宇宙戦艦三笠・17
宇宙戦艦三笠は4人で十分コントロールできるようになっている。
艦長:東郷修一 副長兼航海長:秋野樟葉 砲術長:山本美奈穂 機関長:秋山昭利
これで十分だった。そこにボイジャーから変態したクレアが加わった。アナライズの補助ということになっているが、三笠にはAIの立派なアナライザーが付いていて、クレアにはやることがない。
で、クレアは、一見どうでもいいことをやりだした。
艦内のあちこちに、小ぶりな一輪挿しを付けて、コスモスのような小さな花を活けたりした。
「あら、コスモス」
樟葉が二日目に気づいて、それっきりで、なんの効果もないようだったが「あれクレアが活けてくれたの?」「はい……」それだけで、瞬間三笠の何かが温まった。
「あ、おれグリンピース食っちゃった!」
夕食の肉じゃがに、わずかなグリンピースが入っていた。トシはグリンピースが苦手だ。だから三笠のアナライザーはメニューの中にグリンピースは入れなかった。クレアは、それに干渉してグリンピースを入れたのだ。クレアと目が合うと、クレアは方頬でいたずらっぽく笑った。
トシは考えた……というより思い出した。
トシは妹を亡くしてからグリンピースを食べなくなった。トシの母は、トシの食べるものにグリンピースを入れなくなった。
艦長:東郷修一 副長兼航海長:秋野樟葉 砲術長:山本美奈穂 機関長:秋山昭利
これで十分だった。そこにボイジャーから変態したクレアが加わった。アナライズの補助ということになっているが、三笠にはAIの立派なアナライザーが付いていて、クレアにはやることがない。
で、クレアは、一見どうでもいいことをやりだした。
艦内のあちこちに、小ぶりな一輪挿しを付けて、コスモスのような小さな花を活けたりした。
「あら、コスモス」
樟葉が二日目に気づいて、それっきりで、なんの効果もないようだったが「あれクレアが活けてくれたの?」「はい……」それだけで、瞬間三笠の何かが温まった。
「あ、おれグリンピース食っちゃった!」
夕食の肉じゃがに、わずかなグリンピースが入っていた。トシはグリンピースが苦手だ。だから三笠のアナライザーはメニューの中にグリンピースは入れなかった。クレアは、それに干渉してグリンピースを入れたのだ。クレアと目が合うと、クレアは方頬でいたずらっぽく笑った。
トシは考えた……というより思い出した。
トシは妹を亡くしてからグリンピースを食べなくなった。トシの母は、トシの食べるものにグリンピースを入れなくなった。
――よかったね、これで一つ克服できた――
クレアの小さな声が、直接心に響いてきた。
――克服……そうだ。グリンピースは由美が好きだったんだ――
妹が死んでから、トシはグリンピースを食べなくなったことを思い出した。
「0・2パーセクの座標に船の残骸。モニターに出すわね」
樟葉がモニターに出した映像には、定遠の残骸が映し出されていた。テネシーの時とは違って、船の形を留めないほどに壊されている。
「生命反応は?」
「ない……」
「全滅か……?」
「いや、痕跡もないから、元々無人の船だったようね」
「もともとハリボテの復元だったからね」
美奈穂が、無感動に言った。
「じゃ、記録だけして、先を急ごう」
三笠のアナライザーは数秒で記憶し終えると、乗組員たちといっしょに定遠のことは忘れてしまった。三笠は絶えず前を向いている船なのだ。
「定遠から光子魚雷!」
クレアが短く言った。
「え!?」
樟葉の手が反応した。後部バリアーを張り、フレアーを放ち、船を面舵に切った。その間0・2秒である。
艦尾の方で大きな衝撃があった。
フレアーと艦尾のバリアーに光子魚雷が命中した。三笠自体には損傷はない。
「危ないところだった……」
「定遠の残骸をダミーにして、光子魚雷を仕込んでいたんです。シュトルフハーヘンの得意技です」
「クレア、よく知ってたわね」
「ボイジャーでいたころに、いろんなことを経験しましたから……」
修一は、チョコレートのような香りがしているのに気付いた。調べてみるとコスモスの香りだった。コスモスはチョコレートのような香りを放つ。その香りには鎮静作用があることも分かった。クレアに目をやると、少しニコリとした。
トシは気づいた。
グリンピースが嫌いだったのは、妹が死んだのは親が新しくも身に合わない自転車を買ってやったから……トシは、意識の底で、妹が死んだのは、半分は親のせいだと思っていた。それを、いままで押し殺して、グリンピースが嫌いということで現していたことに気づいた。
クレアの小さな声が、直接心に響いてきた。
――克服……そうだ。グリンピースは由美が好きだったんだ――
妹が死んでから、トシはグリンピースを食べなくなったことを思い出した。
「0・2パーセクの座標に船の残骸。モニターに出すわね」
樟葉がモニターに出した映像には、定遠の残骸が映し出されていた。テネシーの時とは違って、船の形を留めないほどに壊されている。
「生命反応は?」
「ない……」
「全滅か……?」
「いや、痕跡もないから、元々無人の船だったようね」
「もともとハリボテの復元だったからね」
美奈穂が、無感動に言った。
「じゃ、記録だけして、先を急ごう」
三笠のアナライザーは数秒で記憶し終えると、乗組員たちといっしょに定遠のことは忘れてしまった。三笠は絶えず前を向いている船なのだ。
「定遠から光子魚雷!」
クレアが短く言った。
「え!?」
樟葉の手が反応した。後部バリアーを張り、フレアーを放ち、船を面舵に切った。その間0・2秒である。
艦尾の方で大きな衝撃があった。
フレアーと艦尾のバリアーに光子魚雷が命中した。三笠自体には損傷はない。
「危ないところだった……」
「定遠の残骸をダミーにして、光子魚雷を仕込んでいたんです。シュトルフハーヘンの得意技です」
「クレア、よく知ってたわね」
「ボイジャーでいたころに、いろんなことを経験しましたから……」
修一は、チョコレートのような香りがしているのに気付いた。調べてみるとコスモスの香りだった。コスモスはチョコレートのような香りを放つ。その香りには鎮静作用があることも分かった。クレアに目をやると、少しニコリとした。
トシは気づいた。
グリンピースが嫌いだったのは、妹が死んだのは親が新しくも身に合わない自転車を買ってやったから……トシは、意識の底で、妹が死んだのは、半分は親のせいだと思っていた。それを、いままで押し殺して、グリンピースが嫌いということで現していたことに気づいた。