一昨日、日フィルの定期で、コバケンのマラ9を聴いてきました。
<日時>2007年1月26日(金)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>マーラー:交響曲第9番
<演奏>
■指 揮:小林研一郎
■管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
この日は、コバケンが日本フィルの音楽監督としてタクトをとる、最後の定期演奏会でした。
「今シーズン限りで、日本フィルの音楽監督を退任する」という衝撃の発表があったのは、つい先日のこと。
今シーズンのラインナップを決める時に、コバケンはすでに退任の意思を固めていたのでしょうか。
最後の定期のプロが「マラ9」とは、あまりに「相応しい」選曲・・・。
今日の聴衆は、当然のことではありますが、マエストロ最後の定期であることを十分すぎるくらい強く意識しているように感じました。
そして驚いたのは、開演前のロビーで何人かの小学生を見かけたこと。
「小学生でマーラーの9番? それも実演で・・・。」
小学生に、このマーラーの9番という音楽は、いったいどんなふうに聴こえるんだろう。
羨ましさとともに、正直、私は驚きを隠せませんでした。
この日の私の席は RA席の2列目。
P席のように指揮者の真正面ではなく、ステージを斜め横から見下ろすイメージの席ですが、視覚的にも音響的にも本当に素晴らしい席でした。
LPやCDではあれだけ何回も聴いてきたマラ9ですが、実演で聴くのは、この日が初めて。
結論から言います。
素晴らしかった。
マーラーの音楽も、この日の演奏も・・・。
私は、心から感動しました。
最近コンサートの感想をブログに書くたびに、「素晴らしかった」「良かった」と書くのは、私自身いかがなものかと思っているのですが、それだけコンサートの質が上がったのかもしれません。
あるいは、私の聴き方(前にも書きましたが、受け身で聴くのは嫌いなたちで、何かメッセージを感じさせてくれる演奏を好みます)に応えてくれる演奏が増えたのかもしれません。
この日のマーラーも、些細な傷はありましたが、死を目前に控えたマーラーのメッセージは、私には痛いほど伝わってきました。
これがマーラーの9番なんですね。
第1楽章は、悩み・死の予感とピュアな美しさが交錯する音楽ですが、ラストの吹っ切れたような静寂さが、本当に見事に表現されていたと思います。
第3楽章のなかほど、ターンで始まるフレーズが聴こえてくると、「ああ、もうアダージョが近いんだ」と鳥肌がたってきてしまい、既にうるうる気味。
そして、アダージョを迎えます。
冒頭で、ゆっくりと弦楽器が奏でる音楽の何と感動的なこと。
(いや、違うな・・・。言葉で書くと本当に陳腐になってしまいます。文章表現の稚拙さを身に沁みて感じております)
旋律が綺麗だとか、ロマンティックだとか、そんな音楽ではありません。
5番のアダージェットでは、まさに天上の音楽そのものでしたが、この9番のアダージョはまだそこまでいかない。
現世から離れて、天上の世界へ到達する「道」のように私は感じます。
「浄化」「諦観」という言葉が最も相応しいかもしれません。
この日、私はアダージョの途中から、不思議なことに今何の楽器で演奏されているのか、まったく分からなくなってしまいました。
いったい、どうしたことだろう。
どうやら、音楽の大きなうねりの中に、完全に飲み込まれてしまったようです。
ラスト5分、残念ながら、あの静かな箇所で断続的に聴衆の咳が入ってしまいましたが、これはライブではいたしかたのないこと。
きっと、ぎりぎりまで必死で咳を我慢し続けたんでしょうね。
しかし、そんなアクシデントがあっても、奏者ならびにホールを埋めた聴衆の緊張感は、まったく途切れませんでした。
そして、最後の音が消えたあとも長い静寂が続き、その後ホールは爆発的なブラヴォーにつつまれました。
ホールにいたすべての聴衆が、マーラーの音楽に心を動かされたことでしょう。
また、終演後、心温まるシーンがありました。
聴衆の熱狂的な拍手で何度もステージに呼び戻されたマエストロが、途中で大きな花束を持ってきて、ティンパニのほうに向けて大きく投げたのです。
受け取ったのは、首席ティンパニの森茂さん。
実は、後進の指導にあたられるとかで、森さんもこの日が最後の定期演奏会なんだそうです。
森さんは、いつも雄渾で素晴らしいティンパニを聴かせてくれていましたが、この日のティンパニは、普段にも増して、怖いくらいに気迫のこもった響きがしていました。
森さんも、きっと感無量だったことでしょう。
この日の定期演奏会は、結果的に、マエストロと首席ティンパニストという、日フィルのキーマンふたりのラストステージだったのですね。
感動的なマーラーを聴けて、私は大満足で家路に着きましたが、これから日フィルはどのように変貌していくんだろうと、いささかの不安を持ったことも事実です。
私の不安が杞憂になってくれることを祈っています。
P.S
ステージにはたくさんのマイクがセットされていましたので、この日の演奏はきっとCDとしてリリースされると思います。
しかし、あの「音のうねり」は、残念ながら録音に入りきらないように思います。
まさに「ホールの空気」そのものですから・・・。
でも、リリースされたら、きっと買っちゃうでしょうね(笑)
<日時>2007年1月26日(金)19:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>マーラー:交響曲第9番
<演奏>
■指 揮:小林研一郎
■管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
この日は、コバケンが日本フィルの音楽監督としてタクトをとる、最後の定期演奏会でした。
「今シーズン限りで、日本フィルの音楽監督を退任する」という衝撃の発表があったのは、つい先日のこと。
今シーズンのラインナップを決める時に、コバケンはすでに退任の意思を固めていたのでしょうか。
最後の定期のプロが「マラ9」とは、あまりに「相応しい」選曲・・・。
今日の聴衆は、当然のことではありますが、マエストロ最後の定期であることを十分すぎるくらい強く意識しているように感じました。
そして驚いたのは、開演前のロビーで何人かの小学生を見かけたこと。
「小学生でマーラーの9番? それも実演で・・・。」
小学生に、このマーラーの9番という音楽は、いったいどんなふうに聴こえるんだろう。
羨ましさとともに、正直、私は驚きを隠せませんでした。
この日の私の席は RA席の2列目。
P席のように指揮者の真正面ではなく、ステージを斜め横から見下ろすイメージの席ですが、視覚的にも音響的にも本当に素晴らしい席でした。
LPやCDではあれだけ何回も聴いてきたマラ9ですが、実演で聴くのは、この日が初めて。
結論から言います。
素晴らしかった。
マーラーの音楽も、この日の演奏も・・・。
私は、心から感動しました。
最近コンサートの感想をブログに書くたびに、「素晴らしかった」「良かった」と書くのは、私自身いかがなものかと思っているのですが、それだけコンサートの質が上がったのかもしれません。
あるいは、私の聴き方(前にも書きましたが、受け身で聴くのは嫌いなたちで、何かメッセージを感じさせてくれる演奏を好みます)に応えてくれる演奏が増えたのかもしれません。
この日のマーラーも、些細な傷はありましたが、死を目前に控えたマーラーのメッセージは、私には痛いほど伝わってきました。
これがマーラーの9番なんですね。
第1楽章は、悩み・死の予感とピュアな美しさが交錯する音楽ですが、ラストの吹っ切れたような静寂さが、本当に見事に表現されていたと思います。
第3楽章のなかほど、ターンで始まるフレーズが聴こえてくると、「ああ、もうアダージョが近いんだ」と鳥肌がたってきてしまい、既にうるうる気味。
そして、アダージョを迎えます。
冒頭で、ゆっくりと弦楽器が奏でる音楽の何と感動的なこと。
(いや、違うな・・・。言葉で書くと本当に陳腐になってしまいます。文章表現の稚拙さを身に沁みて感じております)
旋律が綺麗だとか、ロマンティックだとか、そんな音楽ではありません。
5番のアダージェットでは、まさに天上の音楽そのものでしたが、この9番のアダージョはまだそこまでいかない。
現世から離れて、天上の世界へ到達する「道」のように私は感じます。
「浄化」「諦観」という言葉が最も相応しいかもしれません。
この日、私はアダージョの途中から、不思議なことに今何の楽器で演奏されているのか、まったく分からなくなってしまいました。
いったい、どうしたことだろう。
どうやら、音楽の大きなうねりの中に、完全に飲み込まれてしまったようです。
ラスト5分、残念ながら、あの静かな箇所で断続的に聴衆の咳が入ってしまいましたが、これはライブではいたしかたのないこと。
きっと、ぎりぎりまで必死で咳を我慢し続けたんでしょうね。
しかし、そんなアクシデントがあっても、奏者ならびにホールを埋めた聴衆の緊張感は、まったく途切れませんでした。
そして、最後の音が消えたあとも長い静寂が続き、その後ホールは爆発的なブラヴォーにつつまれました。
ホールにいたすべての聴衆が、マーラーの音楽に心を動かされたことでしょう。
また、終演後、心温まるシーンがありました。
聴衆の熱狂的な拍手で何度もステージに呼び戻されたマエストロが、途中で大きな花束を持ってきて、ティンパニのほうに向けて大きく投げたのです。
受け取ったのは、首席ティンパニの森茂さん。
実は、後進の指導にあたられるとかで、森さんもこの日が最後の定期演奏会なんだそうです。
森さんは、いつも雄渾で素晴らしいティンパニを聴かせてくれていましたが、この日のティンパニは、普段にも増して、怖いくらいに気迫のこもった響きがしていました。
森さんも、きっと感無量だったことでしょう。
この日の定期演奏会は、結果的に、マエストロと首席ティンパニストという、日フィルのキーマンふたりのラストステージだったのですね。
感動的なマーラーを聴けて、私は大満足で家路に着きましたが、これから日フィルはどのように変貌していくんだろうと、いささかの不安を持ったことも事実です。
私の不安が杞憂になってくれることを祈っています。
P.S
ステージにはたくさんのマイクがセットされていましたので、この日の演奏はきっとCDとしてリリースされると思います。
しかし、あの「音のうねり」は、残念ながら録音に入りきらないように思います。
まさに「ホールの空気」そのものですから・・・。
でも、リリースされたら、きっと買っちゃうでしょうね(笑)
演奏の質が向上しているというのは同感です。特に邦人演奏家のレベルの向上はここ数年著しいと思います。
今や、世界的に見てほぼ国産メンバーなオケは日本くらいなもの。しかもそれでいい演奏をするのであればとても嬉しいことです。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
日フィルは、在京のオケの中でも、とりわけ熱い演奏をしますね。
コバケンが振る時は、とくにそう思います。
>世界的に見てほぼ国産メンバーなオケは日本くらいなもの・・・
ほんと、そうですね。
もともと緻密な演奏ができる伝統はあったと思うのですが、ここ数年、「まとまった」という以上の何かを感じさせてくれるオケが出てきたのは、本当に嬉しいです。
東京と大阪のオケの交流なんかが増えると、もっと面白いのに・・・。
久しぶりに大フィルの響きも聴いてみたくなりました。
そうなんです。
あのときまで、森さんの退団のことはまったく知らなかったので、ちょっとショックでした。
>分裂後佐藤さん一人だった打楽器パートに入団してきた青年森をよく覚えています
なるほど・・・。
昔から、存在感のある人でしたよね。
コンサートの前には、ロビーへ出て聴衆とよく話もされていました。
本文にも書きましたが、この日の森さんのティンパニの音はとくに凄かったです。
同じDNAをもつ、素晴らしい後進を育てて欲しいものです。