邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「生きている小平次」

2006年02月04日 | ★恐怖!な映画
旅芝居一座の囃子方(音響さん)
太九郎(芥川比呂志)は
女に手が早く、
一座の役者、小平次(中村扇雀)の女おちか(八千草薫)を
横取りして女房にしてしまった。

ある日、釣りに出かけた二人は小船の上で口論になる。

もみ合って湖に落ちた小平次を
櫂で打って沈めた太久郎は
雷が鳴る中必死で逃げるが
死んだはずの小平次
湖の上にすっくと立ち上がっているのを見て仰天する。

この場面の視覚的効果は抜群!

それも恐かったが
それからも恐い。

あたかも生きているかのように
二人の目の前に現れる小平次の幻影に
次第に神経がまいる太久郎は
女の本性を知って
罪の意識にさいなまれていく。
どこまでも付いてくる
小平次が亡霊なのかなんなのかわからないところが
また不気味。

ほとんど3人芝居のような作品だが、
少数精鋭の見本のような内容。

芥川比呂志はどんな感情をも表現できる俳優だ。
この人が喋ると台詞の格が数段あがるような気がする。

ねっとりじっとりの役をやらせたら
天下一品の中村扇雀は、後姿まで隙が無い。
まさに情念の塊のようで、化けて出られたら
いやなタイプである。

八千草薫の悪女役というのは初めて見たかも。
童女のような愛くるしい顔立ちだけに
底が知れない恐ろしさを感じるんですね。

初めから終わりまでどろどろと鳴る太鼓が不安を駆り立てる。

暗闇の浜辺での芥川の芝居が圧巻。

昔、中川信夫版も見たけど、
私はこっちのほうが面白かったです。歌舞伎版は未見。

監督 : 青柳信雄
原作 : 鈴木泉三郎
脚色 : 井手俊郎
撮影 : 遠藤精一 音楽 : 佐藤勝 美術 : 北猛夫 / 清水喜代志

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「柳生一族の陰謀」

2006年02月02日 | ★ぐっとくる時代劇
派手です。

豪華なキャストが暴れまわる中を
ひとり腹式呼吸で我が芝居を貫く萬屋錦之介

錦ちゃんがいなかったらこの映画は
もしかしたら騒々しいエンターテイメントで終わっていたかもしれない。

徳川家お世継ぎ問題をめぐっての争いを
深作時代劇らしく華やかに派手に描く。

二代将軍が不審な死を遂げ、天下分け目の世継ぎ争いが勃発しようとしていた。

家光(松方弘樹)を擁立する柳生但馬守(萬屋錦之介)、
春日局(中原早苗)一派と
次男忠長(西郷輝彦)を推す母お江与の方(山田五十鈴)、
尾張大納言(三船敏郎)、土井大炊頭利勝(芦田伸介)らの
争いは都の公家たちも巻き込んで激化していく。

なんとしても家光を次期将軍にとごり押したい但馬は
柳生の里人たちをも冷徹に利用する。

吃音で顔に大きなあざを持った家光、
討たれる側の忠長はさわやかな容貌、明朗な性格にするなど
ひねった人物設定が巧みだ

のらりくらりと武家をあしらう公家方(金子信雄・梅津栄 )も面白い。
優雅で弱弱しく見える鳥丸少将文麿(成田三樹夫)が、
刀をもつや別人のごとく変身するさまはカッコ良すぎ。
成田ファンはこれも必見でしょう。
この映画ではファルセットの高音台詞が生きてます。

千葉真一の当たり役、柳生十兵衛は言うに及ばず、
丹波哲郎、原田芳雄、芦田伸介、夏八木勲、
金子信雄、志穂美悦子、真田広之、成田三樹夫、中村富十郎、
中村時之介、中原早苗、高橋悦史、大原麗子、
松方弘樹、西郷輝彦、山田五十鈴、三船敏郎・・

これだけのキャストを使い、
それぞれきちんと見せ場を作って
しかも散漫にならずまとめあげるのはさすがである。
角川春樹さんも出演していたようだが、
しっくり溶け込んでいたのかどれかわからなかった!

2時間10分があっという間に過ぎる一級のエンターテイメント。

錦之介の大見得も当時は色々言われたが、
今見ると全体のバランスからいって締めくくりには
ばっちりに見えると思うがいかがでしょう。

1978年 深作欣二  脚本 : 野上龍雄 松田寛夫 深作欣二 
撮影 : 中島徹 音楽 : 津島利章 美術 : 井川徳道 

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「座頭市地獄旅」

2006年02月01日 | ★ぐっとくる時代劇
実はこの映画は
成田三樹夫めあてで見ました。

シリーズ12作目と、油が乗り切っている頃です。
しかも監督は、きっちり楽しませてくれる三隅研次とくれば、
見たくなるのが人情!

市は船旅の途中で十文字糺(成田三樹夫)という将棋好きの浪人に出会う。
将棋もめっぽう強い市を気に入った十文字は
旅についてくることに。

喧嘩の巻き添えで怪我をさせてしまった子供に見せる優しさ、
目が見えない悲しさでほろりとさせたかと思えば、
鮮やかな居合い抜きもたっぷりとみせる。

あだ討ち兄妹の兄役で山本学が出ているが、贅沢な使い方。
いかにも返り討ちに会いそうなか弱い侍を演じている。
他に岩崎加根子が出ているが特にひねった役ではありません。

勝と成田三樹夫との●と▽コンビネーションはばっちり。

気配で相手の殺気の有無を測る。二人の立ち合いの間は芸術的だ。

当然最後は市が勝つのだけど、ほろ苦さが残るのはいつものこと。
伊福部の音楽が地獄の旅路をゆく座頭市の凄みを増しに増している。

黙っていても良し、低音バリバリの台詞ももちろん良し。
成田三樹夫ファンは見逃せない一本でしょう。

1965年 三隅研次監督作品 脚色 伊藤大輔

撮影 : 牧浦地志 音楽 : 伊福部昭  美術 : 内藤昭

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