たなぞうより
海外遠征に選ばれた、外された。
恋人あるいは妻をとられた、とった。
単独行において唯一の証拠である頂上から撮った写真についての疑惑。
遭難死した息子を追って山に入る父親。
山岳小説というより、山をモチーフにした小説というべきかな。ちょっと期待はずれだった。
小説だからいろいろな要素を織り込んで、ひねりをきかせて仕立てるのはいいんだけれど、パートナーを妬んで登攀中に不幸を願ったり、人の登頂を疑ったり、邪悪な気持ちばかりが鼻について、すんなり話に入っていけなかった。
また実在のクライマーや山を多数登場させているのに、肝心の話の舞台の山が架空のものだったりすると、なんだか興ざめするのであった。
小説として読むならそれはそれで面白いと思う。
灰色の北壁 / 真保裕一 著
★★☆☆☆