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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ファントム

2006-01-04 15:18:06 | 「カ行」の作家
ディーン・R・クーンツ著『ファントム 上・下』ハヤカワ文庫 1988.8.31 各660+tax

カルフォルニア州のスノーフィールドという片田舎の住人約500名がほぼ瞬時に殺された。あるものは両腕が切断され、あるものは首が切断されていた。だが大半のものは外傷は特に見当たらないのだが全身の肌に黒い痣のような斑点が無数に残されており、一様に恐怖の叫びが貼りついたまま死に絶えていた。
この町に住む女医とその妹の二人だけが死をま逃れたのであった。それは女医が妹を迎えに町を離れていたからであった。二人は町に着くなり異様な町の雰囲気に気がつく。電話は通じない。電話を借りるべく訪れた隣家の住人もことごとく殺されていた。
町の保安官事務所へ急行したのだがここでも発見されたのは死体だけで他の場所もことごとく死体のみ。彼らは死ぬ瞬間まで自らの死を予感しなかったように、あるものは炊事の最中であったり、車中で“突然の死”を迎えた様子なのだ。これは何かの悪疫?細菌兵器?と考えたのであるが、二人には闇に潜む「ナニモノ」かの存在に気がつく。
やがて電話が通じ、一番近い町から警察官が数名駆けつけるのであるが、その中から更に犠牲者が続出する。リーダーのブライス保安官は州知事を説得して軍の生物化学戦の専門家部隊の出動を要請し彼等がやっては来たのだが…。
上巻の後半まではこの殺戮を行ったモノが一体全体何なのか見当もつかない。殺される様から病原菌や生物兵器でないことは明白なのだが、では具体的に一体ナニ?という焦燥感に襲われる。一種のエイリアンか? 
いつどこから、どのように襲われるか分からない緊迫感は確かに映画「エイリアン」を観ている感じだ。やがて真相の解明の手ほどきが英国からもたらされ、そして対抗策が生物化学班の日系女性の遺伝学者が考え出す。そして結末はどのように?

アメリカのミステリーや冒険小説に登場するヒロインって、どうしていつもこのように勇敢で沈着冷静なんだろうと感心してしまう。一方、軍や警察の官僚たちの描写は何故か頑固で画一的。これは常にステレオタイプのようだ。

本編はいわゆるジェットコースター・ノベルのひとつと言える。著者ディーン・R・クーンツが最も脂がのった時期の作品のようで大いに楽しめる作品だ。

ハイダウェイ

2005-05-31 13:49:26 | 「カ行」の作家
D.R.クーンツ著 文春文庫 1994.11.10 750

D.R.クーンツの作品は「ウォッチャーズ」を入れても3作目で、彼が“モダン・ホラーの巨匠”とよばれる所以が本作を読んで判ったような気がする。
冒頭の事故場面から一挙に彼の物語世界に引き込まれた。蘇生に関する医学的知識に欠ける僕としては本作での「蘇生」医療の信憑性の判断ができないのではあるが、それはそれとして受け止めることはできる。
しかし、主人公がもうひとりの“怪物”とある種のテレパシーを交わす場面になると、これに対してはかなりの“許容力”が必要となろう。
常識を超えた能力が人間にはあることを認識し許容すればこの物語にどっぷりと浸り楽しむことができる。実際、僕は許容した結果大いに楽しむことができた。着眼点といい、登場する人物造詣といい、やはり類稀なホラー作家といえるだろう。

海に消えた神々

2005-05-16 17:33:36 | 「カ行」の作家
今野敏著・双葉文庫 2005.3.30

この今野敏という作家の作品を読むのはひさしぶりで以前最後に読んだのは確か『蓬莱』だったと思う。カルト、ホラー、拳術などわりとライト・ノベル風の作品群があると記憶する。
週末に寝転びながら何も考えずに読み過す本としては最適かも知れない。内容は沖縄の陸棚がムー大陸であった云々ということに先ず目くじらを立てなければ、そこそこのミステリーとして楽しめるかも。

ダーウィンの剃刀

2005-05-02 16:24:18 | 「カ行」の作家
ダン・シモンズ著・ハヤカワ文庫2004.12.31

★ちょっとネタバレあるかも

ホンダのアキュラNSXを駆る「事故復元調査員」というところで頭を傾げながらこの文庫本を購入。冒頭シーンから彼の職業たる「事故復元調査員」に度肝を抜かれることになる。通常の警察の鑑識課とか保険調査員では全く歯が立たない事件、事故をまるでパズルを解くような手法を駆使して解決してみせる。その手法も物理学博士の学位を持つ主人公ならではの頭脳明晰さに裏打ちされたもの。小説中に物理方程式が出てくるとは思いもしないがこれが面白い!
さて、そんな主人公(ダーウィンがその名前)が事故復元調査を続けるうちに2台の車に襲われ、壮絶なカーチェイスを繰り広げるのだが最後には相手を想像も出来ないような方法で撃退する。
襲われた動機には心当たりがないまま捜査を続けるうちに大掛かりな「保険金詐欺グループ」と影で操る「犯罪組織」の存在に気づくのであった。
さて、その先が凄まじい展開となる。グライダー対ヘリコプターの空中戦やらS.ハンターの『狩りのとき』のボブリー・スワガーばりの戦いがあり、ポロックの『樹海戦線』を彷彿させる戦闘があり、更に美人捜査員とのお決まり?の恋愛ありで「一粒で2度美味しい」どころか3度も4度もテンコモリ状態のエンタメが用意されている。
読了後著者のプロフィールをみて驚いたのであるがこの方、有名なホラー作家でもありSF作家でもあるという。そちら方面でもさぞかし秀作をえがいているものと思われる。
今年上半期では文句なしナンバー1の作品ではなかろうか。