手打ち蕎麦をする私の徒然日記

2003年1月に手打ち蕎麦に初挑戦。手打ち蕎麦の事ばかりでなく、日常インパクトのあった事柄を思ったまま綴ったブログです。

読書の秋、いち押しは住井 すゑ さん著の「夜明け朝明け」

2007-11-01 10:01:58 | Weblog
読書週間など、いまや読書の季節。そんな中、私がこれまでに読んだ中でもっとも感動し、印象に残っている作品は、住井 すゑ さんの著した「夜明け朝明け」という小説だ。戦争で父を亡くし、母は病死、そんな家庭環境の中、筑波山のふもと鬼怒川べりの村で、兄妹たち4人が力いっぱい生きていく毎日を描いた作品だ。かつて私は朝の通勤電車の中で初めてこの作品を読んだが、読み進めるうち涙があふれてどうにも止まらず、周囲の乗客に気づかれないよう、あせったことを覚えている。私に言わせれば、珠玉の名作と言っていい作品で、こういうような作品こそノーベル文学賞に値する作品だ、と思う。それに、この小説のあとがきの中で、作者の住井 すゑ さんが書いている文章もまた素晴らしい。-
"悲しい時に、人は泣くといいます。それは、嘘ではありません。しかし、人は悲しい時だけ泣くものではありません。いわれているような悲しさでは、私は泣きません。私は、美しいもの、真実なものの前に泣きます。時には、その美しさ、真実さに感動して、おえつのとまらないことさえあります。たとえば、フランスの田園画家、フランソア・ミレーの画です。・・・・"-
と、いうくだりの部分にも、作者の魂のすごさが凝縮されているように感じられ、そのすごさ、素晴らしさに圧倒されたものだった。90歳を超えても、なお旺盛な創作意欲を持ち続け、茨城県の牛久の地で、ついこの間まで小説を書いていて生涯を閉じた作者は、私の尊敬する人物の一人だ。
ところで、小説 といえば、もうひとつ、私の脳裡に焼きついている、素晴らしい作品がある。それは、芥川 竜之介の作品「みかん」だ。私が中学3年生だったとき、私のクラスで、柴崎先生という男の先生が、担任ではなかったが、その小説を読んで私たちに聞かせてくれたことがあった。その作品は、たしか、奉公に行く主人公の女性が、汽車に乗車、踏み切りのところを通り過ぎるとき、その窓から、みかんをばらまくという、ものだった。この作品、なぜかしら今でも昨日のことのように印象に残っている。先生に読んでもらっているとき、小説の中の情景が、まるで私がその場に居合わせているような錯覚に陥ったものだ。
コメント
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