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穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

業界のスタンダードに近い「湖中の女」

2013-01-05 18:35:58 | 書評
最初に読んだときから、どうしてなじめない、違和感を感じるところがあった「湖中の女」であるが、前回話したような経緯で読み返して、気が付いた。これはこの種の小説の業界スタンダードに近いつくりなんだな。チャンドラーもおそらく、何かの考えがあって意識してつくったらしい。

だから文章は別として、つくりにチャンドラーらしさがなくてわざわざ読まなくてもいいような印象がしたのだろう。

ロスマグは最初のうちはチャンドラーをまねしていたというが、湖中の女なんかは一番真似しやすかったんじゃないだろうか。

順序は逆なんだが、なんだかロスマグみたいだなとふと思ったことから上のことに気が付いた。

やけに詳しく細かく、部屋の捜索の様子を長々と描写したり、探偵が教科書通りあちこち嗅いでまわる。チャンドラーらしくない。マーロウらしくない。これが映画化されたときに、マーロウはカメラアイのようにあちこちしていて、肝心のマーロウは画面に登場しない独特の手法だったらしいが、それが一番ふさわしいかな、というような記述が続く。

おそらく、何かの思惑があって意図的にやったのだろうが、やっぱり塩梅よくねー、というので止めたようだ。他には類似の手法の作品はなかったと思うが。