min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

渡辺裕之著『新・傭兵代理店 悪魔の大陸(下)』

2014-11-09 11:42:01 | 「ワ行」の作家
渡辺裕之著『新・傭兵代理店 悪魔の大陸(下)』 祥伝社 2014.5.25第1刷 \690+tax

おススメ度:★★★☆☆

尖閣諸島の日本領海で操業する沖縄のはえ縄漁船3隻が突然消息を絶った。
外務省から内調に出向している片倉のもとに彼の謎めいた父親から連絡が入り、今回の事件の実行には中国公船がからんでいる、と明言した。米の軍事偵察衛星からの証拠写真も送付された。
日本国政府首相にこれを直接告げれば看過されると踏んだ片倉は防衛省のごく一部にこれを知らせる。
米国に救援を求めても明らかに拒否されるであろう。さてどうするか?
そこで藤堂浩志率いるか“リベンジャーズ”の登場となるわけだが、現在の中国ほど潜入、破壊工作が難しい国はないだろう。ほぼ北朝鮮に匹敵するのでは。

入国審査を突破するのも至難の技であるが、更に厳しいのが武器の現地調達だ。拉致された漁船員十数名をたとえ救出出来たとしても、一体どうやって中国から脱出出来るというのか。このあたり著者渡辺裕之氏は我々が思いもよらない方法で解決してみせる。
あまりの手際が良すぎるので、逆に信憑性を疑ってしまう。
下巻にてシリアで暗躍した中国の手先ターハが登場。ここで過去フィリピンやアルジェで浮かび上がったレッド・ドラゴンなる組織の一部が明かされる。
この組織は政府中枢でも知っているかどうか不明で、人民解放軍内でも極々限られた者だけが知っている組織であろう。
今回の日本漁船拿捕及び乗組員全員の拉致という暴挙が、場合によっては日中開戦に到るかもしれない。そんなリスキーな作戦を軍の一部の判断で出来るのか?という疑問が当然出てくるだろう。
ところが現在の中国では何かとてつもない地殻変動が起きつつあるようだ。
今年になって歴代の国家主席をもってしてもタブー領域であった人民解放軍での汚職摘発。
中国がかの小平の賭け声によって一挙に資本主義的金儲けに走りだした時、真っ先に国営企業を外資に結び付け利権を漁ったのは人民解放軍であると言われる。またその時点で伝統的な汚職の業も磨かれ、今やその腐敗の度合は天井知らずとまで言われる。そこで前述の習近平国家主席の決断による、谷俊山(コクシュンザン)元総後勤部副部長(中将)の摘発であった。彼の容疑は汚職や収賄、公金流用、職権乱用の罪で軍事法廷に起訴された〉
このことは人民解放軍内部に激震が走ったものと思われる。軍内部で不正に関わりの無い者なんていないからだ。
習近平国家主席が更に彼らを追い詰めた場合、軍の一部からは打開策として尖閣諸島での軍事衝突を画策する者たちが出てくるかも知れない。中国の事態が地殻変動からマグマを流出されることがないよう切に望む。
本編を読みながらそんな事を考えてしまった。
いずれにしても現在の中国を舞台にしてこの手の戦争アクション物を書くのは難しいだろうなということが良く分かった一編である。







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