毎度お騒がせの古井由吉「辻」の感想ですが、巻末に大江健三郎と古井由吉の対談が載っている。題して「詩を読む、時を眺める」。
対談はもっぱら大江がリードしている。タイトルの通り詩を読む話である。東大の独文科と仏文科の卒業生らしく、英独仏の詩の日本語への翻訳ともどかしさと言うか難しさの話に終始している。まったく同感であるが、肝心の「辻」への言及がまったくない。
ま、話題が詩の翻訳の話でもいいが、辻あるいは彼の小説への話題を大江は全く持ち出していない。ちょっと、妙だというか、はぐらかされたというか、そんな感想を持った。