲弾型メーター、タンクのデザイン、ミラー形状など徹底的に当時を意識しつつも、モノサスでテールが短い現代風デザインに空冷風エンジンフィンに最新の電子制御搭載など、最新技術の中に懐かしさを見事に取り入れてバカ売れし続けています。
私もオーナーですが、あの巨大なタンクは当時のZ2とは全くの別の形ながら、でも火の玉やタイガーカラーが見事に溶け込んでいます。
当時Z2を自家塗装で黒一色に塗る人が多かったことから黒一色のバージョンも出すなど、とにかく等にZ2に憧れたライダーのツボをついています。

ヤマハがそんなSRをオマージュしたバイクを出す日が来るかどうか。
私は、その日は来なくていいと思っています。
SRはこれで終わり。
キックオンリーで空冷短気筒、これがSRだと思うのです。
仮にヤマハがビッグシングルを出したとしても、SRオマージュだったら失敗しそうな気がします。

もしビッグシングルを出すなら、売れるかどうか微妙ですがSRXの方向性で出して欲しいかな。
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