(今日はお彼岸の中日ですが、少し早く雪の話題です)
先日、言葉の語源で「身近な言葉の語源~自然界に関するもの~」をチェックしているときに、「語源をたのしむ」(増井金典著)で「雪や、こんこん」の語源は「雪よ、来よ来よ」で、これが「雪や、来む 来む」に変化したもので、“雪よ、もっと降れ もっと降れ”の意だとの記述がありました。
「こんこん」が「しんしん」と同じように雪が降る状態を表す擬音語だとばかり思い込んでいた私はびっくりで、そういえば「雪やこんこん」の後は「霰(あられ)やこんこん」で雪と霰が同じ擬音語ではおかしいと思い、色々と調べてみました。
結果はアット驚く展開でしたので、下記しておきます。(以下はWIKIPEDIAなどを参照しました)
(1)「雪やこんこん」か「雪やこんこ」か?
◆どうやら、私がうろ覚えの“雪やこんこん”という歌詞の童謡は、「雪」という明治44年に文部省唱歌として『尋常小学唱歌』第二学年用に掲載された歌で、作詞者/作曲者ともに不詳となっています。
歌詞は下記のとおりです。
(1)雪やこんこ 霰あられやこんこ。
降っては降っては ずんずん積もる。
山も野原も 綿帽子わたぼうしかぶり、
枯木残らず 花が咲く。
(2)雪やこんこ 霰やこんこ。
降っても降っても まだ降りやまぬ。
犬は喜び 庭駆けまわり、
猫はこたつで丸くなる。
雪やこんこ 霰あられやこんこ
※
・「こんこん」とばかり思っていたのは「こんこ」でした。
・更に、私は歌の1番と2番を、逆に記憶していましたが、これは“犬は喜び 庭駆けまわり、猫はこたつで丸くなる“の歌詞が強く印象に残っているからでしょうか。
◆こんなに状況をややこしくしている原因の一つに「雪やこんこん」という童謡もあるということです。紹介しますと、歌詞は
雪やこんこん、あられやこんこん
もっとふれふれ、とけずにつもれ
つもった雪で だるまや燈籠
こしらへましょー、お姉様
この童謡は、作詞:東くめ・作曲:瀧廉太郎で、明治34年発行の『幼稚園唱歌』のようですが、こちらの歌詞は“雪やこんこん”です。
◆従って、私らが幼稚園や学校で習ったのは「雪」の方かも知れませんが、私たちに歌ってくれた祖母や母の代にすでにこの「雪」と「雪やこんこん」が混合してしまっていた可能性はあります。
その過程で、1番と2番がごじゃごじゃになってしまったということもありえるでしょう。
また、いずれにせよ“こんこ”も“こんこん”も、増井金典氏が言われるように“来よ”というニュアンスだということは判りました。
(2)これと同じような現象が、これまた良く知られている童謡の「ハトポッポ」でも起きているようです。少し長くなりますが紹介します。
◆先ず、「鳩」(はと)は文部省唱歌で、作詞者/作曲者ともに不詳で、1911年(明治44年)に文部省が発行した国定教科書『尋常小学唱歌 第一学年用』が初出です。歌詞は、
(1)ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ、
豆がほしいか、そらやるぞ、
みんなで仲善く 食べに來い。
(2)ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ、
豆はうまいか、食べたなら、
一度にそろって 飛んで行け。
でしたが、1941年の国民学校用の教科書『ウタノホン』では曲名が『ハトポッポ』に変更されるとともに、歌詞も少し変わりました。
(1)みんなで仲善く 食べに來い ⇒ みんなでいっしょに 食べに来い
(2)一度にそろって 飛んで行け ⇒ みんなでなかよく 遊ぼうよ
◆一方、作詞:東クメ/作曲:滝廉太郎による「鳩ぽっぽ」という歌が、明治34年発行の『幼稚園唱歌』に入っています。この歌詞は
「鳩ぽっぽ」はとぽっぽ はとぽっぽ
ぽっぽぽっぽと 飛んでこい
お寺の屋根から おりてこい
豆をやるから みな食べよ
食べてもすぐに 帰らずに
ぽっぽぽっぽと 鳴いて遊べ
とうことで、上記の「鳩」とは少し違っています。
要するに、文部省唱歌だった作詞/作曲者不明の、「雪」や「鳩」は作詞:東クメ/作曲:滝廉太郎による「雪やこんこん」や「鳩ぽっぽ」からヒントを得た歌であることは間違いないでしょう。(まさ)