遅くなりましたが、9日東京文化会館で観た「オテロ」の感想を。
この「オテロ」は、先週の4夜連続コンサートシリーズの2日目にあたります。
2日目ということは、ニーベルンクの指輪4部作で例えれば、さしずめ「ワルキューレ」ですね。
ソフィア国立歌劇場 「オテロ」(全4幕)
<日時>平成17年12月9日(金)18:30開演
<場所>東京文化会館
<出演、演奏>
■オテロ:エミール・イワノフ
■デズデモーナ:ツヴェテリーナ・ヴァシレヴァ
■イアーゴ:アレクサンドル・クルネフ他
■指揮:ジョルジョ・クローチ
ソフィア国立歌劇場管弦楽団
ソフィア国立歌劇場合唱団
<演出> エンリコ・スティンケッリ
ヴェルディの「オテロ」を実際に観るのは、今回が初めてです。
ビデオやCDで観たり聴いたことはありましたが、正直なところ「立派な音楽だなあ」ぐらいしか印象がなかったんです。
やっぱり、序曲がないことと、憶えやすい歌があまりなかったことが原因なんだと思います。
しかし、実際に観て、このオペラの魅力にすっかりはまってしまいました。
素晴らしいオペラですね。これほど中身がびっしり詰まった作品は、ヴェルディの中でも珍しいのではないかしら。
ただ、シナリオを単純になぞっただけでは、オペラの性格とはまったく逆に、喜劇にしかならない気もしました。
例えばオテロ。武勇に秀でて間違いなく英雄には違いないが、嫉妬深く、単純で、精神分裂気味の変なオヤジのような印象を与えても、ちっともおかしくない。
でも、オテロは、どんな場面でも、その瞬間瞬間常に必死なんだと思います。怒る時も、悲しむ時も、心からわびる時も、さらに言うと、嫉妬する時すらなりふり構わず必死なんです。その必死さが伝わってこないと、本当に茶番にしかなりません。
そういう意味で難しいオペラですね。
第1幕は、何と言っても最後の愛の二重唱が素晴らしかった。
オテロとデズデモーナを導くチェロの何と美しいこと。オテロ役のイワノフは、少し金属的な響きである感じがしましたが、若々しい声で必死さが良く伝わってきました。デズデモーナは、ブルガリアの名花ヴァシレヴァ。素晴らしい声のソプラノです。こちらも清楚でありながら一途な必死さが伝わってきて、私は大変感動しました。同じ役のロストや佐藤しのぶさんはどうだったんだろう。
第2幕は、イアーゴが大活躍します。イヤーゴ役のクルネフは、声自体にそれほど特徴があるわけではありませんが、その狡猾さが憎らしいくらいはまっています。
最後までイヤーゴの言葉・計略にまんまとはまってしまうオテロが何とも歯がゆいですが、そのオテロの心理状態をイワノフはよく演じていたと思います。
第3幕では、デズデモーナのどこまでも純な気持ち・姿勢が心をうちます。
また、特使一行が来てオテロの本国帰還が告げられ、オテロがみんなの前で何とデズデモーナを突き倒す場面がありますが、そのあと、倒されたデズデモーナが静かに歌い出すときにオーケストラで奏でられるメロディが、モーツァルトのジュピターのフィナーレに使われた主題と同じだったのでびっくりしました。
また、最後にイヤーゴが、不倫の証拠にでっちあげたくだんのハンカチを、オテロの顔にかけるシーンがとても印象的。
第4幕は、全体の中でも最も感動しました。
冒頭、柳の歌の旋律をコールアングレが吹き始めただけで、鳥肌がたってきました。
デズデモーナが柳の歌を歌い、続いてアヴェ=マリアを歌い終わる頃には、もう眼がうるうる状態。歳のせいかなぁ。ヴァシレヴァも素晴らしい熱唱です。
残念だったのは、その後静かに演奏し始めたコントラバス。
音程悪すぎ!よりによって一番感動的な場面で・・・。まあ、本番ではこんなものかもしれませんね。
というわけで、舞台がもう少し華やかだったらとか、オーケストラがもう少し上手かったらとか若干の注文はありましたが、初めて舞台でみた「オテロ」はしっかり私の心をつかまえてくれました。
「4日連続でコンサート・オペラを聴く」という大プロジェクトは、これにてめでたく終了です。
とても贅沢な気分を味わえた4日間でした。
この「オテロ」は、先週の4夜連続コンサートシリーズの2日目にあたります。
2日目ということは、ニーベルンクの指輪4部作で例えれば、さしずめ「ワルキューレ」ですね。
ソフィア国立歌劇場 「オテロ」(全4幕)
<日時>平成17年12月9日(金)18:30開演
<場所>東京文化会館
<出演、演奏>
■オテロ:エミール・イワノフ
■デズデモーナ:ツヴェテリーナ・ヴァシレヴァ
■イアーゴ:アレクサンドル・クルネフ他
■指揮:ジョルジョ・クローチ
ソフィア国立歌劇場管弦楽団
ソフィア国立歌劇場合唱団
<演出> エンリコ・スティンケッリ
ヴェルディの「オテロ」を実際に観るのは、今回が初めてです。
ビデオやCDで観たり聴いたことはありましたが、正直なところ「立派な音楽だなあ」ぐらいしか印象がなかったんです。
やっぱり、序曲がないことと、憶えやすい歌があまりなかったことが原因なんだと思います。
しかし、実際に観て、このオペラの魅力にすっかりはまってしまいました。
素晴らしいオペラですね。これほど中身がびっしり詰まった作品は、ヴェルディの中でも珍しいのではないかしら。
ただ、シナリオを単純になぞっただけでは、オペラの性格とはまったく逆に、喜劇にしかならない気もしました。
例えばオテロ。武勇に秀でて間違いなく英雄には違いないが、嫉妬深く、単純で、精神分裂気味の変なオヤジのような印象を与えても、ちっともおかしくない。
でも、オテロは、どんな場面でも、その瞬間瞬間常に必死なんだと思います。怒る時も、悲しむ時も、心からわびる時も、さらに言うと、嫉妬する時すらなりふり構わず必死なんです。その必死さが伝わってこないと、本当に茶番にしかなりません。
そういう意味で難しいオペラですね。
第1幕は、何と言っても最後の愛の二重唱が素晴らしかった。
オテロとデズデモーナを導くチェロの何と美しいこと。オテロ役のイワノフは、少し金属的な響きである感じがしましたが、若々しい声で必死さが良く伝わってきました。デズデモーナは、ブルガリアの名花ヴァシレヴァ。素晴らしい声のソプラノです。こちらも清楚でありながら一途な必死さが伝わってきて、私は大変感動しました。同じ役のロストや佐藤しのぶさんはどうだったんだろう。
第2幕は、イアーゴが大活躍します。イヤーゴ役のクルネフは、声自体にそれほど特徴があるわけではありませんが、その狡猾さが憎らしいくらいはまっています。
最後までイヤーゴの言葉・計略にまんまとはまってしまうオテロが何とも歯がゆいですが、そのオテロの心理状態をイワノフはよく演じていたと思います。
第3幕では、デズデモーナのどこまでも純な気持ち・姿勢が心をうちます。
また、特使一行が来てオテロの本国帰還が告げられ、オテロがみんなの前で何とデズデモーナを突き倒す場面がありますが、そのあと、倒されたデズデモーナが静かに歌い出すときにオーケストラで奏でられるメロディが、モーツァルトのジュピターのフィナーレに使われた主題と同じだったのでびっくりしました。
また、最後にイヤーゴが、不倫の証拠にでっちあげたくだんのハンカチを、オテロの顔にかけるシーンがとても印象的。
第4幕は、全体の中でも最も感動しました。
冒頭、柳の歌の旋律をコールアングレが吹き始めただけで、鳥肌がたってきました。
デズデモーナが柳の歌を歌い、続いてアヴェ=マリアを歌い終わる頃には、もう眼がうるうる状態。歳のせいかなぁ。ヴァシレヴァも素晴らしい熱唱です。
残念だったのは、その後静かに演奏し始めたコントラバス。
音程悪すぎ!よりによって一番感動的な場面で・・・。まあ、本番ではこんなものかもしれませんね。
というわけで、舞台がもう少し華やかだったらとか、オーケストラがもう少し上手かったらとか若干の注文はありましたが、初めて舞台でみた「オテロ」はしっかり私の心をつかまえてくれました。
「4日連続でコンサート・オペラを聴く」という大プロジェクトは、これにてめでたく終了です。
とても贅沢な気分を味わえた4日間でした。
こんばんは。素晴らしい記事のTBをいただき、ありがとうございました。
翌日の公演に行かれたのですね。
ロストとガルージン、素晴らしい配役ですよね。うらやましいなあ。
ただ、9日の公演では、ヴァレシヴァの素晴らしいデズデモーナが大発見でした。
オテロの嫉妬 単純な性格描写も・・面白いですね
現実の生活で・・ハンカチで疑いが・・
身体が幾つ有っても もたないですね・・
オペラの中で良かった・・笑い
明日 レニングラード歌劇場のファウスト観に行きます
其方は 椿姫を ご覧になった様ですね
大分出来も良かった様ですね・・明日が楽しみです。
ご丁寧にありがとうございました。
オテロのハンカチ、本当にハンカチ一枚でぬれぎぬをきせられた日にはたまりませんよねぇ。
ただ、昔ある本で読んだのですが、当時の社交界ではハンカチは下着と同様の位置づけだったとか・・・。
そう考えると、魔女の刺繍ともども何か納得が出来るような気が・・・。
レニングラードのファウストも観に行かれるのですね。羨ましいなあ。
また記事を楽しみにしております。