min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

雨の掟

2007-10-04 23:15:17 | 「ア行」の作家
バリー・アイスラー著『雨の掟』ヴィレッジブックス 2007.9.20初版 960円+tax

オススメ度★★★★★

これは面白い!久方ぶりの“ページ・ターナー”となった作品。

ここんところ無名の(と言っても僕にとっての)海外作家の作品をいくつか読んで全てハズレだったので、本編に対してもあまり期待感は持たないで読み始めた。
だが、真に嬉しい誤算であった。
「日米ハーフの殺し屋」という設定からして、ちょっぴり胡散臭い内容では?と最初は思った。
大概の作品では日本人や日本、あるいは広く東南アジアを描写する米国作家というのは、その独善的かつ浅薄な知識を降りかざし、ややもすると当事国に住む我々をして鼻白む思いにさせるのが落ちである。
だが、この作家はかって実際にCIA工作員として深く東南アジア、とりわけ日本に長く滞在し、なかなかこれらの国々に造詣の深いことがうかがわれる。
作品中、その経歴を生かしたエスピオナージ戦のディテールには感嘆させられる。
プロ同士の戦いぶり、敵はもちろん同士をも含めた互いの腹の探りあい、手の内の読み合い、戦術の先読み、エスプリの効いた会話、全てがハードボイルドしているのだ。

日本人ハーフの主人公ジョン・レインのキャラ造形を初め脇に登場するキャラ造形が極めて秀逸に描かれている。
ジョン・レインは単なる冷酷な殺し屋として存在するのではなく、時には哲学的な思考を持った、時には心理学者のごとく相手の心理を推し量る技量を持った、また複雑な生い立ちを持つ極めて興味深い人物として描かれている。

本編は“レイン・シリーズ”とも言える作品の4作目らしいが、これは間違いなく第一作目から読むべきであろう。ちなみに邦訳順としては
『雨の牙』『雨の影』『雨の罠』となっている。

邦訳のタイトルが『雨の・・・』となっているのは、主人公の名前から来ているのか知らん?
なんか久しぶりにメッケモンを得た悦びに浸った作品である。一読を強くお薦めしたい。