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言の葉

2008.11.28 開設
2022.07.01 移設
sonnet wrote.

桜桃忌

2009年06月19日 | さんぽ

今日6月19日は太宰治の命日(正確には遺体が発見された日、且つ誕生日)桜桃忌である。
ことに今年は生誕100年で、ゆかりのある三鷹市は盛り上がっている。

太宰作品は若い頃に読んでいた。
大ファンからすれば一笑に付される程度、太宰嫌いからは「好きねぇ…」とこれまた苦笑される、その辺りの読者だった。彼ほど好き嫌いが分かれる作家も珍しい。読まなくなってもう30年以上になる。
思えばお墓のある禅林寺も入水した玉川上水も、自転車でちょっと遠出する程度の距離にあり、先日サイクリングがてらに出かけてみた。

ジブリ美術館の外観だけをあわただしく見て(後日投稿)、井の頭公園を横目に玉川上水沿いを三鷹駅方面へ。
途中にある山本有三記念館もスルーするつもりだったが、建物に惹かれ、内部も見たくなって立ち寄った(後日投稿)。
「深くゆるゆると流れ」「青葉のトンネル」と描写された上水は、当時とは違って川幅は狭く両岸の木々が迫って生い茂り、トンネルもなさず水面もほとんど見えなくなっている。



中央線に架かる跨線橋は太宰が写真に収まっている当時のままで残っているとのこと。
知人が遊びに来ると案内したという橋の上からは、どんな風景が望めたのだろうかか。
その日橋上には鉄オタ予備軍の小学生4人がいて、上り下りの列車が来るたび飽きることなく右に左に駆け出しては「お~い、甲斐路~!」などと叫んでは手を振っていた。



禅林寺は山門だけ。ここには森鴎外のお墓もあるらしいが、墓地にまで行ってみる気にはなれなかった。
今日はたくさんのファンがお参りに行ったことだろう。
…吉行淳之介は言っている。
「太宰は好きだが、太宰ファンは嫌いだ」と。
なかなか含蓄に富んだ言葉である。
不遜にもそちら側に付いて「我が意を得たり」などと頷いてみたりする。
嫌われているにもかかわらず…。

偶然にも今日、山形の知人から毎年送られてくるサクランボが届いた。
「子どもより親が大事」などと太宰を真似て呟きながら、家族よりいち早く味見。
自分には太宰ほどの懊悩も屈託もなく、佐藤錦の甘味が口いっぱいに広がった。cherry