大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第48話《ドゴール空港着陸》

2024-01-12 07:16:34 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第48話《ドゴール空港着陸》さつき 





 最初の原因は機長の病気だった。


「機長に突発的な脳障害がおこって暴れだし、それを制止しようとした副機長が突き飛ばされて頭を打ち、おそらく脳内出血をおこし意識不明になったようです。一応機長には麻酔を打っておいたから、暴れ出すことはありませんが、二人とも命の危険があります」


 乗客の中に居合わせた医者が、機長と副機長の面倒をみている。他に、ナースやCAなどで777のコクピットはいっぱいだ。


「この二人は動かせないよ。命にかかわる」

「しかたない。一佐は副操縦士席に、さつきさんは……」

「あなたの後ろにいます」

「じゃ、そこのエキストラシートに。あとの人たちは出てください。ドクター、多少揺れるかもしれませんので、気を付けてください」

 レオ君はヘッドセットを付けると、ドゴール空港のスタッフと連絡をとった。

「わたしは、タクミ・レオタール。日本の自衛隊員です。777はシミレーションでの飛行経験が200時間ほどあります。実機は初めてですが、なんとかやります」

『君の腕を信じよう。滑走路は君たち専用に空けてある。好きなように着陸したまえ。万全の準備を整えて待っている』

「ありがとうございます。こちらも万全を期します」

『きみの英語にはフランス語なまりがあるね。苗字もフランス人みたいだが?』

「父がフランス人で、空軍のパイロットでした」

『ほう、じゃ、君もパイロットなのかい?』

「残念ながら、陸上自衛隊です。施設科……工兵ですが、兵科の中では何でも屋です。なんとかしますよ。ちなみに、横には連隊長の小林大佐が、後ろにはガールフレンドがいます。いいところを見せないわけにはいきません。では、ただ今より手動に切り替えます。乗客のみなさん。これから操縦は日本の自衛隊のパイロット、タクミ・レオタールが行います。軍人の操縦なので、多少荒っぽいかもしれません。シートベルトをお忘れ無く』


 レオ君は三カ国語で機内放送をしたあと、手動操縦に切り替えた。


 で……多少ではなく揺れた(^_^;)。


「操縦桿の具合をみるために少し揺れましたが、単なるテストです。ご心配なさいませんように」

「これが成功しても、空自に鞍替えなんかせんだろうな?」

「はい、でも、フランス空軍からオファーが来たらどうしましょう?」

「今や、レオタールは、自衛隊の防衛機密だ。職権で、わたしが断る」

「わたしの交友機密であることもお忘れ無く。それもファーストシートだから」

「ハハ、エコノミーに落とされないようにがんばるよ。じゃ、着陸態勢に入ります。一佐、よかったら命令してくれませんか。その方が気合いが入ります」

「よし、レオタール。着陸仕方ヨーーイ……かかれ!」

「了解! 機速150ノットへ、ギア降ろし方用意……フラップ全開」


 速度の落とし方が、やや早かったので、一瞬エレベーターが降下したような浮遊感があったけど、フラップが効いて姿勢が安定した。


「着陸姿勢、右に三度修正……」


 わずか三度の修正でも、大きな機体は反応が大きい。左側にGを感じた。


「ようし……軸線に乗った。機首上げ三度……高度100……80……50……30……10……ランディング。エンジン逆噴射!」


 思ったよりも、ずっとスム-ズに着陸できた。客席から拍手と歓声があがる。


「やったね、レオ!」


 あたしは、思わずシートベルトを外して、シートごとレオ君にしがみついた。レオ君が汗ビチャなのに気づいた。


「レオタール、ブレーキをかけたほうがいいんじゃないか?」

「あ、忘れてた!」


 777は二百メートルオーバーランして止まった。


 あたしの交友機密のファーストクラスにレオ君は、消えないインクで記載された……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« くノ一その一今のうち・93... | トップ | ここは世田谷豪徳寺(三訂版)... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説7」カテゴリの最新記事