カルカッタより愛を込めて・・・。

次のアピア40のライブは6月でしたがお休みします。

夏の再会。その5。

2014-07-25 13:08:01 | Weblog

 ジェラートはいつもツヨシの驕りだった。アサダの墓参りの後は真冬であれ、必ずここに来てジェラートを食べたものだ。そして、ツヨシは店員の人たちといつしか顔見知りになり、自分の息子のためにいつもたくさんの友達が墓参りに来てくれることを感謝しながら自慢することもあった。息子を亡くした父親の哀しみをその人たちも和らげてきてくれたことを私は見てきた。

 二十数人が注文し、一人ひとりがそのジェラートを手にするまで今年はミエコがレジの傍で財布を開けたまま立っていた。そして、一番最後に自分のを注文し、その財布を閉じていた。

 ジェラートを食べ終わり、タクシーを呼んでもらうために霊園の受け付けに戻り、タクシーを待つ間、そこで私は集合写真を撮ろうと言った。

 「よし!みんなで写真を撮ろう。もう二度とこのメンバーで集まることがないかも知れないし、今年の記念だ」

 初参加のタマの五か月の赤ちゃんや渡辺君の一歳半の子供と来ていたし、ヒロの子供はもうヒロと同じ背丈の可愛い女の子になっていたし、キョウイチの娘のあやちゃんも去年よりも大きくなって、またいっそう可愛くなっていた今日と言うかけがえのない時を思い出に残したかった。少しずつ増えていくアサダの新しい友達もちゃんとアサダに見せたいと思っていた。

 飲み会はアサダの実家で行われ、墓参りだけで帰った渡辺君とノリマツ、その子供以外は全員集合したので家の中はえらいことになっていたが、タロウは顔をくしゃくしゃにして笑いながら、ほんとうに嬉しそうに「同窓会じゃん!」と言ってはしゃいでいた。

 タロウにとってはこうして墓参りの後にアサダ宅で飲むことは初めてだった。タロウは夏休みに親に海にでも連れてきてもらった子供のようにすでになっていた。

 がしかし、かぶっていた帽子をとれば、その後頭部はカナシイことになっていた。それをサワキに教えると「ダメダメ!」と言う仕草を笑いを堪えて伝えてきた。ユウにも教えると、すぐには何のことかは分からなかったようだったが、後になって吹き出しながら、「てっちゃん、ダメだよ」と言ってきた。

 笑いと笑顔が飛び散る中、私は声を出した。「まぁ、んじゃ、飲み物をもって早く乾杯しよう。では、今日はミエコの挨拶で行こう」

 ミエコはツヨシと違って短く感謝の気持ちを告げた。

 そして、みんなで酒を飲み始めれば、そこは20年前の文化学院の雰囲気、誰もが大人になる前の姿に戻っていた。アサダもそこにいた気がした。そう感じたのは私一人だけではなかっただろう。
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