min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

愛と悔恨のカーニバル

2006-07-15 16:43:01 | 「ア行」の作家
打海 文三著『愛と悔恨のカーニバル』出版:徳間書店 発行:2003.3月 価格:1,785

「されど修羅ゆく君は」で鮮烈な印象を残した13才の姫子が6年後に再登場。もちろんウメ子さんやアーバンリサーチの面々も顔を揃える。
19才の姫子は13才時のあの少女が成長すればきっとこうなるだろう、と想像される通りの利発で勝ち気そして若々しく瑞々しい肉体を持って登場する。
かの事件後に出会いそして疎遠になった姉弟の弟にばったり渋谷で出会ったことから物語は始まる。
姫子は姉弟の弟、翼に対し瞬時に「恋に落ちた」自分を発見する。これは単なる恋愛物語か?と思いきや、その後の展開はまさに重々しい「打海流ノワール」の世界に突入するのだ。

世に「殺してしまいたいほどいとおしい」、「食べてしまいたいほど可愛らしい」という表現があるが、実際にこのような表現が現実化した時、ひとは果たして正気を保つことができようか!?
ましてや自分が愛する恋人がその容疑者として浮かんだとしたらどう対処するであろうか。19才の姫子に降りかかる未曾有の試練が彼女を追いつめる!。

打海文三はこの作品で「狂気と正気」の境を彷徨し、ついには狂気の領域まで足を踏み入れた。しかしその狂気の世界にも尚「凛とした世界」が垣間見えることが一片の救いと言えよう。
打海作品を語る上で回避できない一遍であることは間違いない。