min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

岡崎大五著『アジアン・ルーレット』

2008-09-13 13:10:07 | 「ア行」の作家
岡崎大吾著『アジアン・ルーレット』祥伝社文庫 2008.7.30一刷 695円+tax

オススメ度★★★☆☆

本の帯には【成功か、死か? 混沌と熱気渦巻くバンコクで、欲望のルーレットが回る!】とある。

本のタイトルの「アジアン・ルーレット」なる賭博があるわけではないようだ。「ロシアン・ルーレット」がリヴォルバー拳銃に一発の弾丸が込められた“死のルーレット”であるのは良く知られるところであるが、この「アジアン・ルーレット」の意味合いは特にない。
タイのような国では幸運も不運もまるでルーレットのように誰の手に転がり込むのかまるで分からないのだ、という程度の意味で使われている。
確かに本編で登場するタイを生活の場として住み着いた日本人の野島と寺崎にしても、ルーレットの玉が転がり落ちるところが分からないままその日を暮らしていた。
ある日、更に悪質なルーレットが自分たちの知らないところで回りだし翻弄される事態となる。ルーレットを回したのは誰か?
このルーレットに参加する他の客の顔ぶれは多彩だ。現地法人野島コンサルタントの野島と寺崎のほかに日本人バックパッカーの悟、中華系実力者の陳、タイ軍警察のパサン少佐と軍警察内部の犯罪集団、武器密輸をもくろむミャンマーゲリラ組織、タイ南部を拠点にするイスラム系過激派、そして軍事コンサルタントなどなど、武器と麻薬をめぐりこれらの勢力がルーレットの転がる先を目指して殺到する。

さて、著者であるが、ご本人もかっては世界を旅してまわった“バック・パッカー”のひとりであったらしく、30才で日本に帰国後、旅行会社のパック旅行の添乗員をしていたらしい。その豊富な旅の経験に基づいて2冊ほど旅行案内書を書いておられる。
今回のような小説の執筆は初挑戦であったらしい。本編を読むうちに何か素人くさい感じがして気になった背景は、確かにタイ事情には詳しいことがうかがえるが、政治、軍事面での描写になると内容が鵜呑みできない場面が出てくることだ。
そうした素人臭とは別に、本来主人公であるべき寺崎と楓の行動と心理描写がおざなりとなり、中途の過程、更に最後の行く末についてはもっと丁寧に描写すべきであった。