min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ケン・フォレット著『鴉よ闇へ翔べ』

2008-09-12 23:40:36 | 「ハ行」の作家
ケン・フォレット著『鴉よ闇へ翔べ』小学館 2003.5.1一刷 1,900円+tax

オススメ度★★★★★

これぞ冒険小説だ!というエッセンスがふんだんに盛り込まれたケン・フォレットの傑作。
第二次世界大戦下のフランスの小さな町リーム。ここにはドイツ軍の最新鋭の電話交換設備をそなえた通信基地があった。
Dデイを目前にしたイギリス軍の情報機関のひとつであるスペシャル・オペレーションズ・エグゼクティヴ(SOE)は、なんとしてもこの施設を破壊すべくイギリス軍特殊工作員を送り込み、現地のレジスタンスの応援を得て一度は破壊工作の作戦に出たのだが無残な失敗に終わった。
この作戦の指揮をとったのはSOEの一員であるフリック少佐であった。
彼女は失意の中にも確固たる信念を持ち、再度同施設を破壊する作戦を上層部に提案した。
今度はドイツ軍電話施設に出入りするフランス人婦人清掃員に化けて潜入しようという、女性だけを集めた特攻作戦であった。
メンバーとなる条件はとにかくフランス語を流暢にしゃべることに加え、もちろん電話施設攻撃のためそれぞれのスペシャリスト、すなわち電話技師、爆破の専門家、狙撃のプロなどが求められた。
そんな女性が果たしているのだろうか?否、そうそうSOEの中には見つからない。
そこで集められたのは、いわば“ならず者”たちであった。それも女性ばかり。
一人は尻軽女、一人は人殺し、一人は金庫破り、一人は女になりたがる男、一人は未熟な貴族、更にもう一人がフリック自身であった。
このフリック少佐が何とも魅力的に描かれえおり、女性といえどもこの骨太な戦争冒険小説のヒロインを担う素晴らしい主人公である。
なんかこんな戦争映画がなかったっけ?脱獄囚とか死刑囚とか性格破綻者ばかり集めて特攻作戦を敢行するハリウッド映画が。
帰還はほぼ望めず、捕まれば死刑。その前にたっぷりと拷問が待っているという絶望的な作戦。果たしてこのミッションが成功するのか、そして一体何人が無事生還できるのか?
一方、敵側ドイツ軍も手ぐすねひいて彼らを待ち受ける。ケン・フォレットの素晴らしい点は、敵側のキャラクターをも充分に描きこむ点だ。
今回もロンメルの部下である情報将校のフランク少佐。彼は恐るべき尋問並びに拷問のプロでもある。
そして悪名高きゲシュタポの面々。ゲシュタポの中には拷問そのもものが好きという変態的異常性格者も交じっている。この拷問シーンは気の弱い読者は読み進めることが出来なくなるであろうほど凄まじい。
全てのお膳立てが整い、いよいよ雌の鴉たち(原題のJACKDAWS)が闇夜に向かって敵地へパラシュート降下していくのだが・・・。

まさに“ページターナー”になることは請合い!の作品である。久しぶりにスッキリさせてくれる冒険小説だ。