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言の葉

2008.11.28 開設
2022.07.01 移設
sonnet wrote.

2023春光戦観戦記

2023年04月01日 | 俳句
3月30日(木)、プレバト俳句の春光戦が放送された。
シードは永世名人3名と、冬麗戦優勝の藤本敏史(優勝後永世名人に)の4名。
残る6枠を巡って、事前に3ブロックに分かれての予選が行われた。
ブロック1位が通過し、2位以下全員から3名の計6名が選ばれ、10名で競った。
 
今回の兼題写真は「給与明細」。
このところいわゆる花鳥風月といったものではなく、ひねったお題の傾向がある。
とりわけお金にまつわるとなると詩になりづらいだろう。
順位は以下の通りだった。

1位 藤本敏史(永世名人) 
    給与手渡し 春宵の 喫煙所 
2位 皆藤愛子(名人4段) 
    ギャラ明細は二行 療養の春 
3位 梅沢富美男(永世名人)
    鞦韆(しゅうせん)に 退職の日の 花束と  
4位 村上健志(永世名人) 
    保護シール 剥がす手応え 啄木忌  
5位 千原ジュニア(永世名人)  
    口座開設 朱肉拭き取る 夏近し  
6位 森迫永依(特待生4級) 
    本採用 朧夜の 缶チューハイ  
7位 横尾渉 (名人10段)
    春光の起業 ゲーミングチェア届く  
8位 立川志らく(名人6段)
    桜蕊(しべ)降る 陸自の戦車しづか  
9位 春風亭昇吉(特待生4級) 
    職を辞したる 尾崎放哉 鳥曇(とりぐもり) 
10位 勝村政信(特待生5級)
    我が給与 マックのバイトに 負けた春 

2023冬麗戦観戦記 2

2023年01月15日 | 俳句

夏井先生の解説と添削。
 
1位 初富士は青し ケサランパサラン来
【自 解】自分にとってのラッキーは何かと考えた時、真っ先に浮かんだのがケサランパサランだった。
綿毛のようなもので空中に浮遊していて、小さい頃からそれを見つけるとラッキー!と思っていた。これに有難い背景として新年の季語「初富士」を取り合わせた。
【解 説】新年の感慨を「青」に託している。
空の青、雪の青白さ、空気の青さ。いろんな青のイメージの濃淡を前半に描いて、長い「ケサランパサラン」が出てくる。
ケサランパサランに「新富士」を取り合わせる勇気、個性に驚き感心した。

2位 雪虫の 第一発見者は 次男 
【自 解】雪虫を見かけると、その後雪が降ってくると聞いたことがある。
この冬、その雪虫を見つけたのが次男だった。小さい子の方が自然を見分ける力に優れているのかもしれない。
【解 説】まず「次男」がリアリティがあっていい。ちょっと得意げな顔をして、いつもはお兄ちゃんに敵わないけれど、その日は嬉しそうに報告している情景が見える。
そして「第一発見者」という硬い言葉を使ったのもいい。こう呼ばれることによって次男のプライド、嬉しさが増す。そこに親の優しい視線がある。
テーマの「ラッキー」との関連性で言えば、たかが雪虫を見つけたことにすぎないが、そんなささやかなことも家族みんなで喜び合える感性が素晴らしい。
幸せを絵に描いたようなご家族である。

3位 冬ぬくし 粘板岩に 貝の跡
【自 解】季語は「冬ぬくし」で、寒い冬の中の暖かい日はそれだけでもうラッキー。
化石発掘体験ロケで参考VTRを見たことがあり、そこから発想した。
粘板岩をハンマーで叩いて、その中に化石を見つけたら凄くラッキーである。
【解 説】作品としてはきちんとできている。
「冬ぬくし」の季語が動くのではないかと考える読者も何割かいるかもしれない。
「岩」や「貝」には冷たい感じの季語の方が良いのではないかと・・・
しかし、冬の暖かい日に化石探しを楽しみ、化石が見つかってラッキーで、テーマに季語が寄り添っている。

4位 マフラーにきら 失くしたはずのピアス
【自 解】よくピアスを失くすことがある。
使おうと思ったマフラーが小さく光って、見るとピアスだった。
諦めていたのが見つかって嬉しかった経験から詠んだ。
【解 説】現実的な意味では一番ラッキー度は高いかもしれない。
ただ俳句の世界で「失くしたはずのイヤリング」などはよく見受ける。
それだけ経験者が多いということだろう。
作者が分かった上で添削するなら、作者らしさを入れてはどうか。
添削 マフラーのフリンジ あらここにピアス

5位 四時限目休講 小春のキネマ
【自 解】自分は大学に行ってないが、突然休講になることがあり、学生は「ラッキー!」と思うらしい。
その空いた時間、天気もよく好きな映画を見に行くという俳句にした。
【解 説】まさに大学あるある。
「四時間目休講」と「小春」の取り合わせだけでもすでにラッキー感がある。
「キネマ」としたことで、映画マニアのような大学生が一人で行ったのではないだろうかという感じも伝わってくる。
音数の問題で言えば「小春」を「小春日」にすると流れが作れる。
添削 四時限目休講 小春日のキネマ

6位 焼鳥や 嗚呼隣席に 郷ひろみ 
【自 解】体験談を詠んだ。
以前焼き鳥の店に行った時、隣に郷ひろみさんがいた。
そして会計をしようとしたら「郷さんからいただいています。」と言われた。
わざわざ電話をして「自分につけておいて」と仰ったらしい。
これまでの焼き鳥で一番美味しかった。
【解 説】これはこれで面白く、楽しませてもらった。季語は「焼鳥」
ただこれに奥行きというかポエムがあるかと言えば、その点で少し損をしている。
しかし、おかしみ・滑稽を詠んだ「俳諧」もあり、直しなしでできている。

7位 一月の銀座で おそろいの遅刻
【自 解】自分にとってのラッキーは何かと考えた時、最近の体験で待ち合わせの約束に遅刻して焦っていたら、相手も同じ時間くらい遅れるという連絡がありホッとした。
これもラッキーなことではないだろうか。
【解 説】「ラッキー」というテーマに対してこのエピソードは悪くない。
問題点は2つある。ひとつは「で」が散文的である。なくても意味は伝わるので不要。
もうひとつは「おそろいの遅刻」がどういうニュアンスか、作者の意図がストレートには伝わりにくい。
例えば友達と約束したら恋人とおそろいで来たとか、ペアルックのおそろいで来たとも読める。
「お互い」にすると誤解されない。字余りしてもよければ「様」を入れてもよい。
添削 一月の銀座 お互い様の遅刻
 
8位 初旅は海へ 黄色の京急来
【自 解】京急線に「イエローハッピートレイン」という電車がある。
これを見られたり乗れたりすると幸運だと言われている。
今年初めての旅でそれに乗って行けたら、良い1年になるだろう。
【解 説】前半はとてもいいが、悩ましいのは後半。
「黄色の京急来」という淡々とした記述が前半とアンバランスで損している。
そして「黄色の京急」のラッキー感の認知度の問題もある。
読者に小さなヒントを投げかける書き方にする。
また、いっそ思い切り字余りにするやり方もある。
添削 京急は黄色だ 初旅は海へ
   イエローハッピートレイン 初旅は海へ
 
9位 夕の膳 二つ「ん」のつく 冬至かな  
【自 解】冬至には南瓜(なんきん)など「ん」が2つ付くものを食べると縁起がいいと言われている。
冬至の日の夕食風景を詠んだ。
【解 説】一見謎かけのようには見え、読み進めていくと冬至の南瓜だとわかる。
作者はすごく良いことを書いたと思っているかもしれないが、これは冬至の風習を俳句にした感じにとどまっている。
これを謎かけにしたいなら、語順が間違っている。
上五で答えを言ってしまっている。
添削 「ん」のつくもの二つ 冬至の夕の膳

10位 雪晴や チャームへ託す 運選ぶ 
【自 解】ペンダントの先に付けられたチャームは、クローバーやハートなど幸運をモチーフにしているものが多く、中七下五の言い方がいいのではと思った。
【解 説】雪晴れとチャームの取り合わせは良い。
問題点は語り方である。
作者はいいと思ったようだが、「託す」「選ぶ」辺りの叙述が散文的である。
動詞2つはやめ、どんな運なのかを具体的に、チャームの描写も書いてはどうか。
テーマに沿わせようとする意識が強く、詩の部分をうっかり落としている。
添削 雪晴や 金運のチャーム きらきら

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今回TVerでは、11位以下の俳句にも夏井先生の簡単な解説があった。

11位 吉兆の輝き 一村をめざす
【解 説】「吉兆」とは、商売繁盛を祈願する福笹の飾り物で冬の季語。
「一村をめざす」が帰省や旅行だと解釈されかねないが、作者は商談に向かう先とのことで、だったら「産地の村」などにすると十分いい句になる。
 
12位 3ミリのジンクス 冬晴れの球児
【解 説】「3ミリ」がわかりにくい。「三笘の1ミリ」もあったことだし、ラインを外れることだろうかと思ったりされる。
髪を3ミリの長さの坊主頭で試合に臨むということらしいが、だったら「3ミリに刈って」とすればわかりやすくなった。
 
13位 夢のあと はぐれ牛すじ おでん鍋
【解 説】食べ終わったと思っていたら、鍋の底に牛すじが残っていてラッキーということらしい。
作者は松尾芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」から「夢の跡」を使いたがったようだが、知識を入れたことで窮屈な印象になった。
添削 牛すじの 外れて おでん鍋の底
 
14位 ダイヤモンドダスト ファンが持つライト
【解 説】ライブのペンライトがあたかもダイヤモンドダストのようだと、比喩にしたことで季語の鮮度が落ちてしまう。
テーマ「ラッキー」というより、テーマ「感謝」というところか。
 
15位 闇動く 幸せが動く 梟
【解 説】闇夜に幸運の鳥と言われるフクロウを見つけ、幸せがもたらされると詠んだ気持ちはわかるが、いきなり「闇動く」とあるので、幸せが動いて不幸が来る印象になっているのが残念。かように語順は難しく大事。
 
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今回優勝した森迫永依さんは、小役時代に「ちびまる子ちゃん」を演じた方。
わずか4回出演での快挙である。初回からいい句を詠んでいた。
ケサランパサランは以前何かの本で知り、名称そのものが呪文みたいで面白いと思っていたが、初富士と合わせるとは!
そして「来(く)」としたのもすごいと思う。
私だったらありきたりに「舞う」などとするだろう。
 
2位の本上まなみさんも出演1〜2回だったと思う。
私はこの俳句が一番好きだ。好みであって順位には納得している。
夏井先生の解説は、私が言うのも何だがさすがである。
鑑賞力も必要なのだと痛感する。
 
ひとつだけ疑問に思ったことがある。
9位梅沢さんの俳句での添削
「ん」のつくもの二つ 冬至の夕の膳
冬至に食べて縁起がいいのはナンキン、ニンジン、レンコンなど「ん」が2つ付くもの。
しかしこれだと「ん」が(ひとつでも)つくもの二つ(2品)になりやしないか?
 
ともあれ、今回も楽しませてもらった。
名人・有段者を押さえ、特待生でもないお2人のしなやかな発想、語彙力が勝利した。

2023冬麗戦観戦記

2023年01月13日 | 俳句

昨日、プレバト俳句タイトル戦の「冬麗戦」が放送された。
去年1年間で詠まれた330句の中から優秀句を詠んだ15名が参加した。
今回も名人・特待生以外で5名が選ばれていた。
今回の兼題は「ラッキー」。
順位は以下の通りだった。

1位 森迫 永依
    初富士は青し ケサランパサラン来
2位 本上まなみ
    雪虫の 第一発見者は次男 
3位 千賀健永(名人8段)
    冬ぬくし 粘板岩に 貝の跡 
4位 森口瑤子(名人2段)
    マフラーにきら 失くしたはずのピアス
5位 藤本敏史(名人10段)
    四時限目休講 小春のキネマ
6位 千原ジュニア(名人10段)
    焼鳥や 嗚呼隣席に 郷ひろみ 
7位 犬山紙子(特待生4級)
    一月の銀座で おそろいの遅刻
8位 横尾渉(名人10段)     
    初旅は海へ 黄色の京急来
9位 梅沢富美男(永世名人)
    夕の膳 二つ「ん」のつく 冬至かな  
10位 村上健志(永世名人) 
    雪晴や チャームへ託す 運選ぶ 

11位以下の俳句は番組では発表されなかったが、昨年同様TVerで公開されていた。

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ちなみに15名が参加資格を得た昨年の優秀句も記しておこう。

いちじくを 運ぶ掛け声 朝の鐘  森迫 永依 
もの言わぬ 従弟にサイダー 渡す駅  本上まなみ
雷声や 絶島の ロンサムジョージ  千賀健永  
メールぴこんぴこん シャワー中だってば  森口瑤子 
雲の峰 ぱんっと乾いた ピザの薪  藤本敏史
病室の 七夕竹に 一礼す  千原ジュニア 
恋を終わらせ 平日の 海月見る  犬山紙子 
春夜のおもちゃ屋 プラレールの やわやわ  横尾渉 
縫い初めの 楽屋朝日は 母にさす   梅沢富美男   
卒業や 階段に 階段の影   村上健志    
産声送信 ドバイは大夕焼  中田喜子  
梅雨夕焼 タイムセールへ 駆ける父  高橋克実 
在りし夏 選ばなかった フレイバー  伊集院光
夕月夜 一人暮らしの 光熱費  二階堂高嗣
影のような 野良犬に桜ながし  立川志らく


2022金秋戦観戦記 2

2022年10月20日 | 俳句
 
夏井先生の解説は以下の通り。
 
1位 大きく振りかぶって 秋爽の只中に
【自 解】今はもう振りかぶる投球フォームのピッチャーはほぼいなくなった。
大谷選手は、高校時代このワインドアップ投法でカッコよく印象に残っている。
日本人投手がメジャーリーグで活躍するきっかけになった野茂投手の大ファンだが、彼も振りかぶってからのトルネード投法だった。
マウンドに立つ姿は、堂々としてとても爽やかである。
【解 説】ゆっくり振りかぶって投げる動作を映像にして、兼題写真に真っ向勝負した俳句になっている。
「秋爽」の季語がとてもいい。
ただ1点、最後の「に」がない方がいいのではないか。
添削ということではないが、自分なら「に」は書かない。
   大きく振りかぶって 秋爽の只中
こうするとキッパリとした空気が出て、季語が堂々と立ってくる。 
 
2位 太谷の球 大谷が打つ 案山子 
【自 解】毎年案山子コンクールでは、その年話題になったキャラクターや著名人がなったりする。
例えばイチロー選手ならバッターボックスに立つシーンだろうが、大谷選手は投げるシーン、打つシーンの両方が作られるだろう。
現実には不可能なことだが、大谷が投げて大谷が打ったら・・・
案山子は鳥から稲穂を守る農作の神様。
豊かな秋の実りの季語「案山子」と取り合わせた。
【解 説】二刀流としてあり得ない場面を下五で「案山子だったか」というアイデアはさすが。
これだけの活躍をしていると、全国にどれだけ大谷選手の案山子が並ぶのか、そういった世相もさりげなく書いている。
しかし、上五中七を詠んで、困った挙句これは夢だったという「夢オチ」というのがあるが、「案山子オチ」も全くないわけではない。
他に見受けられるのが「菊人形オチ」(9位の俳句)。 
 
3位 白秋の 雲穿(う)ぐ 右投げ左打ち  
【自 解】白秋の雲とは今の世の中の感じで、モヤモヤとした雲に風穴を空けるような大谷選手のスカッとしたプレーを「穿ぐ」の動詞に込めた。
【解 説】いかにも爽快な俳句である。季語は「白秋」。
しかし悩みどころが1点。まさに作者が自信を持って選んだ「穿ぐ」である。
「穿つ(うがつ)」ということで掘ったり削ったりして穴があくという意味で、どちらかといえばコツコツとヒットを積み重ねていくイメージがあるのではないか。
   白秋の 雲裂く 右投げ左打ち
   白秋の 雲撃つ 右投げ左打ち
にしてもいいかもしれない。
  
4位 総立ちの フェンウェイパーク 星月夜 
【自 解】メジャーリーグの歴史や記録に発想を変えてみた。
ボストンレッドソックスの本拠地フェンウェイパークは最古のスタジアムで、ここで多くの選手が数々の記録を打ち立てた。
プレーする選手、満員の観客の頭上に満天の星空が広がっているイメージ。
【解 説】作者の言いたいことを固有名詞に語らせるタイプの俳句で成功している。
「星月夜」の季語も押さえとして効いている。
   
5位 天高し 野球ノートの 三箇条 
【自 解】大谷選手は、野球を始めた子供の頃から父親と交換日記をしていたそうで、最初に書かれていたのは「元気よく声を出す」「一所懸命キャッチボールする」「一所懸命走る」の三箇条だったそうだ。
シンプルな基礎的なことを守って、現在の大谷選手になっていると思う。
【解 説】中七下五がシンプルだが明快。
読者は「三箇条」とは何だろうと想像したり、調べてみようかと思わせる力を持っている。
「天高し」の季語が、大谷選手の豪快な飛球を想起させ、気持ちのいい俳句。

6位 秋立つや 十七画の 名を吾子に  
【自 解】8月に子どもの生まれたご夫婦が、名前を何とつけようかと思っている場面を想定した。
8月10日に「104年ぶりに10勝25号」の大記録を打ち立てたニュースがあり、あんなふうに世界に羽ばたいてほしいという願いを込めて、背番号17、「翔平」の17画にこだわって名前を考えているというもの。
【解 説】きっちり詠まれている。
ただ俳句だけを読んだとき、17画にこだわる理由が読み取れない。
テーマ性との兼ね合いで損をしたが、生活の1ページを詠んだ句としては秀句。
  
7位 ポケットにゴミ 爽涼の ユニフォーム 
【自 解】大谷選手はマウンドにゴミが落ちていると拾ってポケットにしまう。
本人は「運を拾っているのだ」と言っているそうだが、その行為、人格もまた称賛されている。
なんと爽やかな青年かと、季語の「爽涼」に託した。
【解 説】彼の数あるエピソードのひとつをうまく掬い取っている。
しかし、すでにポケットにしまったゴミではなく、拾っているその瞬間を詠むべきだろう。
情報として「ポケット」と「ユニフォーム」の言葉が重なっている。
 添削 マウンドのゴミ 爽涼ののポケットへ
こうしていたら、迷わず1位にしていたと思う。
 
8位 四番打者 四球を選ぶ 子規忌かな 
【自 解】俳人正岡子規は野球好きでも有名で、「打者」や「走者」「四球」などの野球用語を作ったことも知られている。
季語は「子規忌」(9月19日)で、韻律にこだわってみた。
【解 説】こういうネタが出てくるのはちょっと嬉しい。発想はとても良い。
韻律や表記を見た面白さも丁寧に工夫している。
しかし俳句自体を読んだ時、臨場感が薄いのが気になる。 
 添削 バッターは四番 子規忌の四球選(よ)る
 
9位 巌流無念 しおれた菊人形  
【自 解】大谷選手の二刀流から佐々木小次郎に発想を飛ばしてみた。
巌流島は武蔵と決闘した島の名前であるが、小次郎の剣の流派名でもある。
かつて菊人形展で武蔵と小次郎が対峙していたのを見たが、小次郎の菊が萎れていた。
戦いも敗れ、菊も萎れ、無念だろうなぁと思った。
【解 説】「無念」と「しおれた」の気分が近すぎて残念。
また「巌流」を読んだ読者は、小次郎より島の名前をイメージする人の方が多いかもしれない。
破調の句であるが、五七五のリズムにしてもいいのではないか。
 添削 小次郎の 無念しおれた 菊人形 
 
10位 打ちまくる大谷 生姜擦る私 
【自 解】ニュースで大谷選手の活躍を見ながら、私は自分のできることとして料理をし、生姜を擦っているというものである。
【解 説】この兼題写真から、生姜を擦るという日常を持ってくる生活感のような発想はとても良い。
「大谷」の固有名詞に季語の「生姜」が支え切れるかというバランスの問題があるが、作者の意図なので変えろとは言いにくい。
他で操作すると「打ちまくる」が、ワンシーズン通してか、今見ている1試合かがはっきりしないので、
  添削 今日も打つオオタニ 私は生姜擦る
「も」で、ずっと打っていて、今見ている試合でも打っていることになる。
また、俳句は縦1行に字詰めで表記するので、「大谷」の後に「私」の漢字が続く。
これを避けるために「オオタニ」とすると、メジャーリーグの空気も出る。
 
   ********************************
 
1位の俳句に合う画像がなく、先日ヤクルトが日本シリーズ出場を決めた試合録画の胴上げシーンを拝借した。

2022金秋戦観戦記

2022年10月14日 | 俳句
昨日、プレバト俳句の炎帝戦が放送された。
事前に3ブロックに分かれ予選が行われた。
シードは3名で、残り7枠を15名で競った。
これまではブロック1位が通過し、さらに2位の中から選出されていたが、今回は2位以下全員から選ばれた。
 
今回の兼題写真は「大谷翔平」。
順位は以下の通りだった。

1位 大きく振りかぶって 秋爽の只中に  藤本敏史(名人10段)
    
2位 太谷の球 大谷が打つ 案山子   村上健志(永世名人) 
    
3位 白秋の 雲穿(う)ぐ 右投げ左打ち  春風亭昇吉(特待生5級) 
    
4位 総立ちの フェンウェイパーク 星月夜  横尾渉(名人10段) 
    
5位 天高し 野球ノートの 三箇条   松岡充 (特待生2級)
    
6位 秋立つや 十七画の 名を吾子に  千原ジュニア(名人10段) 
    
7位 ポケットにゴミ 爽涼の ユニフォーム  梅沢富美男(永世名人) 
    
8位 四番打者 四球を選ぶ 子規忌かな  森口瑤子(名人初段) 
    
9位 巌流無念 しおれた菊人形  立川志らく(名人6段)  
    
10位 打ちまくる大谷 生姜擦る私  皆藤愛子(名人3段)
    
   ******************************************************
 
野球つながりで・・・
予選を終えた翌週の9月22日、番組10周年の特番で「俳句ふるさと王争奪戦」があり、これがなかなか面白かった。
福島県、茨城県、大阪府、福岡県の観光写真に合う俳句を詠み、公認ポスターにするというものだった。
 
これまでのプレバト俳句では、夏井先生は口を酸っぱくして。
「俳句の十七音だけで勝負。兼題写真に頼ってはダメ。」と仰っていた。
しかし「写真俳句」というジャンルでは、俳句だけの評価とは少し軸が変わっているのだそうだ。
写真+俳句、1+1=2の足し算も悪くないが、写真俳句の醍醐味は掛け算で、写真×俳句で相乗効果があるとのこと。
 
3府県の作品もそれぞれよかったが割愛して、福岡県の作品を。
提示されたポスターは「中洲の屋台」だった。
優秀狗に選ばれた元AKB48の篠田麻里子さんの俳句が素晴らしかった。
  中洲の満月 ホークスの白星
 
夏井先生は、添削するとしたら、
   ホークスは白星 中洲には満月
こうすると、季語の「満月」がより印象深くなるということだった。なるほど。
俳句は作者のオリジナルでプリントされた。
福岡県に喜ばれたに違いない。
 
セ・クライマックスシリーズファイナル第3戦 ヤクルトVs.阪神 をテレビ観戦しながら投稿。