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外交も国会対策と同じ
これまで官房副長官、自民党幹事長の時代を含め対米交渉を任されて、本気の交渉をして「タフ・ネゴシエーター」とか言われました。
それを通じて、アメリカというのはこういう国なんだ、という小沢さんなりのアメリカ観はどういうものですか
小沢 : アメリカは単純といえば単純。それほど複雑な策を弄するとは思わない。
アメリカとの交渉では「お前は信用できない」というところから始まって、ギャンギャンギャンギャン議論したけれど、最後は「 お互い良い仕事ができたね 」 って握手して別れた。
変に媚びないっていうことなんですか
小沢 : そう。ちゃんと言えばいいんです。それはおかしいよ、それは認められない、これはいいよと。とにかくはっきり言うこと。それで約束したことは守る。人間同士だから当然。それだけだよ。
外交も内政も同じなわけですね
小沢 : そう。みんな同じ。国会対策だって同じだ。
相当、長い視点で付き合っているわけですね
小沢 : そう。日中外交はこれまで、どういう考え方でやっていくかという根本がないから、長期という考え方そのものがあるわけない。
その場その場を何となくごまかしていくだけだから、長期の視点はあるはずがない。
今の小泉外交ですが、この5年半くらいどういうふうにお考えですか
小沢 : 一緒です。小泉外交などというものはない。
日米中・三角形を成してないのが問題
最近、小沢さんは「日米中正三角形論」を言われていますね。その意味合いは
小沢 : 正三角形でも二等辺三角形でもなんでもいい。たまたまそんな話になっただけで、「正」か「二等辺」かが問題じゃなくて、日米中関係が三角形になってないから問題だということです。
米中の一辺だけが存在していて、日本はあっちの方にポツンと点として存在していて、辺を成していない。格好のいい三角形を成すような関係にしなきゃ駄目だということですよ。
しかもできれば、日本がその要にいて、三国間の利害調整を図っていくという立場にならなければならない。
日本は無視されているということですか
小沢 : 問題外、蚊帳の外ということ。だれも相手にしていない。そう言うと、日米は仲がいいじゃないかとか言う人がいるけれど、全然それは違う。
日米関係は形があるけれど中身がない。日中は形も中身もない。最近、僕はキッシンジャーの言葉を引用するんだよ。
彼らが仲間内で日本について何と言っていたか、朝日新聞で出ていたけれど、「日本人は信用できない」といった言い方、考え方で話しているんだ。
彼らにとって日本はその程度なんだ。 同盟国でも何でもない。 アメリカに尻尾振ってついてくる限りは、いい子いい子と言っているだけなんだ。 日本は本当の同盟国にならなきゃいけない。
はっきり自分の主張もビジョンも持って言わなきゃいけない
小沢 : 日米関係はどうあるべきか、日米の役割はどう分担すべきか、そういうことをきちんと言っていないでしょう。
心配するな、「 国乱れて忠臣あり 」
改革の道は、先が長いですね
小沢 : 確かに先は長いけれど日本人は馬鹿じゃないからね。ただ、まだ世の中が豊かで平和なんだ。
でも、日本も捨てたもんじゃない。明治維新がいい例だ。徳川260年間、閉鎖的な世の中がずっと続いてきた。
なのに、何で明治にあれほどのリーダーが出たのか。「 国乱れて忠臣あり 」 だね。心配するなって。
まだ乱れなきゃ駄目ですか
小沢 : もっと乱れないと駄目なんだろうね(笑)。乱れるというのは普通、対外的には外敵に攻められることだが、日本はそれがなかった。外的乱れは今でもない。
ただ、日本は内的乱れがものすごくて、この5年間でひどく進行した。あのいい加減さ、無責任さだからね。
今の社会的な家族の乱れとか
小沢 : 日本社会は、メルトダウンの感じになってきた。
何でもありの社会になってきましたか
小沢 :人間の社会じゃないみたいになってしまった。ノンルールだ。モラルとか倫理とか道徳とかがさらさらない。
「日本人」はどこに行ったのか、ということだ。日本人の良いところがまた無くなってしまった。これは「餓鬼道」だと思う。
来年の参院選挙に向けて、やるべきことがたくさんありそうですが
小沢 : 選挙に勝たなきゃどうしようもない。ただ日本人は、論理的な結論ではないけれど、何とはなしに、このままじゃおかしいと思っている。
自民党に票を入れている人たちもこのままで本当にいいのだろうか、どうも不安だと思っている。ただ、もう一歩越える勇気がないんだね。
踏み出せないんですね
小沢 : おっかないんだよ。何となく、変わっちゃったらどうなるだろうと思ってしまう。だから、もう一歩なんだ。
票を見てみなさい。 民主党は去年の総選挙で減っていないんです。 2480万票取っている。 ただ「 小泉劇場 」で増えた分が、自民党によけいに流れただけだ。
底辺では、みんなおかしいと思っている。小泉人気というものは錯覚なんだ。
何となく小泉さんは何かやってくれるんじゃないかと、ずっと5年間期待し続けてきた。(小泉首相は)な
かなかテクニックがうまいからね。
人事のやり方なんかが上手いんですか
小沢 : 彼は人間的情がないからできる。そういう人が権力を取っちゃった。権力者は人間関係を一切いとわなければ何でもできる。
小泉さんは情というものがない。僕は理を重んずる方だけれど、彼は理もないんだ。(小泉首相には)理がなくて、情もないから問題なんです。
歴代の総理にないタイプですか
小沢 : その意味で、似ている政治家はスターリンだと思う、あれほど頭は良くないけれど。要するに、次々に仲間を殺しちゃうでしょう。
去年なんか、まさにそういう感じでしたか
小沢 : だけど、それほどは能力がないから、独裁者にならないで済んでいる。 彼にもっと能力があったらすごい。全権力を握るんだもの。マスコミだってなんだって、みんな(首相の)言う通りじゃないか。
本当に立ち向かったら、「 この野郎 」とつぶされる。だけど、本当は権力というものはそういうものなんだ。それほど強大なものなんだ。
何にも情がない人が権力の座に着いたから強かったんだよ。恐るべきだよ。
( 世界週報「小泉外政論・内政論第9回」より転載=時事通信解説委員 鈴木美勝 )
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民主党代表 小沢 一郎氏
おざわ・いちろう 1942年生まれ。慶応大経済学部卒業。69年衆院議員初当選。自治相・国家公安委員長、内閣官房副長官、自民党幹事長などを歴任。93年自民党を離党後、新生党代表幹事、新進党・自由党党首などを経て、2006年4月より民主党代表
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