goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・021『修学旅行・21・富士山頂のレプリケーター』

2020-12-08 15:30:09 | 小説4

・021

『修学旅行・21・富士山頂のレプリケーター』未来   

 

 

 富士山頂の山小屋は、さすがにレプリケーター。

 

 レプリケーターというのは前世紀に発明された食品自動生成機のことで、宇宙旅行や、最果ての惑星探検とかには欠かせないアイテム。

 炭素とか窒素とかの大気中や自然に存在している原子や分子を組み立てて、オートで食品を合成してくれる。

 宇宙船なら、原料になる分子原料をタンクに貯蔵しておいて、それを使う。合成された食品は原料の数十倍の量になるから、長い宇宙旅行でも不安は無いのよ。

「足りなくなったや、みんなのウンコとかも原料になりゅ(^_^;)」

 テル!

「オシッコもお!」

 ちょ、だれか、テルを黙らせて!

「キャハハハ」

 

 修学旅行は学校行事なので、火星に戻ってからレポートを出さなきゃならない。

 羽田に着いてから、ドラマチックなことばかり起こるので、ついつい後回しになって、富士山頂の山小屋食堂で、やっと取り掛かったところ。

 ダッシュがラーメン屋の息子なので「オレが食レポやるぜ」とか言ってたんだけど「明日っからやる(^▽^)/」とか調子のいいことばっかり言って、とうとう四日目までなにもしないので、あたしがやってるわけ。

 ダッシュがテルを相手にしてくれるようなので、続けるわね。

 ヒコは、富士山頂の重力場の調査で、山頂のカルデラを一周している。

 まあ、ヒコも地球の重力場に関心があるんだけど、重力場なんてテーマでレポート書いても、先生の評判はとれても、一般生徒の関心は呼ばない。

 レポートは、校内で選考されて(生徒も投票できる)一位に選ばれると、扶桑の高校全部の中の選考にかけられ、上位三位以内に入ると賞品がもらえる。提出は、各班に一つ。

 で、あたしが頑張ってるワケよ。

 レプリケーターは発展途上のガジェットで、同じメニューは同じ姿かたちで出てくる。

 つまりね、大昔のゲームの中に出てくるオブジェと同じ。

 焼き芋ってオブジェがあったとしたら、クリックするたんびに同じ焼き芋が出てくるでしょ。

 まったく同じものが並ぶと、つまらない。

 ゲームの中で、森の中に入ったとすると、出てくる動物が、種類ごとに同じだったり。街を歩いていると、NPCが同じ顔してたりすると詰まらないでしょ。

 でも、利便性とか効率性を考えると、やっぱ、レプリケーターが一番。

 御即位25周年の記念に、あちこちで自然調理の食べ物を出してくれる。成駒屋さんの修学旅行メニューなんて涙が出てきたけど、その時の感動に流されて、やっとレポートのペンをとれたのが、この富士山頂。

 そのレポートの書き出しがレプリケーター食品というのは情けないけど、さ、書こうか!

 

 レプリケーターとは言え、ずっと目の前に置いていては冷めたり伸びたりするので、ハンベで撮ったホログラムを見ながら筆を進める。

 ええと…………なにも浮かんでこない。

 たった今、現物は食べたところだものね。

 見た目から書こうか、味を思い出そうか……。

 よし、見た目の描写からだ。

 プルルル プルルル

 書き出そうと思ったら、ハンベに緊急連絡のシグナル。

 ため息をついてクリックすると、ハンベマスコットのあんみつ姫のホログラムが出てきた。

『ミク、ホームステイ先の亭主から緊急電じゃ!』

 あんみつ姫は表情とジェスチャーを内容にリンクするように設定してあるので、中身が大変なことが姫の表情からもうかがえる。

「じゃ、出して」

 あんみつ姫がポリゴンに分解したと思うと、以前、連絡を取った時と同じ小父さんの姿になった。

『申し訳ありません、当方の緊急なトラブルで、ホームステイをお受けできなくなりました。ホームシステムの急な故障で、修理には三日ほどかかりまして、宿泊料金につきましては、120%の保証をさせていただきます……』

 そこまで言うと、もう一度頭を下げてメッセージを繰り返す……ていねいだけど、レプリケーターのように味気ない。 

 

※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

 ※ 事項

扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

やくもあやかし物語・22『体重大事件・2』

2020-12-08 05:52:41 | ライトノベルセレクト

物語・22

『体重大事件・2』    

 

 

 挨拶と食事は人間関係の基本だよ。

 

 おはよう さよなら ありがとう 行ってきます ただいま じゃ ども 失礼します おっす いただきます ごちそうさま

 相手や状況によって使い分けるけど、挨拶さえできていれば最低の人間関係は維持できると思う。

 学校でも家でも同じこと。

 わたしってコミュ力が乏しい。だからこその挨拶。挨拶さえできていればそのあとが寡黙でもなんとかなる。

 家では、挨拶プラス食事だ。

 家族と言うのは寝食を共にしているので、挨拶だけでは不十分だ。

 三度の食事は(学校に行ってる時は二食)必ず一緒に食べる。一緒に食べることで、とりあえずの一体感は維持できるんだよ。

 好きなラノベに『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』がある。

 オタク趣味をめぐっての高坂桐乃と京介兄妹のラブコメ。けして家族のコミニケーションが多いわけじゃない、いろいろ問題も起こるんだけど、挨拶と食事はきちんとしてるんだ。

 さっき書いたように挨拶してる。ケンカしてても「ごちそうさま」「いってきます」「ただいま」とかは欠かさない、食事は家族そろってるしね。そういうとこに親近感もって読み始めて、今は中古だけどDVDも持っている。

 わたしに桐乃みたいなルックスと才能と京介みたいな兄貴が居たらと思うんだ。

 思ってる間は幸せでいられるしね。

 

 で、食べ過ぎてしまう。

 

 残しちゃ悪いと思って食べてるうちに、それが普通になってしまった。

 お婆ちゃんが、なにくれとなく間食を勧める。お八つよ~ とか 羊羹切ったわよ~ とかね。

 さっきも言ったけど、わたしは口下手。だから、キチンと食べることで親愛の情を示すことになる。

 会話が1だとしたら、食べることが3とか5とかの感じ。

 

 で、前回の図書室のカウンターでの事件になったわけ。

 

 しょぼくれて崖道に差しかかる。

 下校はつづら折りの道と決めているんだけど、ウジウジ考えてトチ狂ってしまった。

 ペコリお化けにお辞儀だけの挨拶しなきゃ…………え?

 ペコリお化けの定位置に立っていたのは、図書室の窓際にいた女子の一人だ。

 

 図書室に居た時は分からなかったけど、こいつは付喪神(つくもがみ)だ。

 歳古びた道具や身の回りの品物に宿った神とか精霊、たいてい人に悪さをする。

 学校の図書室に出たということは、学校の付喪神? それとも、わたしが連れてきてしまった?

「うふふ、そんなに警戒しないでよ」

 付喪神が、そのナリにふさわしいアニメ声で話しかけてきた……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かの世界この世界:156『魔法石』

2020-12-08 05:42:26 | 小説5

かの世界この世界:156

『魔法石』語り手:ポチ           

 

 

 

 ドドドドドドドドドーーーーーーーン!!!!

 

 小石一つを放り込んだとは思えない音がした(;゚Д゚)。

「なんか、とんでもない音がしたよ……」

「穴が崩壊した……」

「あんなチッコイ物で?」

「九つの世界は、好き放題に国境を固めたからね……ユグドラシルって、本来は木、樹木だろ。樹木と言うのはしなやかなものだけど、固めてしまうと柔軟性を失い、ちょっとした刺激で崩壊してしまうことがある」

「そ、それにしても、凄すぎない?」

「きみが籠めた想いって、どんなの?」

「『スヴァルトアルムヘイムに来てしまったけど、すぐに戻ります』的な?」

「ごく普通だよね……ごめん、もう一度籠めてくれる?」

「う、うん……」

 

 さっきと同じように魔法石に「すぐ帰る」的な想いを籠めた。それを渡すと、フェンリル二世は目の前に仮想タブレットを出して分析し始めた。

 

「す、すごい……破壊値が五十キロ爆弾クラスだ!」

 五十キロ爆弾クラスの程度がどのくらいなのかは分からないけど、フェンリル二世の表情からスゴイと言うのは伝わってくる。

「ただのメールが、なんで、そんなことになるの?」

「僕にも分からないよ、きみは小型妖精のようだけど、どこの種族なんだい?」

「う、それは……」

 元々はクリーチャー、シリンダーの突然変異体だとは言えない。

「あ、ごめん。詮索することじゃないよね。いや、あまりに凄いから、ついね。キミには自覚は無いんだろうけど、魔法石との相性が飛びぬけていいんだと思うよ」

 ウウ、そんな相性は、ありがたくないよ。

「試してみよう」

 フェンリル二世はポケットから、色の違う魔法石を取り出した。

「魔法石のピュアストーン、まだ、僕の思いが籠っていない状態だ。これに、さっきと同じのを籠めてくれないか」

「これに?」

 危険物だと分かって手に取るのは気持ちが悪い。

「あとで解除すれば、ただの魔法石に戻るから」

「う、うん……」

 明るい押し出しに、ソロリと手を出して、さっきと同じようにする。

「これでいい?」

「うん、ありがとう……あれ?」

「どうかした?」

 変な結果がでるのは、ちょっと嫌だ。

「何も変わってないよ」

「ほんと?」

 正直言って嬉しいんだけど、フェンリル二世の期待を裏切るようなので、努めて普通に言う。もう一回やって欲しいと別の魔法石を渡されるんだけど、四回やって結果は同じだった。

「おかしいなあ……じゃ、僕の登録が済んでるので試して」

「う、うん」

 結果は直ぐに出た。

「やっぱりだ、僕の登録が済んだ魔法石に上書きすると起きる現象だ!」

「そ、そうなの?」

 フェンリル二世はズイと身を乗り出した。

「どうだろ、しばらく僕といっしょに居てくれないか!?」

「し、しばらくって……」

「ぼくが……ぼくの目的を果たすまで……」

 

 その瞳には、決して断れない切迫感が溢れていた……。

 

  

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする