NHK新会長に就任した籾井勝人という人が、1月25日の就任会見でいきなりすごいことを言い始めた。
旧日本軍の慰安婦問題について「会長の職はさておき」と個人的な見解と断った上で、
「戦時中だからいいとか悪いとかいうつもりは毛頭無いが、この問題はどこの国にもあったこと」。
「(戦争していた国すべてに、慰安婦がいたということか、という質問に対して)韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか。ヨーロッパはどこでもあった。なぜオランダには今も飾り窓があるのか」
オランダの「飾り窓」は戦争と関係があるのか?!
日本軍占領中のインドネシアで南方軍管轄の第16軍幹部候補生隊が、オランダ人女性35人を民間人抑留所からスマランにあった慰安所に拉致し慰安婦として扱ったことで、国際軍事裁判において有罪が宣告された通称「白馬事件」は、日本軍が「強制連行」を行ったことを証明している。そういう日本とオランダのゆかりをこの人はまったく知らないのだろう。
ドイツやフランスについても、きちんと証明する根拠もないだろう。国際的な非難を浴びかねない。
「(証拠があっての発言か、という質問に対して)慰安婦そのものは、今のモラルでは悪い。だが、従軍慰安婦はそのときの現実としてあったこと」
不安になったのか、すんだことは仕方ない、という論理にすり替えて逃げている。
「会長の職はさておき、韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っているわけだが、日韓条約ですべて解決していることをなぜ蒸し返すのか。おかしい。」
これも韓国に対して極めて失礼で悪質だ。
「(会長の職はさておきというが、公式の会見だ、と突っ込まれ)では全部取り消します」「(取り消せない、とさらに突っ込まれ)会長としては答えられないが、それだとノーコメントばかりになるから「さておき」と言って答えた」
愕然とさせられるコミュニケーション能力の欠如である。
この籾井氏は三井物産副社長、日本ユニシス社長などを歴任。NHK会長人事に関しては前会長の松本正之氏を推す声も多かったが、経営委員会から指名されたという。選任に当たっては、NHKの放送内容が「偏向している」と不満を持っていた安倍政権の意向を汲んだ作家・百田尚樹氏ら4人の新委員の意向が反映されているわけだ。
また、籾井氏は「国際放送で領土問題について日本の立場を重視した放送をする」意向を示した。
「(尖閣諸島などの領土問題について)日本の明確な領土ですから、これを国民にきちっと理解してもらう必要がある。今までの放送で十分かどうかは検証したい」
「国際放送は国内とは違う。領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」
政府の言いなりに報道するということだ。こんな人間がトップなら、政府の側からすれば、わざわざ秘密保護法なんかいらなかったね、というくらいのことだろう。
靖国神社の参拝と合祀については、「総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい。いいの悪いのという立場にない。行かれたという事実だけ。ただ、淡々と総理は靖国に参拝しましたでピリオドだろう」ということだが、そういうことを「当たり前」として示そうという立場であるということだ。
放送法はNHKを含めた放送事業者に「政治的公平性」を義務づけており、NHKの会長がこのような発言をするのは極めて異例だと、各社は報道している。
籾井氏は「NHKが右だ左だ真ん中だということを言う必要もなく、放送法に書かれていることを順守していけば大丈夫だと考えています」というが、これらの発言のどこに「政治的公平性」があるのか。ただのデマゴーグである。
さすがのNHK経営委員会からも「外交問題に発展しかねない。選んだ側の責任も問われる。国際放送の役割についても事前に十分説明したのに、正しく理解していない」と失望の声がもれているという。
ともあれ、かっちり海外で紹介されれば、国際的な非難を浴びるのは必至だ。
現状、日本という国が「ヘンな国」「正当な考え方のできない国」であると、ここまで思われていることに、おそろしく鈍感な人間が、報道の責任者になろうとしている。この国の自滅を早めるだけである。
朝。「そもそも民主主義とはなんでしょうか」とテレビで問われ、だいの大人が応えられないという姿が映し出された。咄嗟に応えられない、ではなく、「民主主義」というコトバに違和感の顔、顔……。こんな国になっている。こういう情景がテレビで垂れ流されることでこのことが「常態」であることが保証されてしまっている。不条理が不条理の補完をしている。そんな現実。
二日間東京を離れて、いろいろと仕事をし、様々な人に会った。懐かしい人たちにも会った。以前に撒いた種が実りつつある様子もあった。今後の課題が山積みであることも再認識した。
時は過ぎる。戻して直すことはできない。
とにかく、「人」である。
旅先で訃報を聞いて、帰りに名古屋に寄った。
劇作家協会東海支部の名花にして、バー・プリシラでいつも「とっておき」を用意してくれていた素敵なママであり、いつもパワフルに励ましてくれた、瀬辺千尋さん。
2月の長久手での協会イベントで私との「共演」を楽しみにしてくれていた、と、はせひろいちから聞いた。
パートナーの加藤君から未上演の最後の作品のことも聞いた。
今は言葉もない。
ありがとう。
さようなら。
旧日本軍の慰安婦問題について「会長の職はさておき」と個人的な見解と断った上で、
「戦時中だからいいとか悪いとかいうつもりは毛頭無いが、この問題はどこの国にもあったこと」。
「(戦争していた国すべてに、慰安婦がいたということか、という質問に対して)韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えるのか。ヨーロッパはどこでもあった。なぜオランダには今も飾り窓があるのか」
オランダの「飾り窓」は戦争と関係があるのか?!
日本軍占領中のインドネシアで南方軍管轄の第16軍幹部候補生隊が、オランダ人女性35人を民間人抑留所からスマランにあった慰安所に拉致し慰安婦として扱ったことで、国際軍事裁判において有罪が宣告された通称「白馬事件」は、日本軍が「強制連行」を行ったことを証明している。そういう日本とオランダのゆかりをこの人はまったく知らないのだろう。
ドイツやフランスについても、きちんと証明する根拠もないだろう。国際的な非難を浴びかねない。
「(証拠があっての発言か、という質問に対して)慰安婦そのものは、今のモラルでは悪い。だが、従軍慰安婦はそのときの現実としてあったこと」
不安になったのか、すんだことは仕方ない、という論理にすり替えて逃げている。
「会長の職はさておき、韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい。お金をよこせ、補償しろと言っているわけだが、日韓条約ですべて解決していることをなぜ蒸し返すのか。おかしい。」
これも韓国に対して極めて失礼で悪質だ。
「(会長の職はさておきというが、公式の会見だ、と突っ込まれ)では全部取り消します」「(取り消せない、とさらに突っ込まれ)会長としては答えられないが、それだとノーコメントばかりになるから「さておき」と言って答えた」
愕然とさせられるコミュニケーション能力の欠如である。
この籾井氏は三井物産副社長、日本ユニシス社長などを歴任。NHK会長人事に関しては前会長の松本正之氏を推す声も多かったが、経営委員会から指名されたという。選任に当たっては、NHKの放送内容が「偏向している」と不満を持っていた安倍政権の意向を汲んだ作家・百田尚樹氏ら4人の新委員の意向が反映されているわけだ。
また、籾井氏は「国際放送で領土問題について日本の立場を重視した放送をする」意向を示した。
「(尖閣諸島などの領土問題について)日本の明確な領土ですから、これを国民にきちっと理解してもらう必要がある。今までの放送で十分かどうかは検証したい」
「国際放送は国内とは違う。領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」
政府の言いなりに報道するということだ。こんな人間がトップなら、政府の側からすれば、わざわざ秘密保護法なんかいらなかったね、というくらいのことだろう。
靖国神社の参拝と合祀については、「総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい。いいの悪いのという立場にない。行かれたという事実だけ。ただ、淡々と総理は靖国に参拝しましたでピリオドだろう」ということだが、そういうことを「当たり前」として示そうという立場であるということだ。
放送法はNHKを含めた放送事業者に「政治的公平性」を義務づけており、NHKの会長がこのような発言をするのは極めて異例だと、各社は報道している。
籾井氏は「NHKが右だ左だ真ん中だということを言う必要もなく、放送法に書かれていることを順守していけば大丈夫だと考えています」というが、これらの発言のどこに「政治的公平性」があるのか。ただのデマゴーグである。
さすがのNHK経営委員会からも「外交問題に発展しかねない。選んだ側の責任も問われる。国際放送の役割についても事前に十分説明したのに、正しく理解していない」と失望の声がもれているという。
ともあれ、かっちり海外で紹介されれば、国際的な非難を浴びるのは必至だ。
現状、日本という国が「ヘンな国」「正当な考え方のできない国」であると、ここまで思われていることに、おそろしく鈍感な人間が、報道の責任者になろうとしている。この国の自滅を早めるだけである。
朝。「そもそも民主主義とはなんでしょうか」とテレビで問われ、だいの大人が応えられないという姿が映し出された。咄嗟に応えられない、ではなく、「民主主義」というコトバに違和感の顔、顔……。こんな国になっている。こういう情景がテレビで垂れ流されることでこのことが「常態」であることが保証されてしまっている。不条理が不条理の補完をしている。そんな現実。
二日間東京を離れて、いろいろと仕事をし、様々な人に会った。懐かしい人たちにも会った。以前に撒いた種が実りつつある様子もあった。今後の課題が山積みであることも再認識した。
時は過ぎる。戻して直すことはできない。
とにかく、「人」である。
旅先で訃報を聞いて、帰りに名古屋に寄った。
劇作家協会東海支部の名花にして、バー・プリシラでいつも「とっておき」を用意してくれていた素敵なママであり、いつもパワフルに励ましてくれた、瀬辺千尋さん。
2月の長久手での協会イベントで私との「共演」を楽しみにしてくれていた、と、はせひろいちから聞いた。
パートナーの加藤君から未上演の最後の作品のことも聞いた。
今は言葉もない。
ありがとう。
さようなら。