東直己著『誉れあれ』 双葉社 2009.8.23 第1刷
オススメ度:★★☆☆☆
著者初の“本格的警察小説”!と名をうっての作品であるが、端から大して期待はしていなかった。
東先生といえば、道警(北海道警察)への偏執的?とも言える憎悪に満ち溢れた作品を過去にいくつか読まされていたこと、そして道警以外の警察組織、ましてや首都東京の警視庁、警察庁などの物語を書けるわけもないことから、再び道警ネタだろうと思ったがまさしくそうでありました。
舞台背景は先の道警により組織的裏金問題、警察幹部による覚醒剤・拳銃密売問題で全国的に話題となった数年後の札幌方面中央署。道警中央署の組織的腐敗は収まるどころか更なる腐敗の深化をみせていた。
そこに同警察署の“エダ”と呼ばれる札幌方面中央署南支署が立ちはだかる、という警察内部、それもごくごく身内同士の内ゲバが描かれるわけだ。
この南支署管内の南7条交番に配属された新米巡査梅津康晴が本作の主人公であるらしいのだが、彼の親父もまた制服警官であったことから亡き親父を目標に警察官人生を歩もうという一種の“成長譚”という構図が見える。
だが、物語が進行していく過程で、主役の力点が南支署の先輩刑事であったりまた支署長に置かれたりして、誰が一体主人公であるのかブレを生じてしまう。
要は腐敗不正の警察組織に対する“善き警察”の存在とその戦いを描きたかったようであるが、主人公そのもののブレがテーマ性を弱める結果となってしまった気がする。
同じ北海道出身の作家佐々木譲が創出する重みと深みがある警察小説とはちょっと比べようがない。
新たな試みは良い事ではあるが、やはりこの分野では旗色が悪い気がする。
オススメ度:★★☆☆☆
著者初の“本格的警察小説”!と名をうっての作品であるが、端から大して期待はしていなかった。
東先生といえば、道警(北海道警察)への偏執的?とも言える憎悪に満ち溢れた作品を過去にいくつか読まされていたこと、そして道警以外の警察組織、ましてや首都東京の警視庁、警察庁などの物語を書けるわけもないことから、再び道警ネタだろうと思ったがまさしくそうでありました。
舞台背景は先の道警により組織的裏金問題、警察幹部による覚醒剤・拳銃密売問題で全国的に話題となった数年後の札幌方面中央署。道警中央署の組織的腐敗は収まるどころか更なる腐敗の深化をみせていた。
そこに同警察署の“エダ”と呼ばれる札幌方面中央署南支署が立ちはだかる、という警察内部、それもごくごく身内同士の内ゲバが描かれるわけだ。
この南支署管内の南7条交番に配属された新米巡査梅津康晴が本作の主人公であるらしいのだが、彼の親父もまた制服警官であったことから亡き親父を目標に警察官人生を歩もうという一種の“成長譚”という構図が見える。
だが、物語が進行していく過程で、主役の力点が南支署の先輩刑事であったりまた支署長に置かれたりして、誰が一体主人公であるのかブレを生じてしまう。
要は腐敗不正の警察組織に対する“善き警察”の存在とその戦いを描きたかったようであるが、主人公そのもののブレがテーマ性を弱める結果となってしまった気がする。
同じ北海道出身の作家佐々木譲が創出する重みと深みがある警察小説とはちょっと比べようがない。
新たな試みは良い事ではあるが、やはりこの分野では旗色が悪い気がする。