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「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」

2005年01月02日 | ★人生色々な映画
溝口健二とその作品にかかわった39人の映画人からのインタビューと、
病に倒れ撮れなかった「大阪物語」までの作品を紹介している。

「雨月物語」「祇園囃子」「西鶴一代女」
「お遊さま」「近松物語」「赤線地帯」など
日本映画史上に燦然と輝く名作たち・・

それらは、溝口の芸術へのあくなき挑戦と執念、
そしてカメラ・宮川一夫(上品!)らの最優秀スタッフ、
森雅之や京マチ子ら不世出の俳優たち、
すべてが結集した宝石のような作品たちなのだった。

新藤のインタビューは溝口の私生活をも探ろうと、
周辺の人々にも及んでいた。
執拗に病院まで押しかけて話をとろうとする姿勢には
やりすぎだと感じた。

再三噂になっていた田中絹代との関係については
本人に単刀直入に聞いていて、田中絹代もズバリ答えていたのが面白かった。
この記録映画における田中のウエイトはとても重かったのが印象的。

映画「映画女優」では吉永小百合が田中絹代を演じて、
溝口に対決するように演技に燃えて女優として開眼する様子が描かれていた。

菅原文太が溝口というのはイメージに合わなかったけど。
田中絹代という人は実に明確にきっぱりと話をされる方で驚いた。

その正反対が入江たか子。
撮影の途中で降ろされた事件があったらしい。
溝口が「化け猫ばっかりやってるからそんな演技しか出来ないんだ」と
言ったとか言わなかったとか・・
このインタビューでは化け猫のように撮られていた!気の毒!

俳優陣では他に若尾文子、京マチ子、中村鴈治郎、進藤英太郎、
木暮実千代、小沢栄太郎、浦辺粂子など。

甲斐庄楠音のインタビューがあるというので楽しみにしていたのだが、
ほんの3分ほどだった!甲斐庄が溝口のイメージにあった着物を調達し、
着付けも全部やったとか。
極彩色の絵の具と絵に囲まれた、柔らかな物腰の老人でした。

見るにつれ、完璧な溝口組の仕事が浮かび上がってくる。
溝口の情熱もさることながらこのドキュメンタリーに登場した
すべての人たちの映画に対する熱意と誇りに打たれた。

インタビューの場所はアパートの前だったり、自宅の庭先だったり、まちまち。
皆さん現役は引退し、決してもう若くはない。
だが映画のことを語る目はぴかりと光る。

語る人の目に涙が浮かんでいるのを見て、
溝口健二という人の人間性にも触れたような気がした。

見ごたえがある映画でした。

完成していたら間違いなく代表作になっていただろうという
「大阪物語」が溝口監督の手で見られないのが悔しい。

1975年 新藤兼人監督作品 
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