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マリス・ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団来日公演(11/15) @サントリーホール

2009-11-18 | コンサートの感想
日曜日に、ヤンソンス率いるバイエルン放送響のコンサートを聴いてきた。
今回の来日公演ではヨーヨーマや五嶋みどりをソリストにしたコンチェルトを含む公演がほとんどで、この日の公演がおそらく唯一のシンフォニーだけのプロだったと思う。
しかも、ブラームスの2番とチャイコフスキーの5番という魅力的な選曲。
最安席(=お気に入りのP席)を会員割引でゲットできたので、今が旬ともいえるこのコンビの名演を6,000円台で聴くことができて本当に幸運だった。
舞台裏のP席からホールを見渡すと、比較的安い席はほとんど埋まっているようだったが、1階前方の両サイドを中心に空席が散見されたのがいかにも残念。

<日時>2009年11月15日(日)14:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
■ブラームス:交響曲第2番ニ長調op.73
■チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調op.64
(アンコール)
■シベリウス:悲しきワルツ
■ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『憂いもなく』
<演奏>
■マリス・ヤンソンス指揮
■バイエルン放送交響楽団

前半のブラームスは、とにかくテンポの良さと透明度の高いハーモニーが印象に残る。
第1楽章から第2楽章にかけては瑞々しい歌が聴けたし、終楽章では、決して煽ったりしないのに、中から自然に湧き出てくるようなエネルギーの噴出に圧倒された。
一昨年のラトルとベルリンフィルの演奏も素晴らしかったが、この日のヤンソンスたちの演奏も決して負けていない。
見事なブラームスだった。

後半のチャイコフスキーでは、一層自在な表現で私を魅了してくれた。
第1楽章では、管楽器の表現力の高さに思わず絶句。
また154小節目から始まるクラリネットの「ラーレ・ラーレ・・・」というフレーズを、ヤンソンスはその後もこの音型が出てくるたびにくっきり目だ立たせて表現していて、それが大変印象に残った。
第2楽章はこの日の白眉だ。
ホルンの音色が切ないくらいに美しい。そしてそれに絡むクラリネットの何と見事なこと・・・。
正直に言うと、ここまで完璧な演奏に圧倒されながらも、どこか計算されつくした匂いを感じないでもなかった。
しかし、この楽章は違う。人工的なイメージなどは微塵も感じられない。
私はオーケストラの奏でる哀愁に満ちた旋律に涙を抑えることができなかった。
テンポをぐっと抑えながら奏でられるピアニシモは息をのむような美しさだったし、何回か登場するゼネラルパウゼの効果も絶大で、それこそホール全体が呼吸を止めているかのような緊張感と静寂に包みこまれていた。
そして終楽章はアウフタクトを2つ取って始まったが、引き締まった実に良い音がしていた。
このオーケストラはもともと上質のサウンドを持っているが、とりわけ弦楽器のサウンドが素晴らしい。
音色は瑞々しいし力強さもある。その上にアンサンブル能力がきわめて高い。
ヤンソンスは、この日、明らかにその弦楽器を中心に据えたサウンド作りをしていた。
その弦に木管を絡ませて芯の響きを作り、要所要所でブラスが輝かしさを加えるという構図だ。
バイエルンのブラスも滅法上手いが、決して出すぎることはない。
ときに「ブラスのためのコンチェルト」のような演奏に出くわすこともあるチャイ5だが、ヤンソンス&バイエルン放送響の演奏では、最上のバランスで響いていた。
さすがに世界のベスト10に入るだけのことはある。

終演後のヤンソンスのサイン会では、400人のファンが並んだらしいが、さもありなん。
チャイコフスキーが終わった後、そして2曲目のアンコールが終わった後の2回、オーケストラがマエストロ・ヤンソンスに対して敬意を表した足踏みをしていたが、決して儀礼的には感じなかった。
それだけこのコンビが上手くいっているということなのだろう。
思い出に残る素晴らしいコンサートだった。

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2 コメント

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目に浮かんで聴こえて来る様です!素晴らしいお話を有難うございます! (エルザ)
2009-11-19 11:33:30
指揮者のかたとオーケストラの皆様の、全ての音楽、…楽器や音が躍動感に溢れて動く交響曲、特にコンサートホールだと…私は時に感涙!です。
チャイコフスキーの五番…ヤンソンス氏の指揮で私も会場で聴いてみたい!です。バッハ…バロック大好きですが、チャイコフスキーやラフマニノフ…ロシアの音楽や芸術も奥が深くて魅力的に思います。繊細で美しくて切なくなるような旋律や、ソフトな華やかさがロシアの芸術…すみません、上手に表現が出来ませず…

ヤンソンス氏の指揮のコンサート、ライブで私も足を運んでみたいです。統率力や、盛り上げ方など実に素晴らしい、世界で屈指の指揮者のかただと思います。

本当に、音楽をじかに見て聴くことは大切だし、楽しいですね。

音楽…から脱線しますが昨日、映画「ゼロの焦点」観てきました。旬の話題作!ということでスクリーンも一番大きなホールという映画館さまのご配慮もあり満喫出来ました。

自宅で私が地味に、時間を見つけて、おとなしく(?)DVDを鑑賞も良いのですが、迫力や臨場感…劇場は本当に最高でした。内容は、原作を昔、読んでいて存じていましたが、
映画…よかったです。観る「ゼロの焦点」…感涙!でした。生きることや、人間の悲哀や、困難に負けないで生き直そう、希望を持とうとする姿…のようなシーン、ミステリーというだけではなくて…
よい映画だと思います。
私のブログに書いたらコメントを頂いて、感想や話題を書いていらっしゃるかたのサイトに行くと盛り上がっていました。
…(すみません。大変脱線しました)

また音楽のお話!楽しみにしています。寒くなりました、これから年末に向けて、お仕事や様々、ご多忙と存じます。お風邪など召されません様、お体大切になさって下さいませ。
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>エルザさま (romani)
2009-11-20 00:03:28
こんばんは。
嬉しいコメントありがとうございます。
本文にも書きましたが、本当に素晴らしいコンサートでした。2年前にコンセルトヘボウと来た時の「新世界」と「春の祭典」も良かったのですが、今回のバイエルン放送響とのほうがより「相思相愛」という印象を持ちました。

「ゼロの焦点」、原作は読んだことがあるのですが、映画も素晴らしい出来栄えみたいですね。
映画も音楽もそうですが、観衆・聴衆に問われているのは、「どれだけ多くのものを感じ取れるか」、言い換えると「感受性」じゃないかと思います。エルザさんは素晴らしい感受性を持っておられると拝察しております。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
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