佐々木譲著『制服捜査』 新潮文庫 2009.2.1第1刷 590円+tax
(本作品は2006年3月に単行本として刊行されたものの文庫化)
オススメ度★★★★☆
もう何度か本ブログでも述べてきた事であるが、作家佐々木譲はけっして「警察小説」の大家というわけではない。
確かにこのところ立て続けに警察小説を上梓しており、この間だけを取り上げたら「警察小説作家」と呼ばれても不思議でない状況ではある。
もうそろそろ違う分野の作品にも手を染めて欲しいと願うのは僕一人ではないと思われるのであるが、本作品「制服捜査」は以前からかなり気になっていた作品であったので読む結果となった次第。
何故気になっていたかと言えば、北海道警察の不祥事を背景にし、制服警官を描くという本作が、氏が描く一連の警察小説郡の中でひとつの「原型」となった作品ではなかろうか?と思った故であった。
本作品は2002年に発生した道警内の不祥事を発端に、今まで長年刑事畑を歩いてきたベテラン警部補が長年勤めてきた札幌から、十勝地方の小さな町の駐在警察官としての任務を発令され、そこで遭遇したいくつかの事件が描かれた短編集である。
十勝地方の田舎で発生する事件が「大事件」であるわけがない。小さな町のどこででも起き得る事件を描きながらも、田舎に飛ばされた辞令に腐ることもなく、警察官の“矜持”をけっして失うことなく事件解決に当る川久保警察官の姿が好ましい。
時折見せる“元刑事”としてのカンが生かされて事件が解決した場合もあるし、所轄の捜査では故意に見逃しされかねない事案に対しては時に“鋭い対処”をも躊躇しない。
それと、今更気づいたのであるが、制服警官には「捜査権」がないこと。だが、川久保警部補はそれとなく目立たないように独自捜査らしきものを行う。
ある種異色の駐在警察官を描いたが故に「制服捜査」というタイトルの「捜査」が付いたのであろうか。
田舎には都会とはまた異質の田舎特有の確執がある。その辺りの機微を佐々木譲氏は巧みに描き出してくれる。
「駐在警察官」として警察人生の晩年を送る川久保警察官の生き様が、読了後深い余韻を残してくれる短編集である。
(本作品は2006年3月に単行本として刊行されたものの文庫化)
オススメ度★★★★☆
もう何度か本ブログでも述べてきた事であるが、作家佐々木譲はけっして「警察小説」の大家というわけではない。
確かにこのところ立て続けに警察小説を上梓しており、この間だけを取り上げたら「警察小説作家」と呼ばれても不思議でない状況ではある。
もうそろそろ違う分野の作品にも手を染めて欲しいと願うのは僕一人ではないと思われるのであるが、本作品「制服捜査」は以前からかなり気になっていた作品であったので読む結果となった次第。
何故気になっていたかと言えば、北海道警察の不祥事を背景にし、制服警官を描くという本作が、氏が描く一連の警察小説郡の中でひとつの「原型」となった作品ではなかろうか?と思った故であった。
本作品は2002年に発生した道警内の不祥事を発端に、今まで長年刑事畑を歩いてきたベテラン警部補が長年勤めてきた札幌から、十勝地方の小さな町の駐在警察官としての任務を発令され、そこで遭遇したいくつかの事件が描かれた短編集である。
十勝地方の田舎で発生する事件が「大事件」であるわけがない。小さな町のどこででも起き得る事件を描きながらも、田舎に飛ばされた辞令に腐ることもなく、警察官の“矜持”をけっして失うことなく事件解決に当る川久保警察官の姿が好ましい。
時折見せる“元刑事”としてのカンが生かされて事件が解決した場合もあるし、所轄の捜査では故意に見逃しされかねない事案に対しては時に“鋭い対処”をも躊躇しない。
それと、今更気づいたのであるが、制服警官には「捜査権」がないこと。だが、川久保警部補はそれとなく目立たないように独自捜査らしきものを行う。
ある種異色の駐在警察官を描いたが故に「制服捜査」というタイトルの「捜査」が付いたのであろうか。
田舎には都会とはまた異質の田舎特有の確執がある。その辺りの機微を佐々木譲氏は巧みに描き出してくれる。
「駐在警察官」として警察人生の晩年を送る川久保警察官の生き様が、読了後深い余韻を残してくれる短編集である。