演劇部とは縁を切った……つもり。
ところが学校いうのは村社会で、必要以上に「縁切った!」と言いまわっていては友達をなくします。
だから、演劇部員の番号は残したし、着信拒否というような大人げないことしなかった。廊下で出会ってもも「お早う」とかの挨拶ぐらいはした。
しかし、この半端な対応がムカツキの種になった。
うちの演劇部とF高校の有志が合同公演やると、冬休みに入って一斉送信で連絡してきた。
わたしは、メールは送るけど一斉送信はしない。ダイレクトメール以下の通信だしね。
コンクールの時も、観客動員を言われたんで、直美のほかにも二人メールを打った。ちゃんと別々に。で、結果的に直美一人が観に来てくれたわけです。
で、この一斉送信を無視してたら、二日後にまた一斉送信が帰ってきた。
――ご要望通り、お席を確保いたしました。UFO劇団一同ご来場を心よりお待ちしてまおります――
うそ、観に行くなんて絶対返信してへんさかい! 思わず大阪弁になる!
念のため、こないだの一斉送信を確認。やっぱり返信はしていない。もう一度確認。すると、本文が終わったずーーーっと下、四スクロールしたあたりに、こうあった。
――ご都合の悪い方はご連絡ください。ご連絡が無い場合は、それを持ってご出席のご返事とさせていただきます――
え、そんな……。
無視してもいいんだけど、わたしは気が弱い。なんとか卒業までは穏便に高校生活を送りたい。小屋(会場)も朱雀ホール。定期で行ける会場。仕方なく行くことにしました。
「お、やっぱりきたか!」
モギリのO先輩がしたり顔。どうやら、あの一斉送信の考案者はO先輩みたい。
これで分かったことが、もう一つ。
この公演は、うちのU学院とF高校の合同公演。だから名前はUF劇団になるはずだ。それが人を喰ったみたいにUFOというのは、このO先輩がイッチョカミしってるからのようだ。
ちなみにO先輩は二年前の卒業生。もっと大学生としてやることがあるだろう……思ったけど、口には出さない。
O先輩の戦術が効いたのか、観客席はほぼ満席。まあ、キャパ100ちょっとの小屋だから、そんなにビックリするほどのことでもない。
芝居は……舞台に上がって、素人のドタバタコントを繋いだだけ。パンフには『邂逅と出会いの奇跡!』なんというキャッチコピー。要はろくに稽古もしていない即興芝居。
即興そのものは否定しない。マリリンモンローとかジェームスディーンが出たアクターズスタジオでも即興は重要な課題。だけど、あっちは10分ほどの映画の一コマを丹念に半年もかけて、先生と学生の役者が解釈、実行、検証のスリーステップを丹念にやってる。
ジェームスディーンが『エデンの東』で見せた屈折したアマエタの演技も、アクターズスタジオの即興の練習の成果。あたしが好きなんは、キャル(ディーンの役名)がパパに叱られて、うじうじ部屋の片隅で壁をホジホジしてるところ。パパに反発しながらパパの愛情が欲しいてたまらんハイティーンの切なさが胸に迫ってくる。
これも、真剣な即興から出てきたものだ。
あとは楽屋受けのバカみたいなギャグの連発。客席は一部を除いて湧いてた。あたしと数人のお客さんが白け顔。その中に一人、あたしでも知ってる演劇評論家の栗田さんがいた。伝説通り上手の一番奥で、腕を組みながらポーカーフェイスで観てらっしゃった。あのポジションは、芝居を観客ごと見るという栗田さんの定位置。
あくる日のブログには『老衰した若者のモドキ芝居』と、タイトルから厳しかった。
あたしは匿名で、観客動員のえげつなさを書いた。
「同感です」と短いコメントが出てた。
まあ、愚痴みたいなことは、これでおしまいです。
次からはプレリュードに相応しいことを書き散らしたいと思います。
奈菜……♡