今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

一人称単数

2023年02月23日 | 「本」のひきだし

ブクログより



8作からなる短編集です。
短編集は6年ぶりだそうです。

ほとんどが男女にまつわる話で、ちょっと不思議な話もあるけど、あぁなんだそういうことだったんだ、と納得できるし、読後に何か余韻を感じる話もありました。
特に、ウィズ・ザ・ビートルズという話は、まさに作者の青春時代と重なりそうな(勝手に重ねて読んでいました)はなしでしたし、「ヤクルト・スワローズ詩集」という話は、村上さんとお父さんの話として読んでいました。
こんな風に私小説的な話を今まで書かれてきたでしょうか。
またチャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァという話、得意分野のジャズを題材にした話も圧巻でした。

今まで、井戸の中に入っていろいろ考える人や、月が二つ空に浮かんでいたり、小さな騎士団長が出てきたりする話には作者の意図するところが十分に感じられず、首をかしげるような物語が多くて(でもそういいながらほとんど読んでます)正直ついて行けない部分もありましたが、この短編集は楽しめました、がやっぱり出てきましたね、人間の言葉をしゃべる猿、好きになった女の人の名前を盗む品川猿、久々の再登場ですね。
どうしてこの話を入れられたのかな。
ちょっとこれだけ異色です。



一人称単数 / 村上春樹





今日は「富士山の日」 偶然にも昨日、孫から富士山の写真が送られてきました。
卒業旅行に東京に出かけた、新幹線の車窓からのものです。
やっぱり富士山は眺める山、だなぁ。(しみじみ)

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星と祭り

2023年02月19日 | 「本」のひきだし

ブクログより



主人公の架山は貿易会社の社長。
健全な良識を備え、相応の地位を築きあげてきたが、結婚には失敗し一人娘のみはるは母親のもとに。時々会いに来てくれるのを楽しみにしていたが、17歳の時、琵琶湖でボートが転覆して遭難してしまう。
一緒に乗っていた大学生の親共々、捜索を見守ってきたが遺体は上がらず、捜索は打ち切られ、宙ぶらりんの気持ちを整理できず、苦悩する。

ある年、ヒマラヤで月を見るというトレッキングに誘われ出かけることにした。ヒマラヤで、みはるのことをじっくり考えるために。雄大な白い山々に心癒され、現地の素朴な人々に安らぎを覚え、タンボチェの僧院で見る10月の満月。
ずっと鬱屈していた架山の心も少しは癒えたようだ。

帰国してから、一緒だった大学生の父親に誘われて、観音様を訪ね歩くようになる。
琵琶湖沿いにたくさんの観音様がおられて、全て琵琶湖を向いて立っておられるという。
最初はみはるの供養になればという気持ちで、訪ね歩いていた架山だが、いつしか自身の安らぎとなっていた。

自分たちの観音様、という感じで大切に守り祀られている湖北の方々とのふれあいの様子や、観音様の詳しい描写など、読んでいて引き付けられます。
湖北の観音様は、白洲正子さんも折に触れて紹介されていて、ぜひ訪ね歩いてみたいと思います。

本作は昭和46年から47年にかけて新聞連載されました。
今回、舞台となった琵琶湖の北部の有志によって編纂されたものです。

そうしてもう一つ発見、新聞に連載時、挿絵を担当したのは生沢朗さん。作中のヒマラヤ遠征旅行の画家のモデルでもいらっしゃるらしいのですが、この生沢さん、もとレーシングドライバーの生沢徹さんのお父様です。

生沢徹さんが出てくると、浮谷東次郎と連鎖的に出てきます。「俺様の宝石さ」懐かしい。



星と祭り / 井上靖

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雪を求めて赤坂山

2023年02月15日 | 「山」のひきだし
前回は(山本山)全く雪がなかったので、雪山行きませんか?と誘っていただきました。
わ~い、雪、雪。と単純に軽く、ただうれしく出かけましたのは、滋賀と福井の県境、マキノスキー場から赤坂山に登り寒風を回ってまたゲレンデに下りてくるという周回コース。

駐車場の入り口で駐車料金を徴収していました。
え~いつから駐車料金がいるようになったのか・・・500円。
どうせならと登山者用よりもっと奥まで進んで止めたのでした。
目の前に見える山は白いですが、下は少ないです。

ゲレンデからアイゼンをつけて歩き出します。少し凍っていますが大したことはありません。積雪は結構あります。
そのうち汗がだらだら、思いのほか暑い。どうして山の登り始めはいつも急登なのか・・・など考えながら。


ブナの木平の小屋まで来ました。


小屋の前


少し休んで出発。この辺りまでは、まあまあいけてました・・・
少し行くと、沢沿いに進むところ、冬は雪崩とか危険だから真っすぐ尾根を行きましょう、と。
見ると割と急な登りが待っているのです。雪崩なんておきるのかなぁ、ブツブツ・・・
これがきつかった。ザクザクの雪はアイゼンなんかあまり役に立たない、油断すると膝まで雪に埋まる・・・
ここでだいぶん体力使いました。

ここからは無言の行、冬靴が重い、アイゼンが重い、ザックが重い、だんだん遅れていく。私ってこんな弱虫やったっけ?
無言、無言、ひたすら無言 写真もなし。


で、やっと着いた~  すごい風! 上着がバタバタ煽られて着られない。




お腹もすいたけど、風の除けられるところがない。ちょっと降りたところで



景色はいいけど


やっぱり風はきつくて






さっさとランチを済ませて歩くことに。動かないと寒くて。
何シーズンぶりかのスノーシュー、ここから履き替えて。



寒風まではずっと絶景を見ながらなんですが


やはり遅れる私。


寒風より。 遠くのあの山は何だ。


寒風より。


乗鞍とか御嶽とか?

さあ、後は下るだけ。
雪はザクザクで、踏み後の上をスノーシューで歩くのはなかなか骨の折れることですが、勘も取り戻し、扱いにも慣れてきて、
どんどん降りていきますよ~  登りとは打って変わったげんきんさに呆れられながら・・・
ツボ足で歩いている人もいるようで、深いところは40~50cmくらいはありそうです。


ゲレンデまで降りてきた


マキノスキー場、営業してるの?

距離10,2㎞、時間7時間ほど、軽い気持ちでやってきましたが、何しろほとんど山を歩いていなかったのに、ましてや雪山。
身の程知らずでありました。ボチボチ鍛えなおさないとなぁ。
しかし、最近の山渓に赤坂山が載っていて、雪山初級って。(;´д`)トホホ


2003年2月9日(木)晴れ

マキノスキー場~赤坂山~寒風~マキノスキー場

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囚われの山

2023年02月05日 | 「本」のひきだし

ブクログより


世界登山史上最大199人の犠牲者を出した八甲田山雪中行軍遭難事件を題材にした小説。

120年前の痛ましい事件を歴史雑誌の特集として組むことになり、編集者が現地に赴き、調べるうちにある疑問を抱く。

厳冬の八甲田山へ向かわせた陸軍の本当の目的は何だったのか。
そしてもう一つ、遭難死した兵士の数が一人足りない・・・
何かに導かれるように現地で取材を進める編集者はついに「稲田庸三一等卒」の存在を発見する。

本書は、編集者の取材の目線と、稲田一等卒の当時の様子によって話は進んで行く。
遭難兵の数が合わないという着眼は面白くて興味深いものだが、陸軍の本当の目的だとか、兵士の数が足りなかった本当の理由など、少し陳腐で拍子抜けしてしまう。

取材をするにあたり、現地のガイドに案内してもらって当時の行軍の道をたどったり、慰霊碑を見て回ったり、また稲田兵士の目線による雪中行軍の差し迫った絶望的な行軍の様子などは鬼気迫り胸を打つものがあるが、
離婚問題を抱えた編集者や、ファッション雑誌からイヤイヤ歴史雑誌に移ってきた編集長、また捉えどころのない地元のガイドなど、誰一人として共感できる人物がおらず、物語にのめり込めなかった。

唯一心を寄せられるとしたら、過酷な運命にさらされて理不尽な死に方をした200人の人たちかな。
特に最後の終わり方は何でしょう。
えっ!!なんでそんなこと最後に出してくる?そんな大事なこと?それが一番言いたかったこと?・・・
と、ちょっと残念な読後でした。


囚われの山 / 伊東潤

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