min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

駿女

2008-05-16 08:04:49 | 「サ行」の作家
佐々木譲著『駿女』中央公論新社 2005.11.25初版 1900円+tax

オススメ度★★★☆☆

いわゆる“義経伝説”の変形ともいえるストーリーである。
平泉にて、藤原泰衡の裏切りによって討たれた源義経に実は隠し子がいた。義経がまだ平泉に着いて間もない頃、下女と情を通じ、懐妊させたもの。
周囲の配慮もあり、成人するまで藤原氏の家臣のひとり相馬元次郎に命じ、下女ともども糠部というヤマト族と蝦夷の混住する地へ移り住まわせた。
下女は男の子を出産し、名を八郎丸といった。彼は詳細を知らされることなく、元服が近いある日、父とその弟の娘を連れだって平泉に向かった。育ての親である相馬元次郎は初めて義経にその隠し息子である八郎丸を会わせようという計画であった。
ところが会う前日に義経は討たれたのであった。

藤原泰衡は義経並びに実の弟の首を源頼朝に差し出すことによって、恭順の意を呈し、奥州の温存を図ったのであったが、源頼朝はあくまで奥州の併合を画し、関東さらに西国から十数万の討伐軍を差し向ける。
一方、藤原泰衡は義経の隠し子の探索を配下に命じたのであった。

果たして、義経の子八郎丸は迫りくる源頼朝軍そして藤原泰衡の追求の手を逃れ、自らの数奇な運命を切り開けるのであろうか?
本編は相馬元次郎の弟の娘、由衣の視点から描いており、あくまでも従兄妹である八郎丸に付き従い男勝り(馬の調教、乗馬術に秀で、弓の名手)の活躍をする。
歴史は変えようがないのは自明の理であることから、義経の子が鎌倉に攻め上り天下を取ることはかなわないものの、最後の最後に由衣が放つ奇策は読者に大いなるカタルシスを与えてくれる。