min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

標的は11人-モサド暗殺チームの記録-

2006-03-18 10:01:22 | ノンフィクション
ジョージ・ジョナス著『標的は11人-モサド暗殺チームの記録-』新潮文庫705+tax

先に公開された映画S.スピルバーグ監督の『ミュンヘン』の原作とのこと。いつものことながら映画を観る前に原作を読むという鉄則?にのっとり読んだ次第。
いやぁ、まさに「事実は小説より奇なり」の言葉通り(巻末でも著者が事実の信憑性について述べているがもし真実だとすれば)そんじょそこいらのスパイ小説が色褪せて思えるほど物語性に富んだ内容だ。
とは言いながらも思わずR.ラドラム著『暗殺者』を思い浮かべたが、内容はこちらのほうが上を行っているかも知れない。
先に述べたこの本の信憑性についてであるが、どんな国家であれもちろんイスラエルであれ公的に暗殺指令を出した、という事実は絶対に認めないであろうからこの本に描かれた事実が真実であるかどうかは永遠に謎であろう。
しかし「暗殺チーム」のリーダーが著者に語った内容の描写からして100%真実ではないにせよ相当の部分は真実であると信じられる。
1972年「黒い9月」が起こしたテロから既に30年以上経た今、イスラエルVSパレスチナという対立から今やイスラムVS西欧世界という対立構造までに深刻化した情勢にある。人類がいかにして「報復の連鎖」という頚木から逃れることができるかは永遠の課題か、と思われる状況が続いている。
本書は「報復の連鎖」の恐ろしさ、空しさをあますことなく読者に伝える秀作であることを最後に述べておきたい。