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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

千早 零式勧請戦闘姫 2040・05『レンチンが終わるまで・3・ゼロ戦との縁』

2025-01-28 16:41:13 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
05『レンチンが終わるまで・3・ゼロ戦との縁』 




 どうやら夢を見ている。

 レンジの中でたこ焼きが回って、神楽鈴が鳴ったかと思うと異変が起こった。

 カミムスビノカミ(神産巣日神)が現われて、神楽鈴を投げ渡され、邪悪な黒影と戦う羽目になった。

 なんとかやっつけたと思ったら、今度は意識が飛んで体が動かない。


 金縛り…………?


 真っ白な中に鳥居が浮かび上がる――うちの鳥居だ――そう気づくと、鳥居を中心に神社の全景が浮かび上がる。

 拝殿も本殿も今と同じなのに、社務所は写真でしか見たことのない昔の木造だ。

 昔の神社?

 鳥居で一礼して数名の男たちがやってきた。

 一人は映画で見たような古い飛行服、スーツにゲートルを巻いたのやら整備士のツナギを着た者、ハンチング帽に法被姿の者。

 手水舎で作法通りに手を洗い、口を漱ぐと二列に並び、真ん中のスーツ姿が鈴を鳴らす。

 ガランガランガラン……パンパン……

 二礼二拍手、そしてトドメの一礼をしたところで停まった。

 時間が停まった……いや、不動の礼のまま祈っているのだ。

――こんなに真剣に祈っている人、見たことないよ――

 感心して見ていると、千早の横にカミムスビノカミが立った。

「この人たちは、ゼロ戦を運んでいるのよ」

「え、ゼロ戦?」

「ほら、あそこ」

 カミムスビノカミが指差すと、外に景色が広がって、参道の手前の道に妙なものが見えた。

 四輪の大きな台車の上に翼と胴体に分けられたゼロ戦が載っている。明るい灰色にピカピカの日の丸。

 二十一型?

 詳しくは分からない千早だが、貞治がいちばん感激していたので、そうではないかと思ったのだ。

 でも、どうして牛が曳いてるの!?

 ゼロ戦を載せた台車は、平安時代のように牛が曳いているではないか!

 2040年の今日ではクラシックに見えるゼロ戦だが、それでも全金属製モノコックのレシプロ戦闘機。それが、平安時代のように牛が曳いているのに違和感とおかしさを感じないではいられない千早だ。

「名古屋の工場から九尾の飛行場まで、牛車で運んだのよ」

「なんでぇ、トラックとかあったでしょ!?」

「道路事情が悪かったから、トラックで運ぶと振動で狂いが出たり、最悪壊れることもあったからね。今もね、お参りに来てるのよ。故障が見つかったのが神社の近くだったから」

「そうなんだ」

「で、あれが初号機」

「エヴァンゲリオンみたい」

「まさにねぇ……紀元二千六百年、大陸は激戦続きだし対米英戦も現実味を帯びてきた昭和15年だからね。浦安の舞ができたのも、少しでも平和な時代が続きますようにって祈りが籠められているのよ」

「そうなんだ……」

「このわたし、神産巣日神は百年に一度、人に力を与えられるの。元々は神を産む力だけど、もう八百万というくらいに増えたからね、今度は人にその力を与える。それが、百年前の1940年だったのよ。でも、ちょうどそれをやろうとした時にめぐり合わせたのが、この人たち」

「なにかお祈りしてる」

『願わくば、この零式艦上戦闘機を無事に進発させてただき、回天の力と武運を賜りますよう、開発者一同伏して願い奉ります……』

「わたしはビビッときてしまった!」

「ああ、こんなに真剣にお願いされたら……」

「ううん、わたしが人に与えようとしていたのが、これなのよ!」

 タカムスビノカミが空中で指を振るうと文字が現れた。

 零式勧請戦闘姫!

「え……ええ!?」

「零式とは、ゼロ戦同様に皇紀の末尾、勧請とは神を請い迎えるの意味、そして戦闘姫とは、その神の力を帯びて戦う姫巫女のことなのよ! でも、人は、その響きと同じ零式艦上戦闘機を作って、渾身の願いを捧げて来た。わたしは、その力と加護を、その初号機と、それに続くゼロ戦達に与えたの」

「それって……」

「そう、本当は、千早、あなたのひいお祖母ちゃんの葛(かずら)に授けようと思った」

 拝殿で浦安の舞を舞っている巫女が浮かび上がる。

「あれ、ひいお祖母ちゃん?」

「そう、この年に制式化されたばかりの浦安の舞だけど、一番の舞手だった」

 シャラン

 扇が剣鈴に持ち替えられ、葛の舞は佳境に入るところだ。

「うわぁ……」

 姉の舞が日本一だと思っていたが、100年前の曾祖母の舞は、その上をいっていると思う千早だ。

「うん、浦安の舞が定着し、みんなに喜ばれるようになったのは葛の力が大きいのかもしれないわね」

「わたし、あんな風に舞えるかなあ……」

「無理でしょうね」

「ガク(*óㅿò*) 」

「でも、今日から千早は零式勧請戦闘姫だからね」

「ええ!?」

「よろしくね(''◇'')ゞ」

 チーーーン!

 その一言を残してカミムスビノカミが消えると同時にレンジが任務終了の鐘を鳴らした。



☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
八乙女介麻呂          千早の祖父
神産巣日神          カミムスビノカミ     
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里            日本で最年少の九尾市市長
天野太郎            明里の兄
 

 

 
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千早 零式勧請戦闘姫 2040・04『レンチンが終わるまで・2・神産巣日神』

2025-01-26 11:48:12 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
04『レンチンが終わるまで・2・神産巣日神』 




――か、神さま!?――

 千早は声も出さずに驚いた。

 神さまとは、祝詞や巫女舞で醸された空気の中に気配として感じるものであって、リアルに姿を現すものではない。目の前の特注の巫女のような姿が現われても千早の理解は追いつかない。

――言の葉を改める―― 

 そう言うと、同じ装束でありながら、学校の先輩ほどの気安い雰囲気になった。

「ええとね、わたしは、この浦安八幡の祭神で神産巣日神(カミムスビノカミ)なんですよ」

「え、うちの御祭神は八幡様だけど……」

「ああ、八幡神というのはフランチャイズ……かな?」

「フランチャイズ!?」

「みたいなね(^_^;) 神産巣日神って、ぜんぜんメジャーじゃないでしょう?」

「ああ、ええと……」

 よその子どもよりは神さまを知っている千早だが、なにせ、日本は八百万(やおよろず)の神々の国、知らない神さまはいっぱいある。

「いちおう、イザナギ、イザナミとかのうんと上なんだけどね……でも、ポピュラーじゃないからね、神産巣日神じゃ人が集まらないでしょ?」

「あ、ああ……」

 たしかに、参拝客が多いのはナントカ八幡とかナンチャラ天神アレコレ稲荷。

「神主も巫女も霞食べて生きてるわけじゃないからね、ほどよくお賽銭がいただける神社じゃないと大変でしょ。ほら、コンビニ出すんだって、オーナーの名前じゃなくて系列元のローソンとかファミマとかフランチャイズしちゃうでしょ。それみたいなものよ」

「ああ、たしかに……」

 応えながら千早は思い至った。子どもの頃に祖父の介麻呂から聞かされた神話にそれらしいのがいた……ような気がする。

「そうよ、この世に最初に現れたのがアメノミナカヌシノカミで、その次がタカムスビノカミとカミムスビノカミで、つまり、そのカミムスビというのがわたしなわけなのよ!」

「ああ、でも、出てくるだけですぐに消えちゃって、それっきりなんじゃ……」

 貞治が言ってた聖書と同じだと思う千早だ。聖書においてもキリストに至るまでいっぱい人が出てきて「覚えきれねえ」と父親の跡を継がない言い訳にしている。

「わたしのこと、NPCだと思ってるでしょ」

「あ。いやそれは……」

「まあ、たしかに前座っぽいんだけどね、わたしには大変な役割があるのよ」

「大変な役割?」

「読んで字のごとく、神産巣日神というのは神を産む役目を負った神なのよ」

「神を産む!?」

「うん、原動力というかジェネレーターというか……あ、さっそく来た!」

 ピシ!

 一瞬でカミムスビは元の神の顔になると、手にした神楽鈴を千早に投げてよこした。

「ちょ、なにぃ!?」

「それを持って戦って、ザコだから今の千早でも勝てる!」

 シャララ~~~ン

「え、ええ!」

 鈴が鳴ると、巫女鈴は三つに分かれ、一つは両刃の剣となって腰に、一つは左手の盾、もう一つは勾玉の首飾りとなって胸に輝き、身には日本史で見た短甲という胴鎧をまとっている。

 ズチャ

 意識せずに抜剣した。

 ええ?

 体は空に浮き、眼下には神社、目の前には邪悪な黒い影が浮かんで、神社を取り囲むようにゆっくりと回っている。

 黒い影は悪そのもの……倒さなければ……心の底でつぶやく者があって、千早は半ば無意識で影に切りかかっていった。

 セイ!

 ッ……ズボ!

 振り下ろす前に一瞬のためらいが出て、影の腕と思しき所を切り落とすだけになった。

 シュボ

 二秒とかからぬうちに影の腕は再生し、半ば警戒、半ばバカにするように輪を縮めて千早に迫ってきた。

――核を切らなければだめ――

 カミムスビの声がして、千早は剣を構え直した。

 影の胸あたりに青く燃える核が見えた。

 今度こそは!

 口と気を一度に引き締めて再び影に立ち向かい、一閃で核をたたっ切ると、影は霧消していった。

 次だ!

 スパ! スパ! スパパパ!

 最初の半分の手応えもなく影は核ごと切れて吹き飛んでしまった。


 あ、ああ…………


 直後、目の前が真っ白になって意識が飛んでしまう千早であった。

 


☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
八乙女介麻呂          千早の祖父
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里            日本で最年少の九尾市市長
天野太郎            明里の兄
 
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千早 零式勧請戦闘姫 2040・03『レンチンが終わるまで・1・異変』

2025-01-23 13:50:55 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
 03『レンチンが終わるまで・1・異変』 




 たこ焼きをレンチンしながら千早は思う

――なんで、一回見合いしただけで結婚に踏み切れるのか?――

 姉の挿は去年の秋に見合いして、年が改まって間もなく婚約してしまったのだ。

 神社の年始は忙しく、挿に代わって覚えなければならない巫女のあれこれも多く、学校も三月足らずのうちに期末テスト学年末テスト。ほかにも諸々があって、今朝のゼロ戦生誕100周年フェスティバルに行ったのが久々の息抜きの千早だった。

 レンジの中でたこ焼きが回っているのを見ていると、拝殿の方から、祖父介麻呂の祝詞が聞こえてきた。

 拝殿からは距離があるのだが、介麻呂の祝詞は野外の地鎮祭などでもよく響いて評判がいい。それに加えて挿の巫女舞が続くのだ。自分の家の神社なのにホワホワと聞きほれてしまう千早だ。


 天野太郎は市長になった明里に比べて影が薄い。

「月読(つくよみ)みたいだ」

 父の感想に挿も千早も頷いたものだった。

 月読とは月読命のことだ。父のイザナギが黄泉の国から戻って右目を洗った時に生まれ「月と夜を治めろ」とイザナギに命ぜられ、それ以来ほとんど現れることのない影の薄い神さまである。神社の娘だから姉妹ともども知っている千早だが、一般的にはアマテラス、スサノオの姉弟に挟まれて知られることが少ない神さまだ。

 天野家は九尾市の名家で、戦前から町長や市長を輩出している。それも、力にものを言わせての独占というものではなく、市長職を踏み台にして県知事や中央政界に打って出ようという色気も無い。その天野の長男でありながら、父の会社の係長に甘んじている天野太郎は――よくできたご長男――と地味に好感を持たれている。

――あ、お姉ちゃんのことだった(^_^;)――

 千早は、よく言うと反射のいい娘なのだが、興味がすぐに移る……というよりは飛んでしまい、時どき反省する。

――たった一回の見合いだし、それも相手はお寺の坊主だぞぉ――

 写真を見た時に「ああ、人付き合いのいい人だろうな」と千早は思った。

 神社も寺も、言ってみれば人を相手にする仕事なので人付き合いの良さは大事だ。仏頂面で口下手では氏子も檀家も減っていくだろう。

 それと、挿が嫁ぐお寺はちょっと面白い。

 旦那の妹……と思ったら同居の従妹らしいのだけれど声優のS。Sは去年ブレイクしたエルフのアニメで主役の声をやっている。Sはそれ以外にも千早の好きなアニメの数々に出ていて、そのSと親類になれると思うと、ちょっとワクワクしている。

――でも、まだお姉ちゃん23歳だよ、もったいない――


 シャリン


 神楽鈴が鳴って、いよいよ挿の巫女舞が始まった。

 そろそろ加熱も終わったかと視線を落とすと……レンジのタコ焼きは止まったままだ。

――あれ?――

 壁の電波時計も停まっているし、その下の出窓からは空にピン止めされたように雀が羽を広げたままフリーズしている。

 ええ……?

 振り返ると、キッチンの先は参集殿や拝殿に繋がる廊下のはずが、群青の空が広がっている。

 出窓の空とは違って、雲は流れて爽やかなそよ風さえ吹きこんできて、たこ焼きのそれではない香しい匂いさえ漂っている。

――貞治がやってるMRみたいだ――

 しかし、MRのゴーグルをしているわけでもない、だいいちMRでは匂いまではしない。

 すると、拝殿から漏れてくるそれとは違う神楽が聞こえ、滲み出るようにして人影が現れた。

 人影は近づきながらしだいに姿を明らかにし、千早の二間ほど前に進んだ時には浦安舞の正式装束の巫女になった。

――いや、巫女装束じゃない――

 その装束には縫い目が見当たらない。皴やヒダの寄り方も物理法則に従っているのではなく、アニメのそれのように、きれいにカッコよく見せるためにそよいでいる。


――これは神さまだ――

 
 千早は思った。


――いかにも 身はこの社の祭神たる神産巣日神(カミムスビノカミ)であるぞよ――


 神さまは口も動かさずに千早に応えた。




☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里           日本で最年少の九尾市市長
天野太郎           明里の兄
 
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千早 零式勧請戦闘姫 2040・02『浦安の舞』

2025-01-20 15:04:52 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
 02『浦安の舞』 




 「すぐに参集殿に上がって」

「ええぇ、タコ焼き食べてからぁ。お姉ちゃんのも買ってきたんだからぁ」

「約束でしょ、早くしな」

「へーい」

 玉垣の隙間から姉の姿が見えた時に千早は覚悟はしていた。姉の挿(かざし)は巫女服姿で境内の掃除をしている。神社の娘として境内で言い争うのはひかえなければならない。まして巫女服を着られていては言葉が返せない。

 ブゥーーーーーーーン

 手水舎の屋根越しに二度目の展示飛行をしているゼロ戦が見える。もう少し遊んでいたい千早だが、姉との約束があったので、ちょうど通りかかった農協の車に乗せてもらって帰ってきたところなのだ。

「え、もう帰るの?」

 農協の田中さんは、丘の上で空を見上げている貞治に目をやりながらアクセルを踏む。

「ああ、うん。神社の用事があるから」

「あ、カザシちゃんの婚礼近いんだねぇ」

「うん、来月には大阪だからね」

「そうか、カザシちゃんの巫女舞、もう見られないんだ」

「大丈夫よ、夏祭りはあたしがやるし」

「プ……」

「なに、おじさん!?」

「いや、思い出すなア。元気で明るくって、キビキビしててさ。あの稚児舞は良かった。うちの婆さん、あれで食欲が戻って風邪が治っちまったもんな」

「アハハ、そりゃどうも……(^_^;)」


 ついさっきの会話を思い出しながら、たこ焼きをテーブルに置いて指さし確認。姉が待っている参集殿への廊下を進む千早。


「装束着なきゃダメぇ?」

「千早はそのままでいいよ。先に見本見せるから思い出してみ」

「あ、うん」

 すでにスタンバイしているパソコンをクリック、いつも通り十秒ほどの間があって、正面のスピーカーが神楽浦安を篳篥(ひちりき)・ 神楽笛・琴・太鼓の響きに載せて歌いだす。

 挿(かざし)は、年配の氏子や世話役から『今紫の上』と呼ばれる美しい横顔を隠すように扇を立て、シズシズと摺り足で中央に進む。中央で直角に曲がると八足台の前に腰を落とし恭しく一礼。

 くそ

 千早は少し面白くない。

 普通、八足台という小机は神前に置かれ神さまに挨拶するものなのだが、いまは千早の正面に置かれている。
 舞の様子や所作をしっかり千早に見せるためなのだが、千早には――よそ見しないでしっかり見ろ。お姉ちゃんも神さまも、きっちり千早のこと見てるからな――と圧迫されているように思える。


 天地(あめつち)の 神にぞ祈る 朝なぎの 海のごとくに 波たたぬ世を 


 浦安の歌詞は、わずか三十一文字。国歌の君が代と同じである。

 同じ文字数なのは、両方ともに和歌だからである。

 君が代は、いつの時代から歌い継がれてきたか分からないほどに古い詠み人知らずの名歌である。
 しかし、神社の定番神楽である浦安は、千早たちの令和22年から振り返っても、たかだか100年の歴史でしかない。
 昭和8年に昭和天皇が詠われた御製に、昭和15年の紀元二千年、その御製に多 忠朝(おおの ただとも) が神楽曲を付け、振りを付けたものが、日本中の神社で使われて二千年紀の始まりを寿いだ。

 それから百年、浦安は巫女舞の定番になり、千早たちの令和22年に至っているのである。

 奇しくも、千早・挿姉妹の神社は、その名も浦安八幡社。他の神社よりもピッタリで、九尾の街にテレビ局があったころには、浦安神社固有の神楽と勘違いしたプロデューサーが特集番組を企画したほどであった。

 浦安の歌の意味は――世界中が凪いだ海のように平和でありますように――であって、まことに平和ニッポン、自由と人権の九尾市に相応しい。

 しかし、これから姉に替わって浦安を舞わなければならない千早は気が重い。

 素で詠んだら10秒も掛からない浦安。それが神楽舞として舞うと10分ちょっとかかる。そのことでも分かるように、やたらとゆっくりした所作で、とにかく長い。

 今紫の上(いまむらさきのうえ)と呼ばれた姉に比べて、千早の評判はそれほどではない。

 体育会系というほどではないが、子どものころから遊び相手は男の子の方が多く。小学六年でそのヤバさに気が付いた千早は努めて女の子の友だちを増やし、立ち居振る舞いも女ばかりの演劇部に入って改めようとしたが、周って来るのは男役ばかリ。去年の文化祭では『ロミオとジュリエット』をやったのだが、役どころはロミオ。相手役のジュリエットは学校で一番可愛いと評判の男子が客演で呼ばれて、二人ともに大評判になった。

「まあ、人生は長いし、いろんな目に遭った方が面白いぜ!」

 幼なじみの来栖貞治は言ってくれる。

 しかし、貞治も、千早の一大事である『巫女の跡継ぎ』には関心が薄い。

「まあ、ああいうのは宗教的な型なんだから、親父のミサと同じで憶えちまえばなんでもないさ」

 貞治も挿の強いイメージが焼き付いているので、学年はじめの自己紹介を嫌がる友だちを慰める程度にしか言わない。

 ちなみに、貞治は神社の二軒筋向いのキリスト教会の息子である。

 
 天女のそれかと見紛うような姉の浦安が終わって、いよいよ千早の番。

 ヒョォーーーヒョロローーーーーーーー

 神楽笛の調べに合わせ、亀の方が速いだろうという摺り足で中央へ……しかし、微妙に姉よりは速く、中央で直角に曲がるときは油の切れた蝶番のようにギクシャク――しまった!――という気持ちが目元口元に現れる。

 しかし、それは一瞬のことで、すぐに巫女Pフェイス(巫女的ポーカーフェイス)に戻って、正面の八足台まで残り五歩の摺り足。

 グヌヌ……心で歯ぎしりしながらも、祖父の介麻呂が「歌いだす前の山口百恵の顔!」と例える巫女Pフェイスを心がける。

 巫女服なら、優雅に見える摺り足もジーパンのババタレ腰では――いまのあたしはカッコ悪い、お姉ちゃんみたくサマになってないし!――という意識が先に立って自分でも委縮していると思う千早。委縮すると怒ったような顔になるので、ここでは口を挟まない挿。

 そういう姉の気持ちも分かるので、ますます意識して固くなってしまう。

 八足の前に腰を落とす時は、文字通り落すになってしまい、木の床にドスンと座ってしまう。

 一礼して扇を手にして立ち上がり、右足を滑らすと同時に、右手の扇を高々と掲げる。

 プ( ´艸`)

「もう、笑うんなら、最初から停めて言ってくれたらいいでしょ!」

「いや、ごめんごめん。お稚児さんで舞ってたときのこと思い出して」

「あ、あの時はみんな喜んで褒めてくれたし」

「小さかったからね。でも、今の千早、お相撲さんの土俵入りみたい。さ、中央で回って四足台、そこから立って扇を掲げるとこまで。テンポに気を付けて、もう一回」

「う、うん」

 それからも、「力み過ぎ!」「緩み過ぎ!」「見得きるな!」「歌舞伎じゃないぞ!」「指先まで伸ばして!」「ゆっくりと脱力は違う!」「顔が怖い!」と、途中で停めたり、流しながら注意されたり、まだ梅の実も蕾だというのに汗みずくになる千早であった。

「ゼーゼー……(''◇'')ゞ」

「あ、もうこんな時間だ。悪い、お宮参りが入ってるから、一時間休憩」

「お宮参りで巫女舞やんの?」

「うん、天野市長のお兄さん。あそこはいつも昇殿されるし、氏子筆頭でもあるしね。あとでミッチリやるから、動画見て練習しとくのよ」

「う……分かったぁ……」


 拝殿に向かう姉を見送り、台所にスポーツドリンクを取りに行く千早。


 窓から見える九尾丘の空、飛んでいるゼロ戦はレプリカやラジコンを含めて一つも見当たらなかった。

「ああ、終わっちゃったかなぁ……よし!」

 スポーツドリンクにタコ焼きを付けることにした千早であった。


 
☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里           日本で最年少の九尾市市長
天野太郎           明里の兄

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千早 零式勧請戦闘姫 2040・01『ゼロ戦生誕百周年フェスティバル』

2025-01-17 15:01:43 | 不思議の国のアリス

千早 零式勧請戦闘姫 2040  
 01『ゼロ戦生誕百周年フェスティバル』 




 ドォーーン ドォーーン ドドンドン パチパチパチパチパチパチ


 もう少しでたどり着くという丘の上に花火が打ち上げられ、群青の空に綿あめのような白煙がいくつも咲いた。

「ああ、ま、間に合ったぁ……」

「走ったからねぇ……」

「一気に行くぞ!」

「あ、待ってよぉ!」

 なんとか余力を絞って丘の上にたどり着いた貞治(ジョージ)は、幼なじみの千早を急き立てて滑走路に急いだ。

 九尾丘(くびおか)は平たい台形でプリンに似ていて、カラメルシロップが載っているあたりに戦前からの滑走路がある。
 街にはこれとは別に戦前からの空港があるのだが、こちらは自衛隊の航空基地で、自衛隊の記念日でもないと一般に公開されることは無い。

 九尾丘飛行場の滑走路は1500メートルしかなく、せいぜい双発のプロペラ機が離発着できる程度で、日ごろは地元の企業や飛行クラブ、近隣のレシプロ機の中継飛行場として使われている。

 2040年の今年は皇紀二千七百年にあたっていて、100年前に正式採用された零式艦上戦闘機、ゼロ戦生誕百周年フェスティバルが街をあげての記念行事として開かれようとしている。

 そう広くもない飛行場には世界中からラジコンやらレプリカ、それに世界でも数機しか残っていない本物のゼロ戦が展示され、国内はおろか海外からもゼロ戦やレシプロ戦闘機のファンが集まってきている。

 二人が観衆の後ろに混じれた時、この春に当選したばかりの女性市長がクレーン車のバケットに収まってせり上がってきた。

『ようこそみなさん、ゼロ戦生誕100周年フェスティバルにお越しくださってありがとうございます。高いところからではありますが、九尾市市長の天野明里(あまのあかり)が開会のご挨拶をさせていただきます』

 キャー! アカリ! 待ってました! アカリちゃ~ん! アカリ市長! アカリーン!

 陽気な掛け声があちこちから湧いてくる。

 天野明里は、ほんの一昨年までアカリンの愛称で名をはせてきたアイドルで、祖父の天野翔(あまのかける)の引退にともなって出馬して当選した日本最年少の市長である。

『今年は、みなさんご存知の通り、皇紀二千七百年の記念すべき年にあたっています。主に東京でさまざまな記念行事が行われて、あたかも東京のお祭りのようになっていますが。この、九尾市にも大きな意味があります……』

 そこまでで、数千人の観衆、ネットで中継や個人配信の動画を見ている人々には分かった。

 ゼロ戦は試作機のころから愛知の工場で作られた後、各務ヶ原やこの九尾市にある(現在は自衛隊が使っている)飛行場まで運ばれて試験飛行、あるいは配備先の航空基地に送られた。

『ゼロ戦は、三菱の工場を子宮として育まれましたが、その旅立ちは終戦に至るまで、この九尾の飛行場でした。そのゼロ戦の旅立ちを百年後の今日、再び行うことは大変意味深いことであると思います。月面に基地が作られ、人類の火星到達も夢ではない今日、その飛翔の意味は大きく夢のある事に違いありません。九尾市市長天野明里は、ここにゼロ戦生誕100周年フェスティバルの開会を宣言します!』

『市長の開会宣言に続きまして、ゼロ戦隊の展示飛行に移ります。滑走路にご注目ください、まずはAI操縦に寄りますラジコンゼロ戦100機の編隊飛行です!』

 ウィーーーン ウィーーーン ウィーーーン ウィーーーン ウィーーーン

 縮尺1/10のゼロ戦が三機ずつの小編隊になって次々に発進。たちまちのうちに丘の上空で大編隊になって、さまざまに編隊の形を変えて飛行する。

 続いて1/6、1/4、1/3、のゼロ戦が飛び立ち、九尾の上空は二百に近い模型のゼロ戦が飛び回って、雰囲気を盛り上げていく。

「え、本物じゃないの?」

 次に滑走路に現れた三機は、それまでの電気モーターの甲高い音ではなく、轟々としたエンジン音、そしてなによりも、その大きさで、多くの観客は千早同様に本物と思った。

「いや、エンジンが栄の音じゃない……」

『実機に見えていますが、これはウクライナ製のレプリカゼロ戦21型で……』

 次に飛び立ったのは、少し短足で微妙にずんぐりした不器用そうなレプリカ。

「あ、『トラトラトラ!』に出たテキサンレプリカのゼロ戦だ!」

 真打登場の前に興奮マックスの貞治。

 それに引き換え、千早は少し飽きてきて、駐機場の屋台の方に気を取られてきた。

「ああ、やっぱり焼きそばは屋台のに限るわねえ……ソースの焦げる匂いたまら~ん(^_^;)」

「お、次、いよいよ本物だ!」

『いよいよ真打でございます。スミソニアン博物館からお借りいたしました52型、これはエナーシャで発動機を起動させるところから始まります』

 キュウィ~~~~~~ン キュウィ~~~~~~ン

 整備兵に扮したスタッフが、重そうにエナーシャで起動すると、ブルンとうなりを上げてプロペラが回り始め、操縦士が「コンタクトォ!」と叫んで、その回転音は一オクターブ上がって、52型は滑走路に侵入。

 ブォーーーーン!!

 そして一気にブーストをかけて、いつのまにか居なくなったラジコンやレプリカのゼロ戦に変わって九尾丘の空に8の字を描いた。

「さあ、次は着陸! 場所取りに行くぞお!」

「あ、その前に焼きそばぁ! 綿あめも食べたいしい!」

「なに言ってんだ、ゼロ戦が先だぁ!」

「あ、もう~! 貞治ぃ~!」

 滑走路の先を駆ける貞治にシブシブ千早が付いて走り『千早 零式勧請戦闘姫』の物語が始まった。



☆・主な登場人物

八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし)         千早の姉
来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子

 


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!118『名残り雪』

2025-01-16 09:14:36 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
118『名残り雪』 






 四番目のやつは、そっくりだったぞ……浅野拓美に!

 ハッピーハッピークローバー 奇跡のクローバー ♪

 \(^o^♪(^O^♪(^O^♪)^o^)/

 三番が終わって決めポーズ! 

 直後……四人目のそいつは滲んで消えやがった。

「みなさーん! 今、ここにいた子は、HIKARIプロの、わたし達の情熱。そして東京工科大学の司先生の技術によって生み出された、わたしたち三つ葉のクローバー四枚目の葉っぱです。わたしたちとみなさんの情熱や愛情がマックスになったときに現れる、四人目のバーチャルアイドルです!」

 リーダーの萌が宣言しやがる。

「みなさーん、もう一度会いたいですかあ!?」

「うおー!」「ハーイ!」「会いたい、会いたい!」などの声が一斉にした。放送局のコンピューターにも、視聴者の「もう一度会いたい!」というコメントが殺到。

 もう一回! もう一回! もう一回! もう一回! もう一回!!

 もう一回コールが高まる中、そいつは再び現れた……。

「ありがとう、みなさん! みなさんの熱い思いで、もう一度、みなさんに会えることができました。三つ葉のクローバーへのみなさんの愛情がマックスになったとき、それをエネルギーにして、わたしは現れることができます。わたしは四枚目の葉っぱです! 四葉のクローバー! 花言葉は『幸福』です。でも、まだ名前がありません。この《ハッピークローバー》のCDを買っていただくと、命名カードが付いています。どうか、それに素敵な名前を書いて送ってください。素敵な名前付けてもらえるの楽しみにしています。とりあえず四枚目の葉っぱ『幸福』からのお願いでした。じゃ、また皆さんの愛情で会えますように……」

 花言葉『幸福』は両手を胸にあて、優しい笑顔のまま消えていきやがった。

「どう見ても拓美……」

 ため息をつくマユに、密やかに声が掛かったぞ。


 ……マユ、わたしに付いてきて……

 え?


 それは仁和さんだった。返事も待たずに仁和さんはスタジオを出て行った。マユは、引き寄せられるように、そのあとに付いた。

 着いた先は、階段を下りたロビー。そのロビーのガラスの外には、東京の夜景が眼下に広がってやがる。この一年見慣れた東京の夜景が。

 ああ、あのあたりが学校……事務所はあのあたり……なにか、その夜景は、とても懐かしく、愛おしく思えたぞ。


「さあ、こっちへ……」


 仁和さんのガラスの前には、いつの間にかガラスのドアができていた。ノブが付いているんでドアっぽいけど、ガラスはガラス、素通しで夜景が見えている。

 仁和さんがドアを開けると……二十畳ほどの応接室みてえになっている。応接って言っても、あいかわらず外の夜景はそのままに見えてやがる。

「失礼します……」

 そう言って、部屋に入ろうとしたとき、思念が飛び込んできた。


―― 入っちゃダメ! そこは…… ――


 仁和さんがドアを閉めたんで消えちまったけど、それは、オチコボレ天使の雅部利恵っぽい。

「今のは……」

「そう、オチコボレ天使の雅部利恵よ。あの子は立場を超えて、あなたに友情を感じ始めている」

「仁和さん……」

「まだ気がつかないか……あなたの担任よ」

「あ……え、ええ!? サタン先生(⊙∀⊙) !」

「不思議に思わなかった? 人を思い浮かべる時、わたしにだけは『さん』付けしていたろが」

 え、あ……( ゚Д゚)

 ぜんぜん意識してなかったぞ……なんか悔しい(-_-;)。

「そういうところがお前の可愛さだ」

「へへへ……(*´ω`*)」

「フフフ」

 って、なに和んでるんだ!

「では、これを……」

 仁和……サタン先生は空中から、A4の紙を取りだし、マユに渡したぞ。

「追認合格書……」

「まずは、おめでとう。晴れて単位認定……」

「先生、マユは……」

「愛情を持ちすぎてしまったな、この世界に」

「まだやり残したことが……」

「もういい。マユ、おまえは十分に知った。人間は苦悩の果て、様々なものを失って、試練を重ね、傷ついた果てに心を高めていくものだということをな……いろんなことがあったな、拓美の救済も見事だったぞ……」

「あのバーチャルアイドルは……」

「創ったのは人間だ。わたしは時どきマユや拓美がやったことにアクセントを付けて見せただけだ……」

「そうだったのか、よかった……」

「さあ、向こうのドアから、魔界に戻るぞ」

「先生。まだ、やり残したことが……」

「これ以上はダメだ。天使の領域に踏み込んでしまう。マユはあくまでも悪魔なのだからな」

「オヤジ……ギャグですか」

「そういうノリでオサラバしておけ……この期に及んで、そのカチューシャを締め上げたくはないしな」

「わ……分かりました」

「今度は、任務として、この世界に。そのときまでは……な」

「はい」

 サタン先生が小さく頷くと、魔界と現世の狭間の部屋は一瞬で消えちまったぞ。


「消えた……」


 雅部利恵は、美川エルの姿のままガラスの前で小さくため息をつきやがる……ガラスの外、おりから降り出した名残り雪が東京の夜景を滲ませてやがった。



 魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  小悪魔だけどな(≧▢≦)!・第一部……完


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!117『アイドル蒸発!!』

2025-01-15 08:14:06 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
117『アイドル蒸発!!』 





 つづいて、いろんなことが起こったぞ。


 レコード大賞の受賞曲をAKRが感激の内に歌っている間、ほんの一瞬テレビの画面にノイズが走ったぞ!

 それは、マユのアバターから、浅野拓美の霊が抜けていき、マユ本来の魂に入れ替わる瞬間。ほんの0・5秒ほど電磁波が出てよ、中継のカメラに影響を与えたからだ。

 そして、観客席の前、出場者の席から神楽坂の仁科香奈がひっそりと消えたぞ。

 仁科香奈はよ、マユが拓美にアバターを貸して居所が無くなるんで、間に合わせに作ったアバターだ。魂が抜けてしまえば存在できねえ。

 AKRの歌が終わって、ステージに出る途中、香奈の横のポジションのやつが気づいたぞ。

「あれ……香奈……?」

 最初は、気分でも悪くなって席を外したのかと思われた。

 けども、楽屋にも化粧室にも香奈の姿は無くてよ。マネージャーやスタッフ総動員で、ホール中探したが見つからねえ。日付が変わるころには警察に捜索願が出されたぞ。


――アイドル蒸発!!――


 マスコミも年を跨いで一カ月ほどは、特集番組を組んだり大騒ぎになったけど、神楽坂に新メンバーが補充され、梅が堅い蕾をつけるころ、世間は関心を失っていっちまったぞ。

――これでいい――

 マユはそう思った。

――あんたの、やってることって訳分かんない!――

 オチコボレ天使の雅部利恵からは、そんな思念が送られてきたけど、利恵も何かを察しやがったのか、それ以上のことは言ってはこなかったぞ。


「さあ、がんばるんだ。三つ葉のクローバー!」


 黒羽が三人の顔を見ながら言った。

「「「はい!」」」

 萌、知井子、潤、三人の声がそろいやがる。

「萌は愛情、知井子は信仰、潤は希望。そして、三人の想いが一つになったとき、幸福という、四枚目の葉っぱが現れる。稽古通り対応できるように……いいな」

 念を押す黒羽の後ろで、会長の光ミツルが笑ってやがる。


「スタンバイお願いします」


 ADが密やかに声をかけた。三つ葉のクローバーのデビューは、二か月後、坂東テレビの看板歌謡番組「ヒットチャート10」の最後に行われたぞ。

 AKRのメドレーが終わって、スタンバっている三人にカメラが向けられた。


《ハッピークローバー》

 青空に誘われて アテもなく乗ったバスは岬めぐり
 降りたバス停 ぼんやり佇む三人娘

 ジュン! チイコ! モエ! 

 走る岬の先には白い灯台 その足もとに一面のクロ-バー

 諸君! その花言葉は「希望」「信仰」「愛情」の印! 

 チイコがしたり顔してご説明

 茎は地面をはってあっちこっちに根を出して 高さおよそ20cmの茎が立つ草

 茎や葉は無毛 本名はシロツメグサですぞ!

 なんで そんなにくわしいの くわしいの

 いいえ 悔しいの 悔しいの

 だってあいつは それだけ教えて空の彼方よ

 ハッピー ハッピークローバー 四つ葉のクロ-バー
 その花言葉は 幸福 幸福 幸福よ ハッピークローバー

 ハッピー ハッピークローバー 奇跡のクローバー 


 一番が終わって、それは現れやがった……一瞬の決めポーズになった三人の後ろから、そいつが現れた。そして、三つ葉のクローバーは四つ葉になって、曲は二番、三番と続いていくぞ。

「やった! カメラを通しても透けてない!」

 モニターを見ながら司準教授はガッツポーズ。

「本番中よ」

 横の仁和明宏が、頬笑みながらたしなめた。

 驚いたぞ。

 四番目のそいつ、そっくりだ……あの浅野拓美によ! 



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!116『レコード大賞』

2025-01-14 09:54:06 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
116『レコード大賞』 





 史上初! レコード大賞に三組目の新人賞( ゚Д゚)!!

 受賞者はもちろん、観客もテレビの視聴者も、ネットでながら見してるやつらも、日本中、世界中のやつらがビックリしやがったぜ!

 思いもかけない『神楽坂24』が、その三つ目の新人賞でよ、その興奮がまだまだ冷めねえっていうのに、大賞の発表になったぞ!

 ダラララララララララララララララララ(^^♪

 陽気なドラムロールに続いて、ファンファーレが鳴り響くぜ!

 パンパカパンパンパーーーン(^▽^)!!

「本年度の栄えあるレコード大賞は…………AKR47のみなさんが歌った《GACHI》に決しました!」

 ウワァーーーーーー(*^▢^*)!!

 会場は歓声に包まれ、AKRのメンバーは、それぞれの想いや感動を胸に舞台に上がったぞ。みんなうれし涙、萌とか知井子は涙と鼻水でグチャグチャ(^_^;) 最年長の服部八重も口と拳をギュっと結んでやがる。

 敵のルリ子も受賞者席で目を潤ませて、天使の利恵でさえ――こういうのも悪くない――なんて方頬で笑ってやがる。

 最後までポーカーフェイスだった大石クララも表彰状をもらった瞬間にドッとうれし涙が溢れてきやがって、それを拭いもせずに会場のみんなに高く掲げて見せた瞬間、会場は感激と興奮のルツボになっちまった。
 その歓声と拍手はクララが立ち眩みでグラっと揺れて、賞状を握ったクララの拳が知井子の頭を打って、知井子が「アイテ!」と目をXXにして会場の全員が爆笑するまで続きやがった。

 舞台袖じゃポーカーフェイスを決め込んでる小柄なジジイ、光ミツル会長が一人静かに感動してやがる。
 春に作ったAKRが新人賞をとっただけでもすごいのに、レコード大賞までとっちまったんだ。塩を送ってやったカタキも新人賞を取ったしな。

 こういうジジイは『みんな俺ががいたからこそ』と己惚れるもんだ。

 でもよ、光ミツルの心には、意外に素直な感謝の気持ちが溢れていたぞ。

 この曲の発表の日に、AKRは新生オモクロと対決した。引き分けに終わったが、その陰には黒羽Dの懸命の努力があった。

 オモクロとは、ヒットチャートの順位が毎週入れ替わるようなデッドヒートをくり返した。一時期はオモクロ分裂と騒がれたオモクロ・E残グミが、急速に力を伸ばし、アイドルグル-プの第三極になり、そちらからの攻勢もうけた。起死回生を狙って作った《GACHI》は、歌も振りも、かなり難しい曲で、新メンバーの小野寺潤が倒れる事態にもなった。よくここまで来られたと、感慨ひとしおだったぞ。

 その黒羽Dの頭には、曲の発表を見届け逝ってしまった美優の姿があったぞ。

 小野寺潤は、死の淵から奇跡の回復、そして晴れの舞台に立てた喜びとマユへの感謝が。

 リーダーの大石クララは、光ミツル会長と同じような、激戦を勝ち抜いてきた想いとみんなへの感謝が。

 オモクロの吉良ルリ子でさえ感動してやがる。この夏までは、東城学院でスケバンを気取っていただけの、ただのスネた女子高生でしかなかった。それが今ではオモクロのセンターを張って、いっぱしのアイドルになってやがる。

 桃畑加奈子は、神楽坂24として成功した喜びとともに、途中で脱落せざるを得なかった仲間たちの顔が浮かんだ。

 そして、舞台では、AKR47の選抜メンバーたちが、歌い踊っていた。


《GACHI》

 キミはいつでもGACHI ボクのことなど頭の隅にもない
 やるだけやったそのあとで キミの瞳の残像になれればいい……

 分かっていても 分からなくても
 キミに気づかれなくてもいい by the way

 まっすぐ まっすぐ進んでいけ
 想いを溢れさせよう Go a hed!

 顔を風上に向けろ 倒れるぐらいに前のめりになれ

 戦いの力と愛 自分一人が進むんじゃないけど
 戦いの力をわかっているのか? とにかく自分が前に進め

 みんなの為にジャなんかじゃなく
 キミが進んでいくことで やがてみんな気が付くんだ You see?

 そしてキミが進んだ道 それをだれかが乗り越える Any way!
走りすぎるキミの瞳

 その瞳の奥の残像になれればいい
 キミもボクも いつかは誰かの残像になるんだ

 Gachi… Gachi…Gachi!


 今年も残すところあと一日、大晦日を残すだけ。きっと来年はいい年になると、日本中が、ネットで観ている世界中のやつらが、閻魔大王と仕事納めの乾杯をしている悪魔の先輩たちさえ思ってやがるだろ。

 天国の神々は「我々の助けも無しに……」と悔しがってるだろうけど、天使の奴らは無邪気に喜んでやがる。天国にこういう影響を与えたのは利恵のイッチョカミ、ほんのちょっとだけだけどな。関わったことが大きかったんだと思うぜ。来年も勝負は続くんだろうなあ……ク……不覚にもマユも感動してるし(;'∀')。


 そして、一人だけ、静かに別の覚悟を決めた奴がいやがる。


 マユのアバターに入った浅野拓美は、歌いながら感じた。マユとしての体は高揚感と達成感で躍動し輝いていつ。しかし拓美自身は、ひどく透き通って落ち着いた気持ちになってやがる。

――よくやった、これで十分。ありがとうマユ、クララ、潤、そしてAKRのみんな……――

 そして、三番を歌い終わり最後のリフレインになった……。


 キミはいつでもGACHI ボクのことなど頭の隅にもない
 やるだけやったそのあとで キミの瞳の残像になれればいい……


 踊る自分の姿が残像のようにダブってきた。そして、アバターの本来の主であるマユのスピリットが入ってくるのが分かった。

――拓美、いいのか……おめえ、昇天しちまうぞ――

――なんだか潮時みたい。昇天しちゃうのは私の意思じゃないけど、もう、これでいいと思う――

――拓美……――

――事務所の屋上で、マユが、このアバターを貸してくれた。あの時の執着心がもうないの。やりたいことはやれたみたい。潤みたいな後輩も育ってきたし、いつまでも幽霊がこんなことしていちゃいけないんだわ……――

――拓美……!――

 歌い終わって決めポーズになったとき、マユのアバターの中味は完全に入れ替わって本来のマユに戻っていたぞ。

 マユの目には見えたぞ……観客席の通路を拓美の霊が出口へ向かって歩いていくのが。薄くなっていくその姿が、最後に振り返った。その顔は満面の笑みを浮かべ、その刹那光って消えちまった。
 
 マユは、涙が止まらなかったぞ。観客もメンバーも、その涙を大賞受賞の涙だと思っていやがったけどな……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  


 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!115『三つ目の新人賞』

2025-01-13 17:50:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
115『三つ目の新人賞』 





 本年度のレコード大賞新人賞は、もう一組ございます!

 ええ? なんで? もう一組って? もう二組選ばれてるのに!? 三組目? こんなの初めて! いや、 どういうこと!? おもしろい!

 会場の新国立劇場は意外のささやきが、さざ波のように広がったぞ。

 今年の新人賞は、AKRと新人賞のオモクロがノミネートされよ。その通りに、たった今発表が行われたところだ。それが、異例にもっちゅうか、レコ大史上初めて、三組目の新人賞の発表になっちまってよ。会場のざわめきも無理はねえ!

「例年、新人賞を受けた人たちのなかから、一組の最優秀新人賞が選ばれますが、今年は、審査員一同の意向により見送ることとなりました。その代わりと申してはなんですが、もう一組の新人賞を選ぶことになりました。それでは発表いたします……」

 ダラララララララララララララララララ(^^♪

 司会の堺利彦が、審査結果の封を切る間にドラムロールが鳴り響いて、会場は暖かい緊張感につつまれたぞ。

「本年度、三番目の新人賞は、この秋に、彗星の如く現れ、居並ぶライバルと見事に肩ををならべ、新曲『東京タワー』で、躍り出た「神楽坂24」のみなさんです!」

 キャーー! ウワァーー! パチパチパチ!!

 リーダーの桃畑加奈子を先頭に、メンバー二十四人と、プロデューサーの別所がステージに上がった。審査員席では、審査員の仁和明宏も暖かく拍手をしてやがるぞ!

 仁科香奈のアバターの中でマユは気づいていたぜ。

――仁和さんの押し、でも、それだけの力も勢いもあったしな♫――

「わたしたちは、この秋にオモクロのユニット『オモクロ・E残グミ』として発足いたしました。その陰では、オモクロの上杉プロディユーサーや、別所プロディユーサー、そして関係のみなさんの暖かい励ましがあって、この秋に『神楽坂24』として発足したばかりです。そんなところで、AKRさんや、オモクロさんと肩を並べて新人賞をいただけるなんて、嬉しい前に怖ろしいような気がします……」
 
 加奈子の胸には、オモクロの発足メンバーとしてがんばったこと。やっと軌道に乗りかけた頃、吉良ルリ子や安藤美紀、美川エルたちに乗っ取られるようにして、『E残グミ』として事実上の二軍落ちしたこと。そして父、高峯純一との和解、アイドルグループの第三極としての『神楽坂24』の再出発。そして、今回の思いもしない新人賞……まるで戦い疲れて、帰国し、大統領から勲章をもらった兵士のような気持ちだったぜ。

 実際、初期の『おもしろクローバー』のころから、脱落していった仲間も少なくねえしな。

 観客席で、娘の晴れ姿を見守ってる往年の名俳優高峯純一の胸には、終戦後、負傷兵として復員し、俳優の道を真っ当できなかった父、また自身撮影中の事故で、父同様に道半ばで俳優を辞めなければならなかった自分の想いが重なった。

 俳優としての嫉妬心から、娘の芸能活動を素直に応援してやれず、それどころか、生き霊に成り果て、その邪魔をした醜い自分。しかし、娘の桃畑加奈子は、『神楽坂24』の芸術顧問の席を用意してくれた。

「それでは、新人賞『神楽坂24』のみなさんに歌っていただきます。作詞:高峯純一、作曲:塩田隆一『東京タワー』です!」


《東京タワー》

 キミと登った東京タワー スカイツリーもいいけれど キミとボクには程よい高さだよ

 二人そろって 高所恐怖症 二人に程よい距離だった

 神谷町駅徒歩7分 見上げた姿は333メーター 赤白姿のストライプ
 ボクの心もストライプ 告白しようか止めようか

 太陽背にした東京タワー 焦らすねボクの心を 神谷町から7分に高まるテンションさ

 キミはスキップ、一歩先 それがとても遠く愛おしく

 やっと踏んだキミの影 はじけた笑顔眩しくて 赤白姿のストライプ

 ボクをせかせてストライプ やっと追いつき照れ笑い

 ああ 東京タワー ああ 東京タワー ああ ああ 東京タワー


 そう、元の詞は加奈子だけれど、詞の構想を膨らませてくれたのは「お父さんだよ」と、作詞の名誉を与えてくれた。歌う加奈子の目にも、父、高峯純一の目にも光るものがありやがったぞ。

――どう、天使が、ちょっと手を出せば、こんなにみんながハッピーになれんのよ!――

 美川エルのアバターに入っているオチコボレ天使・雅部利恵の思念が飛び込んできやがった。

――あのなあ、おめえのお節介の修正でどれだけマユが苦労したか……!――

 やっぱし、売り言葉に買い言葉になっちまう!

 バチバチバチ!

 二人の思念は、劇場の中でスパークしたけどよ、みんな演出効果だと思って不思議には思わなかった。

 そして、いよいよレコード大賞の発表の時が迫ってきたぞ……!



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!114『潤の復帰と重大発表』

2025-01-13 17:41:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  小悪魔だけどな(≧▢≦)!
114『潤の復帰と重大発表』          




 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 みんなが拍手で迎えてくれやがる(^_^;)。

 事務所の前からスタジオまで、メンバーやスタッフのやつらが笑顔で並んでやがる。たかが研究生上がりの復帰とは思えねえほどのマスコミのやつらも集まって、事務所のビルに入るのも一苦労だぜ。

「潤、おかえり! 復帰おめでとう!」

 リーダーのクララが花輪と激励の言葉をかけやがる。いっそう高まるみんなの拍手。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!

「さあ、ちょっと忙しいが、今から記者会見だ。潤、スタジオへ」

 黒羽Dが、スタジオのドアを開けると、各社を代表する芸能記者やレポーター。あちこちでフラッシュ! 何台ものカメラが、驚く潤にレンズを向けてきやがる!

「みなさん、ほんとうにありがとうございました……」

 復帰の挨拶と会見は、ほんの十分ほどで終わった。

 ちょっと拍子抜けがしたぞ。

「では、ここから、AKRから枝分かれする新ユニットの発表をさせていただきます」

 黒羽が宣言すると、「おかえり、潤!」の横断幕がハラリとめくれて、新しいのが現れたぞ。

『新ユニット 三つ葉のクローバー結成発表!!』

「さあ、知井子、萌、前へ! あ、潤はそのままで」

「え? あ、キヤ(><)!」

 戻りかけた潤が、黒羽の制止でずっこけ、また笑われた。

「わたし……居ていいんですか?」

「潤もメンバーの一人だよ」

「え、うそ……!」

「改めて紹介します。三つ葉のクローバー、小野寺潤・桜井知井子・矢頭萌の三人です。ちなみに、このユニットにはセンターもリーダーもいません。名前の順番は、単なるアイウエオ順です。デビュー曲は決まっていますが、まだ発表はいたしません。なんせメンバーの潤など、たった今、知ったばかりですから」

 潤が顔を赤くし、みんなが暖かく笑った。

「この子達は、AKRでも、とびきり優秀……というわけでもありません」

 プ( ´艸`)

 また、笑いが起こりかけるけど、さすがに話が核心に入ってきたのを察して、みんなこらえやがる。

「AKRを花畑に例えれば、この三人は、ありふれた三つ葉のクローバーです。でも、三つ葉のクローバーというのは、人から注目されることもなく、路ばたで踏みつけにさえされます。そうやって傷ついたところから……むつかしい言葉では成長点といいますが、そこから、新しい四枚目の葉っぱが生まれて四つ葉のクロ-バーになります。そういう可能性を秘めた意味をこめて『三つ葉のクローバー』というユニット名にしました。この三人は、経験の浅い者や、ドンクサイ者たちです」

 ププ(*≧艸≦)

 またまた笑いをこらえ、中には盛大に鼻水を噴き出す奴もいやがるぜ!

「しかし、その分、他の者たちよりも苦労はしております。挫折も経験しております。心身共に。なあ潤」

「あ、はい。一時は心臓止まりかけました! で、でも、先輩のみなさんが一生懸命助けて……あ、マユ先輩。帰ってからのお楽しみって、このことだったんですね!?」

 ニャハハハ(o´罒`o)

「三人に、それぞれハンドルネームを与えます。マユ、よろしく」

 リーダーのクララが指名してきやがって。マユ(拓美)は色紙を持って前に出てきたぞ。

「潤は『希望』、奇跡の復活はAKRの希望。知井子は『信仰』……友情というAKRの信仰。萌は『愛情』ファンのみなさんや、仲間への愛情」

 マユ(拓美)は、色紙を三人に渡した。思いの外ヘタクソナ字だったぞ。

「なお、色紙を書いたのは、うちの会長です」

 オオ!?

 いろんな驚きやら思いのこもったどよめきが起こりかけたけど、当の会長は様子が変だ。

 スマホに深々と頭を下げたかと思うと、ガッツポーズのままジャンプしやがった!

「今、新しいニュースが入ってきたぞ!」

 え?

「たった今、AKRが、レコード大賞にノミネートされたぞ!」



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!113『ハッピークローバー』

2025-01-13 17:38:43 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  小悪魔だけどな(≧▢≦)!

113『ハッピークローバー』          




 
「もう、あの曲は歌えるようになってる?」

「そうだ聴きたい! 教授、さっそく聴かせてもらえませんか!?」

「自分はまだ准教授ですよ」

「いや、これをここまでにしたんだ、教授でなきゃいかん!」

「ちょ、どこに行くのよミツル!?」

「学長に掛け合ってくる、司博士を教授にしろって!」

「アハハ、まずは聴いていただきましょう(^_^;)」

「もう、ジッとしてなさい!」

「す、すまん(;'∀')」

 新しいオモチャを見せられた子どもみてえな会長に笑ってしまう二人だけど、実直な博士はすぐに真顔に戻って続けたぞ。

「ボ-カロイドとしては完成してます。ミクの十倍はすごいですよ。どうぞ、ここをクリックすると歌います」

「じゃあ、さっそく!」

「ミツルが触ると壊しちゃう。わたしが……」

 仁和が笑顔でクリックすると、そいつはゆっくりと顔を上げて笑顔で歌い始めたぞ!



 《ハッピークローバー》

 もったいないほどの青空に白い雲。アテもなく乗ったバスは岬をめぐり
 雲よりも白い灯台に心引かれて 降りたバス停 ぼんやり佇む三人娘

 ジュン チイコ モエ 訳もなく走り出した岬の先に白い灯台 その足もとに一面のクロ-バー
 これはシロツメクサって チイコがしたり顔してご説明

 諸君、クローバーの花言葉は「希望」「信仰」「愛情」の標だぞ 
 茎は地面を這って あっちこちから根を出して20cmの茎が立つ草で茎や葉は無毛ですぞ

 なんで、そんなにくわしいの くわしいの

 いいえ 悔しいの だってあいつは それだけ教えて海の彼方よ

 ハッピー ハッピークローバー 四つ葉のクロ-バー
 その花言葉は 幸福 幸福 幸福よ ハッピークローバー

 四枚目のハッピー葉っぱは、傷つくことで生まれるの 
 踏まれて ひしゃげて 傷つき ムチャクチャになって 生まれるの 生まれるの 
  
 そうよ あいつはわたしを傷つけて わたしは生まれたの 生まれ変わったの 

 ハッピー ハッピークローバー 奇跡のクローバー 


「いい声だぁ……元気で艶があって、チャーミングで……」

「それでいて、どこか大人で、奥行きの向こうにペーソスを感じさせる……」

 光会長と黒羽ディレクターは、ため息をついた。

「で、この子は、いつ発表したらいいのかい?」

「それは……わたしも、まだ分からない。まずは48番目の子自身のことが、なんとかならなきゃ」


 
「……マユさん、香奈さん、少し疲れてません」

「そーお?」

「ハハ、病人に言われちゃ世話無いよね」

 拓美は、限界まで潤にエネルギーをやったこともあるけれど、実際疲れてやがった。

 潤は医者の予想を超える回復ぶり。それが嬉しくて、今日も拓美と示し合わせて病院に来てるぞ。

 あれから紅白歌合戦への出場も決まった。オモクロも神楽坂もいっしょだ。少女グループ全盛と言っても早すぎる。カラオケボックスで死ぬほど歌って、こう言ってやったぞ。

――元は、拓美、あんたが頑張りすぎたから。でしょ、拓美が頑張らなきゃ仁科香奈なんて存在もしなかった。オモクロもあんなにヒットしなかっただろうし、神楽坂だってできてないわ。みんな、あんたのとばっち……――

 仁科香奈でいるときは小悪魔弁はひかえてる。慣れてきたけど、たまに舌噛みそうになるぜ。じっさい噛んだし!

――どうかした?――

――舌噛んだぁ、拓美のせいだ!――

――あ、ちょ、なにすんのぉ!――

 頭をクシャクシャにしてやったら、二人とも涙が出てきちまってよ、それを思い出しかけちまった。

「レコード大賞……新人賞はもらえますよ」

「さ、どうだろ。オモクロも神楽坂もがんばってるからね」

 そのとき、ドクターが病室に入ってきた。

「結果が出たよ、明後日退院してもいい。それにしても奇跡的な回復ぶりだなあ!」

「あ、ありがとうございます!」

「礼を言うなら、自分の体力と運だね」

 潤も拓美も、花が咲いたように明るい笑顔になった。

――これでいいんだ――

「わたし、復帰したら《GACHI》がんばりますからね!」

「お、オヤジギャグ!」

「ちがいますよ。たまたま、新曲が《GACHI》だし、気持ちもガチだし!」

「で、復帰したら、もう一つあるわよ」

「え、なんですか!?」

「それは、復帰してのお楽しみ」

「もう、先輩って、意地悪!」

「ハハ、これくらいの楽しみがなきゃ、助けた意味がない!」

 退院間近の病室は、明るい笑い声に満ちたぞ……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!1112『拓美とカラオケ』

2025-01-13 17:29:41 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  小悪魔だけどな(≧▢≦)!

112『拓美とカラオケ』   




「で、本当なのかい、このAKRが……」

 トランプが仁和のポーチに収まると光会長が顔を上げたぞ。

「ええ、もう一人いる」

「それを足して四つ葉のクローバーに?」

「いずれはね……」

 紅茶の香りを楽しみながら続ける仁和。黒羽と光会長は、お香と紅茶の香りが混ざって半分夢を見ているような気持ちになってやがる。

「仁和さんは、どこで気づかれたんですか?」

「神楽坂のプロモを撮っているときにね、体と魂が合ってない子がいて……錯覚かとも思ったんだけど、ここに来て確信になったの」

 仁和は、壁にかけてあるメンバーの写真の一つを見つめる。その視線の先には出昼マユの笑顔の写真。

 ウウ、なんだか写真を通してマユの実体を見られてるみてえで、思わずクシャミが出ちまった。


 ヘクチ(>△<)!


「ごめん、待たせちゃった」

「ううん、わたしも今来たところだから」

 千代田線A駅前で、久々に拓美と待ち合わせ。

 拓美はAKRの出昼マユ、マユはアバターの仁科香奈の姿。ややこしいから、ここからは中味の魂の名前でいくぞ。

 二人は、駅近のカラオケの個室に収まった。ここなら、二人だけで話ができるからな。

「わたし、なんだか変なの……」

 ブルゾンも脱がずに拓美がポツンとこぼす。

「どんなふうに?」

「……潤を助けながら、感じたの……わたしってば、何がしたいのかって」

「それはさ……」

「うん?」

「ええと……アイドルになって自分を表現すること……的な?」

「うん、だから……マユの体を借りてここまでこられたんだけどね」

「……わたしも、行きがかり上、アイドルになっちゃったけど……ま、ドリンクでも飲みながら話そうか」

「え、あ、そうね。熱いのがいいわね」

 拓美もやっとブルゾンを脱いで、二人でドリンクを取りに行く。

 ホットチョコかカフェオレか、それともミルクティーかと迷って、やっと調子が戻りかけ、トレーに載せたドリンクを「おっと」とか「ちょ、ヤバ」とか言いながら個室に戻ると少しは普通に喋れるようになったぞ。

「わたし、本当は幽霊でしょ。それをマユに無理言ってアバター借りちゃってさ……最初は、レッスンの時や本番のとき、AKRとして活動するときだけ貸してもらうって約束だったじゃない」

「そんなことなら気にしないでよ。わたしも仁科香奈ってアバターが気に入ってるし。なにより魔界の補習受けなくてすんでるし(´>ω∂`)」

「ありがとう……でも、時々だけど、とても不自然な気になることがある。わたしは、とっくにあの世に逝って、もし、あるんだとしたら、そこで次に生まれ変わる準備をしなくちゃならないんじゃないかって……アツ!」

 飲みかけのホットチョコ、薄皮の下が熱くて目を✕にする拓美。

 目と目が合ってマユは続けたぞ。

「気にしすぎ。もし、わたしたちの入れ違いが間違っていたら、サタンやミカエルとかの悪魔やら天使のエライさんが黙ってない。わたしが補習サボるためだけに、こんな状況が許されたりしないわよ」

「う、うん……」

「悪魔はウソはつかないわ。さあさあ、そんな不景気な顔してないで。景気よく歌いまくろうよ、せっかくカラオケにきたんだからさ」

 ここは、言葉じゃなくて勢いだと思ったぞ。

「う、うん。そうだね」

「そう、なるようになるって!」

 で、二人は、アイドルにあるまじく、十曲あまりを熱唱して、喉をつぶしちまった……(^_^;)。


「ほう……良くできている!」


 光会長が、歓声を上げた。

「まるで、実在してるみたいだ……」

 黒羽も感心して、写メってみやがる。

「あ……写メると、体が透けて見える」

「そう、そこが最後の改善点です」

 司準教授が腕を組んだ。

「ルックスも少し手を加えて欲しいかなあ」

 仁和が注文をつける。

 ここは、T大学情報工学部の研究室。三人は、司準教授が作った3Dのバーチャルアイドルのプロトタイプを見に来たところだったぞ。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
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浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!111『エキストラジョーカー』

2025-01-09 09:41:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
111『エキストラジョーカー』 




「本当なのかい、このAKR47が本当は48だって」


「ええ、たしかよ。おそらくオーディションの段階まではね、48人いた……」

 仁和は、あとの言葉を、たゆとう香の芳しさに滲ませやがった。

「ちょっと、トランプをやってみましょう。簡単に勝負のつくババ抜きよ」

 慣れた手つきで、カードをシャッフルし、手早く仁和はカードを配った。

「トランプは、ダイヤ、ハート、クラブ、スペードの四種類で、それぞれ春夏秋冬を現してるの、で、それぞれ1~13まで。足すと91。で、4をかけると……」

「364……ですね」

 黒羽が暗算して、光会長に札をひかせた。ジョ-カーを引いたみてえで、渋い顔になりやがる。

「ホホ、ミツルくんは分かり易いわね。今のジョーカーでしょ」

「知らん(>o<)!」

「364は一年を表すわ」

「一年は365だろ」

「ジョ-カーを加えると」

「365ですね」

「ジョーカーは二枚あるのよ」

「ああ、エキストラジョーカーだろ」

「あ、なるほど。普通のゲームじゃ使いませんね」

「そう、ジョーカー二枚で閏年。考えた人って、偉いわね」

 光会長は、仁和にジョーカーを掴ませそこなった。

「で、ダイヤは春、ハートは夏、クラブは秋、スペードが冬と四季まで表現して……」

 と、仁和がウンチクをたれているうちにババ抜きは終わった。

「ちょっと変だぞ。ジョーカーとスペードの4が残っちまった」

 光会長が不足を言った。

「そう、最初から、クロ-バーの4が抜いてあるから」

 仁和が、手品のようにクラブの4を出した。

「ずるいよ、これは」

「……これが、仁和さんの謎かけですね」

「そう、最後に気づくの、一枚足りないって」

「ぼくは、途中で気づきました、捨てられた札にも、回ってくる札にもクラブの4が見あたらなかった」

「さすがは黒羽くん。わたしもいっしょ。途中で一人足りないことに気づいた……最初は神楽坂24のプロモの撮影だった。ひとり人間じゃない子が混じっていた……けしてワルサをするような者じゃなかったけど。で、オモクロに念を飛ばしてみたら、そこにも一人。これもワルサはしないわ。そしてAKRを調べたら、すぐに分かった。人の魂は持っているけど、人の体じゃない子がいることが」

「で、それは、いったい誰なんだ?」

「それは言えないわ。とてもデリケートで、切ないことだから」

「じゃ、なぜ分かったんだ。それぐらいは教えてくれよ」

「光クンって、偶数が好きでしょ。芸名だって、奇数から偶数にしたし、フォークやってたころも四人グループだったでしょ」

「そうか、47の奇数、ちょっと変ですよね」

「……そう言えば」

 光会長がアゴを撫でた。

「で、とりあえずクロ-バーの4をめざすの」

「あの、クラブじゃないんですか?」

「クローバーと言っても間違いじゃない。まあ、動き出したから、上手くいくわよ」

 仁和が、クラブの4をクルリと回すと、3に変わった。しかしクラブの三つ葉は有りえねえ四つ葉に変わっていたぜ。


 マユのアバターに入った拓美は、みるみるうちに歌も振りも上手くなってよ、ついてこられねえ奴らの指導をするまでになったぞ。そんで、だれ言うともなく、AKRはリーダーが二人になった。大石クララと出昼マユ。

 むろん、マユの中身は浅野拓美だけどな。

 拓美の毎日は充実していた。でもよ、もどかしさとも違和感とも言えねえ気持ちが膨らんできやがる。なんだかジョーカー二枚のトランプみてえでよ。

 拓美は、本物のマユである仁科香奈に無性に会ってみたくなってきやがった……。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
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浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!110『ミツル会長の発表』

2025-01-08 08:17:07 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
110『ミツル会長の発表』 




 一時危篤に陥った潤だったけどよ、懸命な治療と仲間の祈りが通じて一命をとりとめた……ということになってる。

 だけどよ、実際は拓美と話したことで頭上に迫っていたあの世を免れたってのは知っての通りだぜ。

 それからは回復も早くてよ、四日目には、ベッドに身を起こしてみんなと話ができるようになったぞ。


――AKR、仲間を救う命の連携!――


 特に拓美の処置が絶賛されてよ、潤の両親からも涙々の感謝、マスコミからも賞賛を受けた。ネットでも『AKRの奇跡』がトレンド入りしたぞ。

 ただし、アバターの出昼マユとしてな(^_^;)。

「はい、みんな、こっち向いて!」

「「「「「「はーい!」」」」」」

 ベッドの潤を真ん中に、入れるだけのメンバーが入って写真が撮られ、カメラが回ったぞ。

 十分という時間制限で取材を許されたんだ。

「時間がないので、自分が決定を言います」

 会長の光ミツルがメンバーの後ろから手を上げた。

「実際の活動は、退院後の復帰からになりますが、潤を加えた新ユニットを結成します」

 ウワァーーー(((((((( ゚Д゚))))))))!

 病室のみんなから、歓声があがったぞ。

「ユニットの名前は『三つ葉のクローバー』です」

 え?

 黒羽ディレクターが続けると、ょっとズッコケたぜ。

 ちょっと平凡というかインパクトがねえ……。


「平凡すぎやしませんか?」


 面会時間はあっという間に過ぎちまって、事務所に場所を移した記者会見。

 ベテランの芸能レポーターが声を上げたぞ。

「平凡だからです」

「え?」

「ちなみに、他のメンバーは、桜井知井子、矢頭萌。合計三人のユニットです。AKRの中でも、平均的な力の三人です。三つ葉のクロ-バーのように平凡だが、可憐で可能性を秘めています」

「将来、力がついたら、四つ葉のクローバーと改名することを宣言しておきます」

 ミツル会長と黒羽Dが説明すると「なるほどぉ~」って声が上がったぜ。

「なお、デビュー曲の作詞は、仁和明宏さんにお願いして、快諾を得ております」

「え、二和さん?」

「現在、申し上げられるのは、ここまでです」

「もっと詳しくお願いしますよ!」

 レポーターどもが食い下がる。

「できたら説明しますがね。わたし達も、まだここまでしか決めてないんです」

「あとは、そこでびっくりしている、知井子と萌に聞いてやってくれ」

 そう二人に振って、会長と黒羽Dは会長室に向かったぞ。


――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――


 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになっている。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出した。

「あいかわらず、こんなので遊んでるのね」

 仁和が風に髪をなぶらせながら背中で言ったぞ。

「あんたから電話をもらってタマゲタよ。かれこれ二十年ぶりだもんな」

「そうね、黒羽クンが、まだ駆け出しのADだったもんね」

「とりあえず、仁和さんの言うとおりにやったけど、これでいいんだな?」

「ええ、取り越し苦労かもしれないけど、みんなの役に立てればって、そう思って」

「しかし、いいんですか。仁和さんはオモクロとも専属の契約なさってたんじゃ……」

 黒羽がADのころみてえに、お茶を淹れながら聞きやがる。いろいろ自分たちのことを考えてくれてる大人たちに、感謝の気持ちが湧いてくるマユ(拓美)だ。思わず――ありがとうございます――と手を合わせやがったぜ。

 自分が新ユニットに入ぇってるわけでもねえのにな(^_^;)。

「ハハ、ミツルクンも、敵に塩を送ってるじゃない。オモクロとか、神楽坂とかに」

「ハハ、敵も適当に強くなってもらわなきゃ、面白くないからな」

「あいかわらずねぇ。でも、わたしのは、もっと真面目。人の魂に関わることだから……おや、茶柱が立ってる」

「あ、俺も」「僕もです」

「ふふ……なにか伝わったのかもね」

 そう言って、仁和さんは、おもむろに香をたき始めたぞ。

「で、本当なのかい、このAKRが……」

 拓美には、そこまでしか聞き取れなかった。仁和の香が結界になって、感じ取ることができなくなっちまったんだ。

 しかし、会長室の三人からは悪意めいたものは感じなかった。それどころか、暖かいいたわりの気持ちさえ感じられた。そして、そのいたわりは、入院中の潤に向けてのものだけじゃねえことも気づいたぞ……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
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指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
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西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
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黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
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浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
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矢藤 絵萌    オーディションの受験生
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!109『さまよえる潤と拓美のレクチャー』

2025-01-07 08:25:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
109『さまよえる潤と拓美のレクチャー』 





 潤が、困ったような、すがりつくような目を向けてきやがる……拓美は、一呼吸すると決心して語り始めやがったぞ。

「わたし……マユじゃないの」

「え……?」

「だから……」
 
 あとの言葉が続かねえ。

 これを言ったら拓美は、もうマユのアバターの中には居られないような気がしてんだ。

 通風口のスリットを通して、病院の微かな日常音が聞こえてきやがる。患者や病院関係者の足音、密やかな話し声、ストレッチャーや車椅子の音、それは現実の時間が確実に流れていることを拓美につきつけてきやがる。

「わたしは浅野拓美っていうの、幽霊よ……」

「え……?」

「わたし、AKRの最終オーディションの前に交通事故で死んだの。でも、死んだことに気づかなくて、最終選考のオーディションまで来てしまって……そこで、マユに見破られてしまって、やっと自分が死んでいることに気づいたの……まだ、驚かないでね、話は、まだまだ半分なんだから」

 どう受け止めていいか分からずに、潤は動揺した目で、拓美を見てやがる。

「マユって子は……特殊な能力があって、それに気づいて見破ったの。で……一度は諦めたんだけど……諦めるって、あの世に逝くってことだけどね。わたし、どうしてもアイドルになりたかった。自分の力と運を試したかった。そうしたらマユは、自分の……この体を貸してくれたの」

「し、信じられません。マユさんは、クララさんなんかと同じ一期生で、わたしたちの憧れでした。急に別人だなんて……」

「わたしの本当の姿を見せてあげる」

 拓美が、部屋の姿見を指差した……そこには、マユのアバターではなく、拓美本来の姿が映っていた。

「こ、これが拓美さん……」

「そう、AKRは、本当は48人。わたしに関する記憶は、マユが全て消し去って、わたしに、この体を貸してくれた。だからAKRは47なのよ」

 潤は姿見の拓美本来の姿と、マユのアバターに入った拓美の姿を見比べやがった。

「拓美さん、本来の姿の方が可愛い……」

 ヘクチ(><)

 遠く離れた神楽坂のスタジオで、仁科香奈のマユはクシャミをしちまった。

「アハハハ(^_^;)」

「……でも、マユ……拓美さん、どうして、こんな話してくれたんですか?」

「なにか刺激的な話をして引き留めておかないと、潤は、向こうへ逝ってしまいそうだから」
 
 潤は初めて気がつきやがった。

 自分の頭の上に、かすかな光の渦が来ていて、そこに引き込まれつつあることによ……放っておけば光を慕って屋上に出て、その渦の中にまきこまれちまったであろうことをな。

「わたし、死ぬところだったんですね(;'∀')」

「そう……あの光の渦に飲み込まれてね。そうじゃなきゃ、わたしみたいに、死んだことも自覚しないで、この世をさまよっていたわ」

「あ、ありがとうございます(-_-;)」

「いいのいいの(^_^;)、これで潤は死なずにすむ。念のため、このアバターの力を少し分けてあげるわね……」
 
 拓美は、自分の胸に手をやると、ピンポン玉ほどの光の玉を潤の胸に押し当てやがる。潤はホワっと体が温まるのを感じたぞ。

 頭の上の光の渦は、小さく遠くなっていってしまったぞ。

「もうこれで潤は生き返る。さあ、自分の体に戻りなさい」

「はい」

「それと……わたしが拓美だってことは、しばらく黙っていてね。人に知られてしまったら、わたし、もう、このアバターに憑いていることができなくなるから」

「絶対言いません! だって、拓美さんが、命がけで助けてくれたんですから(><)!」

「ほらほら、わたしは拓美じゃなくてマユよ。AKR創立以来の選抜メンバー出昼マユなのよ」

「は、はい!」

 ピューーン

 元気よく返事をすると、潤はゴムひもで引っ張られたみてえに、自分の体に戻っていきやがった。

――人に話してしまった。もう、このマユのアバターにも長くは居られないだろうね――

 拓美は思ったが、「これでいいんだ」と言う自分が芽生え始めていることに、初めて気づきやがった……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

コメント
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