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※- ウミガメ上陸、初のゼロ・産卵地に異変:徳島県 2016年10月07日
website から 蒲生田(カモダ)海岸
10月07日、NHK website -: 海を旅して砂浜にやってくるウミガメが、徳島県のある海岸に、ことしの夏は1回も姿を見せませんでした。
その場所は、アカウミガメの産卵地として知られる徳島県阿南市の蒲生田(カモダ)海岸です。
産卵の時期に上陸がゼロだったのは、地元の住民らが調査を始めた昭和29年以来、初めて。
ウミガメを見守り続けてきた砂浜で起きた“異変”に迫ります
≪ ウミガメ観察62年、蒲生田海岸とは ≫
四国の最東端にある蒲生田海岸。アカウミガメがやってくるこの砂浜では、昭和29年に地元の小学生が夏休みの自由研究として上陸回数や産卵の様子を観察し始めました。
子どもたちは産卵期の5月から8月ごろまで毎朝、海岸を見回って、ウミガメの足跡や産卵した跡がないか確認し記録に残してきました。
こうした観察は小学校が休校になる平成3年まで続き、その後は阿南市の教育委員会が住民たちと協力して60年余りにわたって観察の歴史を紡いできました。
徳島県内には蒲生田海岸のほかにも産卵場所とされる砂浜が2か所ありますが、これだけ長きにわたって観察が続けられた場所はなく、世界的に見ても貴重な記録だということです。
≪ ことしの異変とは(2016年) ≫
ところが、この夏、長い歴史の中で初めての事態が起きました。
ウミガメの上陸が1回も確認されなかったのです。
観察を担当した阿南市「地域おこし協力隊」の助田光穂さんは、5月から毎朝、500メートルほどある海岸をくまなく歩き、ウミガメの足跡などを探しましたが、1つも見つけられませんでした。
住民からの要望もあって、助田さんは例年より期間を延長して9月末まで調査を続けましたが、結果は同じでした。
助田さんは「ウミガメは地域の宝のようなもので、1回でも上陸してほしいという思いで調査を続けたのでとても残念です。
ウミガメにもう一度、来てもらうために何ができるのか考えていきたい」と話しています。
≪ ここ最近は減少傾向 ≫
62年間の観察記録をひもとくと、ピークの時の昭和34年はひと夏で781回もウミガメの上陸が確認されていました。
しかし、その後は減少傾向が続き、ここ10年では年間平均で20回ほどにまで落ち込んでいます。
阿南市に隣接する徳島県美波町の「日和佐うみがめ博物館カレッタ」の田中宇輝学芸員は、「海岸周辺の開発などが影響して昔と比べて砂の量が減って海岸自体がやせ細り、カメが産卵しづらくなっているのではないか」と指摘しています。
一方で、ことし、阿南市内では、蒲生田海岸の北部にある別の海岸でアカウミガメの上陸が20回以上確認されるなど、これまでにない現象もみられたということです。
田中学芸員は「これまで蒲生田海岸に上陸していたウミガメが、潮の流れの変化などで別の海岸に行った可能性はある。
しかし、それ以外にも上陸を嫌がる何らか原因があるのかもしれない」と話しています。
阿南市では、はっきりした原因がわからないことから、来年以降も調査を続けていきたいとしています。
≪ 地元住民は落胆 ≫
ウミガメの上陸が年々減っていくことに心配を募らせていた地元の住民たちは、ことし、とうとうゼロになってしまったことに衝撃を受けています。
小学生の時に観察をしていた岡本憲治さん(69)は、ウミガメが少しでも上陸しやすい環境を保とうと、毎年6月から8月までの間、海岸のごみ拾いを続けてきました。
岡本さんは「ことしは本当に残念ですが、私たち住民は、来年はきっとウミガメがやってくると信じて観察を続けていきいたい」と話しています。
≪ “ゼロ” でも貴重な記録 ≫
ウミガメの研究や保護活動を行っている「日本ウミガメ協議会」によりますと、九州地方などにあるほかの産卵地では上陸の回数が去年より増えているところも多く、全国的にウミガメの上陸が減っているというわけではありません。
アカウミガメは一般的に、生まれてから産卵する大人になるまで40年ほどかかるため、産卵地の海岸の環境を的確に分析するにはその期間と同じぐらいの定点観測が必要となります。
だからこそ、60年余りにわたり続いてきた蒲生田海岸の記録はアカウミガメの研究において非常に価値のあるものだといえます。
「日本ウミガメ協議会」の松沢慶将会長は、「62年間の歴史の中で、ことしゼロだったという記録はほかの海岸では残せない、貴重な記録。
だからこそ、何があったのか、専門家の視点で詳しく分析していきたい」と話しています
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