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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

抹殺部隊 インクレメント

2007-02-20 00:02:36 | 「ラ行」の作家
クリス・ライアン著『抹殺部隊 インクレメント』ハヤカワ文庫 2006.7.31

SASを除隊したマット・ブラウニングは幼馴染の婚約者とスペインの保養地でレストランを開業し一応静かな生活を楽しんでいた。
しかしSIS(英国情報部)の幹部が同店を訪れ、ある作戦に参加するよう要請する。それは単なる要請ではなく任務を拒否すれば資産を凍結するという強要であった。ある作戦とは英国国防省に寄与する製薬会社の模造品がロシア国内で製造されておりその工場を破壊せよ、というものであった。
幼馴染の婚約者はマットにそんなことに絶対にかかわるな、と主張するが聞き入れられないことを知ると婚約を解消すると宣言し彼の前から姿を消してしまった。
工場の破壊作戦はかろうじて成功したのだがSISはこれだけではマットを開放してくれなかった。次には経営者も抹殺しろ、と言い出す。
マットは背後に最近多発している元兵士による錯乱して無差別殺人を起こす事件との繋がりに気がついたのだ。そんな彼を闇に葬るべく暗躍し始めたのはSAS内部の秘密暗殺部隊のインクレメントという機関であった。
マットはかってこのインクレメントに誘われたが断った経緯がある。ここにマットと少数の仲間対国家の諜報機関という壮絶な戦いが火蓋を切られた。相手は警察組織も自由に使える国家の暴力装置とも言える存在である。
この絶対的に不利な中で知恵と体力の極限を振り絞って戦う様はR.ラドラムの「暗殺者」を彷彿とさせる。個対国家、という究極の戦闘は読み手をハラハラさせるが個が巨大な組織に立ち向かうというのは冒険小説の王道である。

逃亡のSAS特務員

2007-01-21 07:14:28 | 「ラ行」の作家
クリス・ライアン著『逃亡のSAS特務員』ハヤカワ文庫 900円+tax


アフガニスタンの山中でアルカイダの幹部の抹殺に失敗したSAS特務員のジョシュは数ヵ月後アメリカのアリゾナの砂漠に倒れていた。傍には少年の射殺死体が。
ジョシュ自らも負傷し更に記憶が喪失していることに愕然とする。
瀕死のジョシュを美人医師が救出しようとするのだがその時点から謎の襲撃者が出現するのであった。

この作家には珍しく全編サスペンスに満ちた物語展開となっている。そして舞台がアメリカというのも初めてだ。
全編スピード感のある展開で謎解きにもワクワク感がある。拷問シーンにはちょっとドキリとさせられる。
ただ「停電」をひきおこすメカニズムの説明がおざなりにされている点が不満と言えば不満だ。
だが総じて楽しめる一遍だ。

本編の邦題であるが、原書のままの「ブラックアウト」で良かったのでは。


出生地

2006-12-10 16:27:54 | 「ラ行」の作家
ドン・リー著『出生地』(原題:Country of Origin)ハヤカワ文庫 2006.10.15
760円+tax

東京でアメリカ国籍のリサ・カントリーマンという白人女性が失踪、行方不明となった。実はこの女性外見は白人に見えるのであるが日本人と黒人のハーフらしい。彼女の訪日目的は大学院の博士論文を書くためのリサーチということであったが真の目的は自分の生みの母親探しであった。
米国に住む彼女の姉から妹の失踪が知らされ捜査を依頼された米大使館職員のトム・ハーリーは麻布警察署のオオタ警部補に捜査の依頼を連絡した。
彼女の失踪の原因を探るうちに生前彼女が働いていた銀座のバーで彼女を幾度も指名した3人の謎の男たちが浮上する。彼女はまだ生きているのかあるいは殺されてしまったのか?
1980年の東京を舞台にしたサスペンスであるが、この著者は在米コリアン3世で外交官であった父によって自らも東京に滞在していたせいか恐ろしいほど日本の裏事情に詳しい。また外国人としての視点から描かれる東京も面白い。
ただ自らが人種的なマイノリティの米国人ということもあって登場するリサ・カントリーマンとトム・ハーリーがハーフである設定から人種的偏見にまつわる記述が多すぎるのにはちょっと辟易した。
また麻布署のオオタ警部補の描き方が「こんなデカは日本には絶対に存在しない」と思われるもので、違和感というか笑いがこみ上げてきた。
本書は2005年の「アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞」を獲得したということから米国ではそこそこ評価された作品であるのだろう。しかし僕にはちょっと不満が残る作品ではあった。