min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

月村了衛著『機龍警察 未亡旅団』

2017-04-25 15:34:57 | 「タ行」の作家
月村了衛著『機龍警察 未亡旅団』早川書房 2014.1.25第1刷 
おススメ度 ★★★★★

チェチェン紛争で夫や家族を失った女性だけのテロリスト集団が日本に潜入したという情報が入った。
目標も決行日も全く分からない。その上このテロリスト集団の中には未成年、「少年兵」といわれるメンバーが含まれており、彼女らに自爆テロを行わせる可能性が大ということで警察側に動揺が生じる。
チェチェン紛争はエリツインが大統領であった1994年に第一次紛争が勃発し、2年後に一時停戦合意が成立したものの、再び第二次チェチェン紛争が1999年に再発した。
我々の記憶に生々しく残るのは2002年に起きたチェチェン独立派武装集団によるモスクワの劇場占拠事件である。
大統領はエリツインから現在のプーチンに変わっており、プーチンは剛腕でもってこの事件を終焉させた。制圧部隊が劇場の空調を使って毒ガスを流し、武装集団と人質となっていた観客もろとも無力化。特殊部隊が突入し一挙に武装集団全員を射殺という戦慄すべき荒業で制圧したのであった。その時の武装集団50名の内18名の未亡人メンバーが含まれていたと言われる。彼女たちは自爆用爆弾を腹に巻いていた。
そんな事件を思い出したのであるが、現在は世界のテロ状況はさらに悪化し、イスラム国を初めいわゆるイスラム原理主義者らの集団が子供たちに自爆テロを敢行させるという恐るべき事態となっている。
本編はこうした世界状況を先取りする形で恐るべきテロリスト集団「黒い未亡人旅団」を登場させた。
物語は単に機龍警察対テロリストの戦いだけではなく、日本警察内部の軋轢をも抉り出して行く。今回は特捜部と公安、外事との共同作戦となったため、更に内部対立の様相が複雑となった。そして本件の真相は誰もが想像もできないことが含まれ、物語は予想外の方向へ展開していく。

とかくシリーズものといえば第一作が傑作であればあるほど第二作以降の質は落ちていくのが常道であるが、本シリーズに限っては例外であろう。
一作ごとにそのボルテージは上がり、スケールも広がりをみせる。これだけの緊張感を維持し読者を惹きつけて離さない月村氏の筆力には改めて感嘆した。

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