min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

波のうえの魔術師

2006-03-14 23:42:14 | 「ア行」の作家
石田衣良著『波のうえの魔術師』文春文庫 476+tax

前回読んだ『娼年』を描いた世界から一変し今回は「経済小説」もどきだ。三流私大を卒業したが就職浪人となった「おれ」は連日パチンコ屋に通って生活費をひねり出す日々を送っていた。
そんな「おれ」をじっと観察していたらしい「じじい」がある日「おれ」にアプローチしてきた。目的は何か?といぶかう「おれ」に「じじい」は自分の秘書となって証券取引を学べという。
やがて明らかになったのは市場規模第3位の「まつば銀行」への「仕掛け」であった。何故そんなことをするのかが徐々に明らかになり、「じじい」の仕掛けの大胆かつ緻密な様も明らかにされる。読者は「おれ」に対して行われる平易な「じじい」のマーケット理論の説明によって日本のバブル崩壊時の経済の病的側面を学ぶことができる。石田衣良という作家はこの方面でもなかなか切れ味の鋭いストーリーを展開してくれる。
経済小説の形をとりながらもやはり石田衣良氏のいわゆる「青春小説」であることに変わりはなく読後感は爽やかである。