大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベルベスト『宇宙人モエの危機・1』

2021-05-28 06:40:45 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『宇宙人モエの危機・1』  

     


 アッと思ったときには階段を踏み外していた。

 目の前に色様々な蝶々のように一クラス三十八冊のノートが舞った。

 あたしは、アニメの『時をかける少女』の名シーンを思い出していた。

 真琴が理科準備室で、人の気配に気づいて集めてきたノートといっしょに派手にひっくりかえり、時をかける少女になったところを……。

 気づいたら、保健室に寝かされていた。

「おい、大丈夫か!?」

 担任の保科先生の声が前方、やや上か聞こえた。

「はい、大丈夫……!」 

「笹倉!」

 そう言って保科先生は、前をかき合わせる仕草をした。

「アッ……!」

 ブラウスの第二ボタンまで外され、胸を締め付けないために、ブラのホックまで外されていることに気づいた!

「だめでしょ、例え担任でも男は厳禁!」

 養護教諭のミッチー先生が間に入った。

 ブラは、起きあがった衝撃で、五センチは下に下がってしまい、見えてはいけないものが、見えてしまったことが、保科先生のリアクションで分かった。

「もう、救急車くるからね、身繕いだけはしときなさい。外傷は無いようだから、主に頭のCTだろうね」

 その時、保健室のカーテン越しに救急車のサイレンが聞こえてきた。

 そうだ!?

 救急隊の人たちが来る前に、あたしは右の二の腕の裏を確かめた。

 どうやら、タイムリープ出来る体にはなっていないようだった……残念!

 救急隊のオジサンは、あたしの瞳孔をチェックし、名前とか、今日の日付や曜日の確認をした。

「宇宙歴3634年、オメガの月、第13日」

「……もう一度聞くよ。今日の日付は?」

「あ、2021年7月19日金曜、終業式の日……です」

「緊急搬送!」

 オジサンは、そう部下に指示し、首を固定されてストレッチャーに載せられた。

 なんか、変なこと言ったなあ……と、そのときは、そんくらいの認識だった。

 おかしい……そう思ったのは、病院でCTをかけられている最中だった。

――アルタイル星団調査隊、太陽系第三惑星調査分隊、モエ・ナスターシャ、報告せよ――

 そんな声が、頭の中でして、一瞬のうちに、いろんなことがごちゃ混ぜになった情景が頭にうかんだ。

「おくれ」

「手遅れじゃないよ。タンコブが出来てるけど、たいしたことはない」

「あ……」

「多少脳波にブレがでたけど、これは何かを思い出した波形だね。ジブリの『風立ちぬ』でも観にいって思い出していたのかな? あれは、感動的ないいアニメだったもんね」

 ドクターはベテランらしく、あたしが頭に浮かんだことの半分は当てていた。リバイバル上映の『風立ちぬ』は実際観て感動したんだもん。

 でも、半分は分からなかったようだ。自分でも忘れていた……。

 あたしは、宇宙人だってこと……!


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