ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 





陶舗やまわ、宮岡刃物店
埼玉県川越市幸町7
1989(平成元)年9月18日

一番街に長喜院(ちょうきいん)の参道が入っている角にあるのが「陶舗やまわ」。隣の宮岡刃物店とともに「蔵造りの町並み」の中心になっている建物だ。大通りに向いた店舗の店蔵の裏、参道沿いに住居、土蔵(甘味処の「陶路子」など4棟がありそう)が並ぶ。蔵造りとしては入母屋屋根が変わっていると思ったが、川越ではマツザキスポーツ店などもあり、特に珍しいわけでもないらしい。
明治26年5月に建てられたとしているサイトがあったが、川越大火は明治26年(1893)3月17日。2・3ヵ月で建てられるものだろうか?「原家住宅」として昭和56年に市指定有形文化財になっている。『陶舗やまわ』には「現存する入母屋形式の土蔵造りとしては日本で最大級の規模です。5つの観音開きの窓を持ち、4段の厚く長い軒蛇腹の上に大きな千鳥破風が南面しています」とある。山本平兵衛という人が建てた呉服屋だった建物という。

「宮岡刃物店」もやまわと同様に重厚な蔵造りの店蔵だ。明治30年の建造なので、屋根などはやまわより一段高くと決めたのかもしれない。「宮岡家住宅」として昭和56年に市指定有形文化財になっている。創業は天保14年(1845)。屋号は「町屋(まちや)」で、通称が「まちかん(町勘)」だという。

追記(2022.11.05)
『川越の建物 蔵造り編』(仙波書房、2022年9月、税込2,200円)によると、陶舗やまわの建物は、1893(明治26)年に呉服商の足立屋山本平兵衛が建てたもの。1924(大正13)年の『川越案内』に広告が載っているので、昭和になってからと思うが、足立屋は撤退し、以降様々な業態の店が入ったらしい。1957(昭和32)年に現家主の先代が購入した。

「まちかん」では「お店でいただいた案内」の写真が載っているので以下に書き写してみた。
   鉄物砥石ノ部 
    町勘(マチカン)鉄刃物商
此ノ店、屋号ヲ町家(マチヤ)ト称シ、主人ヲ勘右衞門トイフ。抑々(ソモソモ)、明暦ノ頃ヨリ代々酒造業タリシガ、天保十四年、七代目町屋正兵衛ニ至リテ祖業ヲ廃シ、刃物店ヲ開業ス。当主常ニ刃物ノ吟味ニ精励シ、夜半枕頭ニ剃刀(カミソリ)ヲ合ワセルコト久シ、終ニ積年苦心ノ末刃物ノ奥義ヲ悟ル。爾来数年ヲ経ザルニ、販売スルトコロノ刃物、古今無双ノ切レ味ヲ以テ天下ニ相顕レ、即チ刃物百般ノ信ヲ得タリ。過ル明治二十六年、未曾有ノ大火ヲ蒙ルト雖ヘドモ、忽チ漆黒ノ土蔵造リヲ新築ナシ旧ニ倍スル隆盛ノ店トハナレリ。本店ハ
  川越南町西側ニアリテ
大宮・浦和・三河島ニ支店ヲ設ケ、現時川越町ニ名高キ刃物店トイフベシ。


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