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言の葉

2008.11.28 開設
2022.07.01 移設
sonnet wrote.

2021春光戦観戦記 1

2021年03月27日 | 俳句


プレバト俳句タイトル戦の結果をアップするのが定番になってしまった。
先日25日、春光戦決勝があった。
今回の兼題は「じゃんけん」である。

1位 横尾渉(名人6段)
    浜風光る スクイズの土埃
2位 千原ジュニア(名人3段) 
    サザエさんに 後出しあいこ 吾子の春
3位 梅沢富美男(永世名人)
    「最初はグー」 聞こゆ志村忌 春の星
4位 村上健志(名人10段)
    けいどろの 牢に鐘楼 花の寺
5位 中田喜子(名人5段)
    「ちょき」だす子 春の光を 突き破る
6位 藤本敏史(名人10段)
    うららかや 次女出すチョキは まだ未完
7位 東国原英夫(名人10段)
    志村けんさん一周忌(前書き)
    山も笑う 「最初はグー」の 発明者
8位 皆藤愛子(特待生2級) 
    木の芽晴れ あいこ三回 照れ笑い
9位 松岡充(特待生1級)
    助手席の シートに温み 鳥曇  
10位 向井慧(特待生5級)
    永き日の じゃんけん多き 初デート


2021春光戦 予選観戦記

2021年03月24日 | 俳句


プレバト俳句の春光戦予選が2月18日、25日の2週にわたって放送された。
翌週決勝戦だろうか? 早すぎやしないか? と思っていたら、果たして通常の査定に戻り、決勝戦は明日3月25日に放送される。
春光の頃や良し。

間隔が空いたことだし、せっかくだから予選の模様も記しておこう。
20名が4ブロックに分かれ、各ブロックの1位と、2位4名の中から3名が決勝戦に進むことになった。
兼題は、A・Bブロックが「ウニの軍艦巻き」、C・Dブロックが「きのこの山とたけのこの里」だった。

Aブロック1位  藤本敏史(名人10段)
    流星群 いくつか海に 堕ちて海胆

Bブロック1位  皆藤愛子(特待生2級) 
    休業と手書き 格子戸に春塵

Cブロック1位  東国原英夫(名人10段)
    買い食いを 叱られて来し 末黒野(すぐろの)よ

Dブロック1位  向井慧(特待生5級)
    花疲れ 臓腑に溶ける チョコレート

各ブロックの2位から選ばれたのは以下の3名だった。
Aブロック2位 村上健志(名人10段)
    海苔篊(ひび)の 等間隔に 暮れかかる

Bブロック2位 中田喜子(名人5段)
    艶めきて 海胆握る指 和(な)ぎのごと

Cブロック2位 松岡充(特待生1級)
    朧夜や 一人キャンプの ホットチョコ

金秋戦で1~3位だった千原ジュニア3段、横尾渉6段、梅沢富美男永世名人の3名が(前回の冬麗戦勝者でなかったのは、変則的なノミネートだったからか?)シードで迎え討ち、計10名で決勝戦が実施される。

      ***************************************************

俳句関連の番組を見逃さないよう、キーワード入力「俳句」で録画予約している。
すると、Eテレの子ども向けの俳句番組が録画されたり、長時間のワイドショーが録画され、心当たりがなく早送りで確認すると、数分の俳句コーナーがあったりする。
そんな中、2月28日放送の「第22回NHK全国俳句大会」が録画されていて、ホッと胸を撫でおろした。
投稿数4万144句(自由題3万364句、題詠「生」9780句)を俳人13名が選者となって特選句が選ばれ、その中から大会大賞3句が選ばれた。
印象に残った句を1句だけ。
    銀漢や 未来は生まぬ 砂時計 (大賞句)
どの句も「さすがだなぁ」と感心するばかり。
相変わらず鑑賞者でしかない。


2021冬麗戦観戦記 2

2021年01月31日 | 俳句

1月も今日で終わりである。
1週間が、1ヶ月があっという間に過ぎていく。

前回投稿から2週間以上経っている。
いまさらの感もあるが、炎帝戦、金秋戦と同様に夏井先生の解説、添削も記しておこう。

1位 風花へ しゅぱんしゅぱんと ゴム鉄ぽう 
【作者自解】 子どもの頃、割り箸でゴム鉄砲を作って室内で遊んでいたら、母親に「外でしなさい」と言われた。
外は風花が舞っていて、それを標的に遊んだ思い出から。
【解 説】シンプルで映像がストレートに浮かぶ気持ちのいい句。
いいオノマトペを見つけた。軽やかな「しゅぱんしゅぱん」が、風花の感触とゴム鉄砲の飛んでいく感触を上手く繋いでいる。
【私 感】村上さんも言っていたように、オノマトペの響きから子どもをイメージできるが、鉄砲の表記をまだ漢字を習ってない想定で「鉄ぽう」とするのもうまい手法。

2位 一月や ゴム動力の プロペラ機
【作者自解】1月という1年の始まりに、エネルギーと動きがむき出しのプロペラ機が飛んでいる空を思うと詩があると思った。
【解 説】1月でなくてもいいのではという意見が出た。これは議論すべき点。
4音の月は他にもあり、例えば6月なら梅雨空の湿気を感じる。8月だと終戦のイメージがあって、プロペラ機が他の意味を持ってくる等々。
作者が「一月」を自信を持って選んだのが最も大事な決断である。
新年の気配を含んだ空に向かってゴムを巻く手の動きなどが思い浮かぶ。
【私 感】他の季語でも句が成立することを「季語が動く」という。
一月の清冽な青空に飛ぶ様子が目に浮かび、作者の思いが伝わってくる。

3位 無影灯 下腹に 冷たい何か
【作者自解】輪ゴムの写真が手術室のライトに見え、発想を飛ばした。
手術の経験があり、半身麻酔しているにも関わらず下腹部にひやりした感覚を覚えた。メスなのか、恐怖による錯覚なのか。
その時の体験を詠んだ。
【解 説】「無影灯」だけで場面、状況が描かれ、言葉の経済効率がいい。
「冷たし」が冬の季語であるが、この「冷たい」を作者がそれと認識して詠んだのか、無季の句か、その解釈は読者に託してもいいと思う。 
【私 感】東さんならではの俳句である。

4位 鏡越し ロット巻く手や 春隣
【作者自解】行きつけの美容院で、鏡越しにパーマをかける女性客がいた。
ロットを巻いてゴムで留める美容師の手元や、パーマを終えた女性客の表情に春近しを感じた。
【解 説】いい着眼点である。「鏡」「ロット」「春隣」の取り合わせも悪くない。
しかし語順が悪く、鏡越しの「越し」が微かに説明臭い。
  添削 ロット巻く 手や 春近き日の鏡
こうすると最後の鏡に春の気配の陽射しが描写できる。
【私 感】語順の良し悪しはよく言われている。それはカメラワークに例えられ、分かりやすい。 

5位 ゴムとび競う声 冬天に満ちる
【作者自解】輪ゴムから子供の頃遊んだゴム跳びを思い出し、寒さにめげず元気よく遊ぶ様子を詠んだ、
【解 説】これもまたもったいないのが語順。冬天の映像から行った方が得である。
  添削 冬天に満つ ゴムとびを 競う声
【私 感】破調も悪くないが、やはり五・七・五のリズム(句またがりではあるが)は心地よい。 

6位 手にはぜる 弁当のひも 雪催(ゆきもよい)
【作者自解】弁当のゴム紐がパチンと手に当たり、寒い冬だとことさら痛い。
それを「雪催」の季語と取り合わせた。
【解 説】自分の体験を探しに行くと、ちゃんといい材料に巡り合う。
「爆ぜる」の言葉もよく選んだ。しかしゴム紐を「ひも」としたのが痛恨の凡ミスである。
ゴムでなければせっかくの「はぜる」と響き合わない。 
  添削  手にはぜる 弁当のゴム 雪催
【私 感】作者は当初想像してのロマンチックな俳句が多かったが、先生に体験を詠むよう勧められよくなっている。
2019年炎帝戦予選の 黒き地の 正体は海 揚げ花火 はすごくよかった。
湘南の花火大会を実際に見たとのことで、だからこそ「正体は」の言葉を使っても破綻してないと褒められていた。

7位 冬の月 輪ゴムの中に 入れてみる
【作者自解】輪ゴムを手に作句を考えながら窓の月にかざした時、その行為をそのまま詠んでみようと思った。 
【解 説】こういうシンプルな発想もいい。
しかし下五の「入れてみる」という描写が雑である。
  添削 冬月を捕う 輪ゴムの輪の中に
こうすると、輪ゴムが月の周囲でゆらゆらしている短い時間が表現できる。
【私 感】「捕らえる」という言葉を使うことで一気に詩になる。 

8位 血を止める ゴム巻く手際 冬あざみ
【作者自解】病院で注射をする時にゴムを巻く看護師の様子を連想し、注射の痛みと冬あざみの棘とを重ね合わせた。
【解 説】前半の言葉選びが雑であり、選んだ季語の「冬あざみ」がどうしても野外のイメージ。
それより診察室や検査室といった場所であるとわかるような季語を、歳時記を見直して探して欲しい。
  添削 採(献)血の ゴム巻く手際 ○○○
【私 感】○○○は作者に委ねられた。

9位 七日の 名もなき家事 パズルの樹氷
【作者自解】輪ゴムから年賀状を束ねる発想で、炊事洗濯などではない細かな家事をやり、暇になったらジグソーパズルをしようということで、パズルに描かれた「樹氷」で冬の映像の確保をした。
「七日」も「樹氷」も季語だが挑戦してみた。
【解 説】視点は悪くない。
1月の1日から7日までは新年の季語になる。前半は悪くないが、着地に失敗した。
パズルの絵柄が樹氷というのは不要。むしろ名もなき家事のひとつを軽く示唆した方がよい。
  添削  七日 名もなき家事 ジグソーの一片 
【私 感】絵柄の「樹氷」は季語としては弱い。それより「ジグソーの一片」を片づけるイメージにした添削に感服。

10位 雑煮食う 爺はバケモノ 指鉄砲
【作者自解】以前、「こたつとみかん」の兼題で、婆やは蜜柑食べ続ける妖怪 という句を詠んだ。それを進化させる形で、子供の頃の思い出を詠んだ。
祖父が雑煮を食べる喉の動きがなんだか不気味で、指鉄炮で撃ってみたいと思った。
【解 説】やろうとしていることはそれなりに面白い。
この句の問題点は材料が多すぎること。「雑煮」「爺」「バケモノ」「指鉄砲」とキーワード4つでは季語の印象が薄まってしまう。
兼題は無くなるが、
  添削  雑煮食う バケモノ 爺さんの喉(のんど) 
喉は「のんど」とも読め、ちょっと恐ろしげな響きが「バケモノ」と釣り合う。
最後に喉の動きに焦点が合い、季語の「雑煮」が主役として引き立つ。
【私 感】志らくさんも独特の俳句を詠む。



2021冬麗戦観戦記 1

2021年01月15日 | 俳句
 
     photo by 写真部長
 
昨日のプレバト俳句は「冬麗戦」だった。
それにしても季節の巡る早さに改めて驚く。

これまでは、前回(金秋戦)の上位シード3~4名に予選勝ち抜き5~6名を加えて行われていた。
しかし今回は、昨年1年間に詠まれた全314句の中から、夏井先生が厳選した優秀句の作者10名がエントリーされての対戦となった。
出場者は以下の通りで、まずはその優秀句を記しておこう。
ただしこの10句に順位付けはなく、段位順に発表されただけだった。
(以後敬称略)

梅沢富美男(永世名人)
 読み終へて 痣の醒めゆくごと 朝焼(兼題「本棚」)
東国原英夫(名人10段)
 まるでシンバル 移り来し街 余寒(兼題「不動産屋さん」)
藤本敏史(名人10段)
 秋雲に 名をつけ窓に 貼る付箋 (兼題「文房具」)
村上健志(名人10段)
 二枚目は ベランダで読む 手紙かな (兼題「封筒」)
横尾渉(名人6段)
 2020年(前書き)
 体温だけ 記す九月の 予定帳 (兼題「文房具」)
中田喜子(名人5段)
 若芝に大の字 身ひとつの移住 (兼題「不動産屋さん」)
立川志らく(名人3段)
 炎天のミミズ 診察券のシミ (兼題「ポイントカード」)
千原ジュニア(名人2段)
 痙攣の 吾子の吐物に 林檎の香 (兼題「7時過ぎの時計」)
千賀健永(名人2段)
 夏の海を描く スプレーの秋思 (兼題「ポンプのノズル」)
森口瑤子(特待生3級)
 謎解きの 頁に蜘蛛は 果ててゐる (兼題「本棚」)


以上の10名で冬麗戦が行われた。
兼題は「輪ゴム」という極めてシンプルな素材で、結果は以下のようになった。

1位 森口瑤子(特待生3級)
    風花へ しゅぱんしゅぱんと ゴム鉄ぽう
2位 村上健志(名人10段) 
    一月や ゴム動力の プロペラ機
3位 東国原英夫(名人10段)
    無影灯 下腹に冷たい何か
4位 梅沢富美男(永世名人)
    鏡越し ロット巻く手や 春隣
5位 中田喜子(名人5段)
    ゴムとび競う声 冬天に満ちる
6位 千賀健永(名人2段)
    手にはぜる 弁当のひも 雪催(ゆきもよい)
7位 千原ジュニア(名人2段)
    冬の月 輪ゴムの中に 入れてみる
8位 藤本敏史(名人10段)
    血を止める ゴム巻く手際 冬あざみ
9位 横尾渉(名人6段)
    七日の名もなき家事 パズルの樹氷  
10位 立川志らく(名人3段)
    雑煮食う 爺はバケモノ 指鉄砲

有段者の中に唯一特待生で参加した森口瑤子3級は、階級上位の7人を抜いてのランクインだけでも快挙だが、見事冬麗戦を制した。
彼女がこの番組に初出演したのは2019年夏で、その時から注目していた。
「猛暑日」の兼題で、春に亡くなられた母親のエピソードを交えながら
 仏壇の 向日葵までも くたばりぬ
という句を詠んでいた。
身内としての愛もありながら、こういうことを淡々と吐けるのは俳人のセンスがあると夏井先生のコメントがあった。
以後の俳句も、性格であろうサバサバとした作風でファンになった。

そしてもうひとつの快挙が。
暮れに発売された歳時記に、出演者の3句が例句掲載されたとのこと。

季語「双六(新年)」 双六の 駒にポン酢の 蓋のあり  村上健志
季語「着膨れ(冬)」 職質を するもされるも 着膨れて 的場浩司
季語「無花果(秋)」 無花果や 苛めたきほど 手に懐き 光浦靖子

恐らくこの発表を見越し、観戦する形で出演していた的場・光浦両名は感激していた。
夏井先生によると、俳句をやっている人は誰も、一生に1句でいいから誰かの編む歳時記に掲載されたいと思っているとのことである。
前に藤本・村上両名が中学校の国語の教科書に載るという発表に続いてのグッドニュースである。

    ***********************************************************************

季語「冬麗」(とうれい・ふゆうらら)にふさわしい画像がないか、過去の画像を探したが見つからず、友人写真部長氏の画像を拝借した。
ふるさとの冬の棚田である。
うららかというには少し日差しが弱いが…。

2020金秋戦観戦記 2

2020年11月18日 | 俳句

炎帝戦同様に夏井先生の解説、添削も記しておこう。

1位 痙攣の 吾子の吐物に 林檎の香 
【作者自解】 子どもが熱性痙攣になり、頭が真っ白になって抱いていると肩に嘔吐した。
すると食べた林檎の香りがして、我に返ったその時の句。
【解 説】前半で状況が分かり、思いがけない展開になっている。
「林檎」が秋の季語。食べ物全般の季語は美味しく詠むというのが基本であるが、この生々しいリアリティ、林檎の存在感は抜き差しならない状況のもの。従ってそれを指摘する人には「無季の句と思ってもらっていい」と言い切っても構わない。
食欲のない子にすり下ろしてあげたのかと想像させる親心。吐物から香ってくるのにも切なさがある。
【私 感】体験を詠むことで、リアリティーとオリジナリティを一挙に手に入れることができるという見本のような句。

2位 流星のターミナル 三分で蕎麦
【作者自解】次の電車・バスまでに少し時間があり、お腹が空いていたので立ち食い蕎麦に入った時の句。
【解 説】「流星」が季語。「流星のターミナル」がいいフレーズ。
長距離の夜行バス、列車、フェリー乗り場、はたまた「銀河鉄道の夜」を想起する読者もいるかもしれない。
ロマンチックで終わってしまうとズボズボとロマンチックの沼に入ってしまう。
作者はこれまでそうした句があったが、今回そうせず実感、慌ただしさに持っていった所に成長が見られる。
【私 感】 解説に同感。美辞麗句を並べるのではなく、俗なエピソードに着地して感心。

3位 火恋し 形見の竜頭 巻く深夜
【作者自解】兄が亡くなり、かつてプレゼントした腕時計が形見として戻ってきた。
止まると思い出が消えそうで、夜更けに竜頭を巻いて動かしているという句。
【解 説】 きっちりしたいい句。
「火恋し」が季語。秋が深まってくると朝晩冷えてきて身近に火が欲しくなる。
時計と言わず「形見の竜頭」としたのも上手い。
「深夜」の時間帯もよく、亡くなった方の時間を動かし続けたいという思いが伝わる。
【私 感】「直しなしでどうして3位だ!?」と怒鳴っていたが、確かにいい句。
今回上位3句は僅差だろう。

4位 震源の時計台 無音の夜長
【作者自解】北海道で地震があった時、行ったことのあるあの時計台はどうなったのだろうと思った。
その時の思いを詠んだ。
【解 説】「震源の時計台」という表記では、震源のど真ん中と読まれてしまう。
  添削 時計台の無音 震源地の夜長
この語順で季語の「夜長」を印象深く立てることができる。 
【私 感】 語順を変えるだけで格段に良くなる見本のよう!

5位 谷崎のエロス 潤目鰯(うるめいわし)の骨
【作者自解】 谷崎文学賞の副賞が時計で、発想を飛ばしてみた。
谷崎の作品は官能的で、ウルメイワシをつまみに飲みながら読んでいると、イワシの骨までもが官能的に思えてくる。
潤一郎の「潤」と「潤目」をかけるという遊びも入れた。
【解 説】五七五の定型を崩した破調の句。
鰯が秋の季語なので「鰯の骨」だけでいいと思ったが、作者が「潤目」を活かしたいのなら、「潤目の骨」だけでも通じる。 
  添削 谷崎のエロス 潤目の骨○○○
鰯を削った3音分で、「エロス」と釣り合うような「骨」の描写が欲しい。
【私 感】 添削は作者の思いを尊重した上で手直しすること。改作になってはいけないと以前の解説にあった。
○○○は作者に委ねられた。

6位 月光の ひとつぶ受信 電波時計
【作者自解】 電波時計は自動で誤差を修正するが、月の光のパワーを借りて修正するのだったら素敵だなと思った。
【解 説】 月光を「ひとつぶ」と表現したのが詩的でいい。
それを電波時計が受け止めるという発想も瑞々しい。
しかし「受信」と説明せず、読者に思わせてこその十段。
  添削  月光のひとつぶ 電波時計○○○
○○○に「ひとつぶ」の感触、秒針が揺れる様子をオノマトペで表現すれば1位の可能性もあった。
【私 感】 5位と同様、オノマトペは作者の宿題となった。

7位 弁慶が 時計している 村芝居
【作者自解】 時代物なのに、弁慶役が腕時計をして舞台に出てきて、「ヨッ! 時計屋!」と声がかかるような場面をイメージした。
【解 説】「村芝居」が秋の季語。徘徊味のある場面を切り取っていて面白い。
しかしこの叙述では、弁慶が時計している脚本・演出だと読まれる可能性が残ってしまう。
  添削 弁慶は 時計したまま 村芝居
弁慶「は」として何人もいる演者の中で特定し、「したまま」でうっかりしていたとわかるダメ押しをすれば誤読されない。
【私 感】 作句後、客観的に読んでみて意図通りの叙述になっているか確認しなければ。

8位 秋てふや 夢の途中に 時計鳴る
【作者自解】実態のないものを追いかけている夢を見て、その途中でアラームが鳴り目が覚めるということがよくある。
その体験を詠んだ。 
【解 説】詩心は十分あるが、着地が「時計鳴る」でただのオチになってしまっている。
夢うつつの中で微かにアラームが聴こえるようにすると、上五中七が俄然活きてくる。
  添削 秋てふや 夢の途中を 鳴る時計
「に」はその時間のワンポイントになるが、「を」にすることによって経過していく時間の中で、夢うつつに聴こえているのを表現できる。
【私 感】助詞は奥が深い。意味、機能を改めて学ぶ必要がある。

9位 婚破れ 振子響くや 夜半の秋
【作者自解】結婚が破れ、いつもは振子の音など気にもせずスヤスヤ眠れたのに、振子の音が部屋に響いているという句。 
【解 説】問題点は時間が長すぎること。
上五の「婚破れ」で、読者はこれまでのいきさつを思い浮かべ、「振子響く」にも時間の流れがあり、「夜半」も時間である。
時間軸を短くしなければいけない。「や」の詠嘆も強すぎ。
  添削  振子音響く 婚破れし秋夜 
【私 感】語順を変えるだけで、確かに長い時間軸がグッと短縮されている。

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トップの画像は先日知人より送っていただいた林檎2種。
2人では食べきれず、お裾分けで息子に送った。
マメにメールはしているが、もう半年以上会っていない。