鳴海章著『総理を撃て』光文社 2007.3.25 1,143円+tax
★★☆☆☆
三流私大を出てやっと就職出来た先は事務機や環境グッズを飛び込みセールスで売るしがない中小企業であった。
そこで25年間営業をとにもかくにも続けてきた主人公の明智は部下からも上司からも蔑まされる中間管理職の課長であった。
そんな彼があるとき社長から役員をおおせつかったのには明智自身が信じられなかったものの、やがて自らの地道な努力がやっと報いられるのだと有頂天になる。
しかしそれは社長と専務が仕組んだ周到な罠であった。そして明智の「悪夢」のような人生が始まる。
こんな主人公が「総理を撃つ」に至るギャップがあまりにも大きく、前半の明智のケチな会社暮らしの模様が執拗に描かれるのだが、転落してから一転、その後の世界は前半の饒舌さに比べあまりにも話が飛躍する様は読者を唖然とさせる。まさに、筆者が突然に白昼夢の世界に漂ってしまったかの感がするほどだ。
鳴海氏の“情念”だけが突っ走り始め、我々読者は置いてきぼりをくらったみたいだ。後半は完全に設定が無理と言わざるを得ない。残念な結果となってしまった。
★★☆☆☆
三流私大を出てやっと就職出来た先は事務機や環境グッズを飛び込みセールスで売るしがない中小企業であった。
そこで25年間営業をとにもかくにも続けてきた主人公の明智は部下からも上司からも蔑まされる中間管理職の課長であった。
そんな彼があるとき社長から役員をおおせつかったのには明智自身が信じられなかったものの、やがて自らの地道な努力がやっと報いられるのだと有頂天になる。
しかしそれは社長と専務が仕組んだ周到な罠であった。そして明智の「悪夢」のような人生が始まる。
こんな主人公が「総理を撃つ」に至るギャップがあまりにも大きく、前半の明智のケチな会社暮らしの模様が執拗に描かれるのだが、転落してから一転、その後の世界は前半の饒舌さに比べあまりにも話が飛躍する様は読者を唖然とさせる。まさに、筆者が突然に白昼夢の世界に漂ってしまったかの感がするほどだ。
鳴海氏の“情念”だけが突っ走り始め、我々読者は置いてきぼりをくらったみたいだ。後半は完全に設定が無理と言わざるを得ない。残念な結果となってしまった。